TikTokのEC事業、東南アジアで好調も英国では大苦戦のワケ 拡大計画棚上げか再開か相反する報道も

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東南アジア11カ国を世界中が注視している。総人口6億8200万人、GDPは合計で3兆ドル(約400兆円)余りになる新興市場。地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が締結され、中国も東南アジア経済に大きな影響を及ぼす存在となりつつある。

ショート動画投稿アプリ「TikTok」を運営するバイトダンス(字節跳動)も東南アジアでの市場開拓に乗り出している。2021年2月、インドネシアでTikTokの電子商取引(EC)機能「TikTok Shop」の運用を始めた。今年4月にタイ、ベトナム、マレーシア、フィリピンで、6月にはシンガポールでも運用を開始、東南アジアで順調に規模を拡大している。インドネシアでは4月2日から始まったイスラム教の断食月「ラマダン」期間に、TikTok Shopでの発注が493%増加、GMV(流通総額)は92%増加した。

英国でも21年末からEC事業のテスト運用を始めた。しかし消費者の反応は鈍く、最新のデータによるとインドネシアのTikTok ShopはGMVが一カ月平均2億ドル(約290億円)なのに対し、英国ではわずか2400万ドル(約34億3000万円)にとどまった。

現在までのところ、英国でのTikTok Shopの運用は労多くして功少なしという状況だ。英国ではTikTokはSNSという捉え方がすでに定着している。動画の合間に挿入されるライブコマースになじめないばかりか、反感を持つユーザーさえいるかもしれない。英国で定着するため、売り手にインセンティブを与え、ユーザーに低価格で訴えかけるなどさまざまに努力しても、大部分のユーザーからは評価されていない。

Amazonをよく利用する英国のあるユーザーは「TikTokでは買い物をしない。なんとなく信用できない」と話す。10ポンド(約1600円)のジャケットを見つけたが買う気にはならなかった。「それだけ安いということは何かあるはずで、10ポンドを無駄にするつもりはない」と語った。

TikTok Shopの低価格戦略は東南アジアで非常に成功した。しかし英国の消費者に対してはそうはいかず、低価格ゆえに品質を疑い、購買意欲はさらに低下してしまう。

東南アジアでの成功は、現地で急激に広まっているCOD(代引き)の決済方式によるところも大きい。ある越境EC業者は、COD方式では支払いを拒否することも気に入らない商品を返品することもできるため、新しいショッピングサイトを受け入れるのに抵抗がないと話す。また売り手側も商品を出品する前に返品率の高さを考慮したうえで価格を調整するので、CODは買い手にだけ有利というわけではないという。

もうひとつの理由は、モバイルデバイスの普及率の高さだ。先進国の消費者は費用の支払いや買い物、娯楽などにデスクトップパソコンやノートブックパソコンを多用するが、東南アジアでは一足飛びにモバイルの時代に入った。東南アジアで人気のECサイト「Shopee」や「Lazada」などは開設から10年未満とAmazonよりも歴史が浅いこともあり、ユーザーは特定のブランドに対するロイヤルティが高くない。

配送が遅い、商品が予想したものと違う、返品や返金に手間がかかる。いずれもTikTok Shopに不満を感じる英国のユーザーから聞かれる声だ。TikTok Shopに出品する業者の大半が中国にあることを考えれば、発送や物流がスムーズにいかないのは避けようがない。

英国の消費者は信用できる購買体験に慣れてしまっているので、それに比べるとTikTokはいまひとつだと感じるかもしれない。価格に敏感な東南アジアの消費者は、安いなら品質の悪さも受け入れるし、代表的なECサイトでの購買体験との違いを気にしないのだろう。

英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」は今年7月、TikTok Shopの欧州や米国での拡大計画は一旦棚上げになったと報道した。しかし最近になって、23年末までに10数カ国に事業を拡大し、GMVを4,700億ドル(約67兆2000億円)にする計画との情報も流れた。価格にそれほどこだわらず、かつ既存の購買スタイルへのロイヤルティが高いマーケットで事業を拡大する方法を探し出すことが、目標達成のカギとなるだろう。

原文:WeChat公式アカウント「品玩Global(ID:pinglobal)」
(翻訳・36Kr Japan編集部)

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