たまる一方の小銭をビジネスに 「HEYCOINS」の硬貨回収サービス

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モバイル決済が普及している中国で、硬貨を目にする機会はますます減っている。とはいえ世界的に見れば、依然として主要な決済方法であることは間違いない。

香港金融管理局の2017年のデータによると、香港で流通している硬貨は総額77億香港ドル(約1100億円)ほどに上るという。しかし電子決済の普及で市民の手元には硬貨がたまっていく一方、中小企業の多くは硬貨が不足しており、政府が毎年巨額を投じて硬貨を製造するものの追いついていないのが現状だ。

その硬貨にフォーカスしたビジネスを展開するのが、2017年に香港で設立された「HEYCOINS」だ。共同創業者の栄南(Eddie Rong)氏によれば、この事業は公益性とビジネスの両面からスタートしたという。銀行で硬貨は手作業で処理されるため、時間や人件費がかかりあまり重視されない。その一方で硬貨を製造するのにかかるコストは硬貨の額面を上回っている。HEYCOINSはここにビジネスチャンスを見いだした。人々の手元にたまった硬貨を利用してキャッシュレス決済への移行を支援し、それを基盤として多方面の事業を展開するのだ。

HEYCOINSは自社開発の小銭収集機を交通ターミナルや住宅街、ショッピングセンターなどに設置している。機械に投入した硬貨の交換方法は利用者が選べるようになっており、電子マネーにチャージしたり、HEYCOINポイントに交換したりできる。電子マネーへのチャージは8~15%の手数料が差し引かれるが、HEYCOINポイントへの交換は無料。ポイントはコンビニやスーパーで利用できるクーポンに換えたり、HEYCOINSの自社ECプラットフォーム「HEYMALL」でのショッピングに使ったり、慈善団体に寄付したりできる。

集めた硬貨のうち40~60%は銀行に送られ、残りは同社の運営チームが硬貨を必要とするレストランや小売店に届ける。「飲食店は釣り銭に使う小銭が必要だが、銀行で両替すると手数料も時間もかかる」と栄南氏は指摘する。HEYCOINSでは小銭の両替業務を行っており、利用店舗から輸送費と金額の3.5%を手数料として、銀行からは約5%を処理費用として受け取っている。

HEYCOINSの第一号機は2017年5月に設置された。その後3カ月間に香港で35台が設置され、これまでにのべ6万人近くが利用している。

日常シーン以外に、観光地での活用も期待される。将来的にはWeChat(微信)と提携して羅湖や落馬洲などの国境ゲート付近および空港などで旅行者が使い残した外貨を回収し、WeChatペイにチャージするサービスを行うとのことだ。

さらに企業向けのシステムやサービスの販売も手がけている。HEYCOINSはすでにタイやマカオ、シンガポールなどに進出しており、現地の交通や観光などの関連機関向けに、硬貨回収設備や維持管理サービスを提供している。

HEYCOINSは過去にシンガポールの「DBS Foundation」や「香港数碼港管理公司(Hong Kong Cyberport Management Company)」からシードラウンドで資金を調達しており、現在はシリーズAで資金を調達中。
(翻訳・畠中裕子)

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