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中国新興電気自動車(EV)メーカー「NIO(蔚来汽車)」がこのほど2022年第2四半期(4~6月)の決算を発表した。売上高は前年同期比21.8%増の102億9000万元(約2060億円)で、四半期としては過去最高を記録。開発費は同143.2%増の21億5000万元(約430億円)で同じく過去最高となった。赤字も拡大しており、第2四半期の純損失は同316.4%増の27億4500万元(約550億円)だった。同四半期には2万5100台を納車していることから、概算では1台あたり10万元(約200万円)以上の赤字を出していることになる。
「小鵬汽車(XPeng Motors)」も第2四半期の決算を発表しているが、純損失は27億100万元(約540億円)、納車台数は3万4400台であることから、1台あたり平均7万8000元(約156万円)の赤字を出していることになる。「理想汽車(Li Auto)」の第2四半期の決算データによると純損失は6億1800万元(約124億円)、納車台数は2万8700台で、1台あたり2万2000元(約44万円)の赤字だ。
EVメーカーの赤字の原因は何だろうか。
蔚来汽車、小鵬汽車、理想汽車の新興EV御三家の決算報告から、赤字がいくつかの分野に集中していることがわかる。まずは原材料コストだ。中でもバッテリーのコストが飛び抜けており、車両全体のコストのうち40%ほどを占める。バッテリーの原料となるリチウム、コバルト、ニッケルなどの希少金属は輸入に依存しているため、コストの変動が最も大きい。さらにチップ不足の問題も深刻で、車載半導体メーカー「芯馳科技(SemiDrive)」董事長の張強氏はかつて「中国の自動車生産台数は世界の約3分の1を占めているが、チップのシェアは5%にも満たない」と発言したこともある。
次に開発費だ。米EV大手テスラのイーロン・マスク氏は2019年に、過去10年でテスラは研究開発に200億ドル(約2兆8000億円)かけたことを明らかにしている。これは従来の自動車メーカーでは考えられない額だ。中国の新興EV3社の決算報告によると22年上半期の開発費は、蔚来が39億1000万元(約780億円)、小鵬が24億9000万元(約480億円)、理想が29億1000万元(約580億円)で、売上高に占める比率はそれぞれ19.4%、16.7%、15.9%だった。蔚来だけを見ても、22年の研究開発費が92億元(約1840億円)を超える見込みで、年末までに開発チームは9000人になるという。EV製造には大量の資金が必要なことがわかる。
最後にマーケティング管理コストだ。これは主にマーケティング費用と人件費を指している。上半期のマーケティング管理費用は、蔚来が42億9000万元(約860億円)、小鵬が33億1000万元(約660億円)、理想が25億3000万元(約500億円)で、売上高に対する比率はそれぞれ21.3%、22.2%、13.8%だ。蔚来の李斌CEOはかつて「一人のオーナーにサービスを提供するのに1年あたり4000元(約8万円)かかっている」と明かしている。
このほか、販売店の設置や運営のコストもある。例えば蔚来は自動車の展示や試乗、販売を行う「蔚来中心(NIO House)」「蔚来空間(NIO Space)」を中国国内に合計381カ所、さらにサービスセンターと納車センターを247カ所、バッテリー交換ステーションを960カ所以上持っている。小鵬は全国に販売店が128カ所、自社直営の充電ステーションが1000カ所以上ある。
赤字続きでも資金が途絶えない理由とは
中国の企業情報サイト「企査査(Qichacha)」が発表したリポート「2021年新エネルギー車業界投資データ」によると、2021年の新エネ車関連の資金調達は239件、調達総額は3639億元(約7兆2800億円)だった。EVメーカーが同年明らかにした調達額は、比亜迪(BYD)が226億元(約4500億円)、蔚来が127億元(約2540億円)、小鵬が123億元(約2460億円)だった。
これらEVメーカーの出資者はそうそうたる顔ぶれで、大手ベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ、コーポレートベンチャーキャピタルが中心だ。例えば蔚来にはIT大手テンセント(騰訊控股)、バイドゥ(百度)、京東集団(JDドットコム)、高瓴資本(ヒルハウス・キャピタル)、セコイア・キャピタル・チャイナ(紅杉資本中国基金)、テマセク・ホールディングスなどが出資している。小鵬にはアリババ、 シャオミ(Xiaomi)、高瓴資本、セコイア・キャピタル・チャイナ、IDGキャピタル、そして理想にはTikTokを運営するバイトダンス(字節跳動)、美団(Meituan)、経緯創投(Matrix Partners China)、中金資本(CICC Capital)などが出資している。
EV企業がずっと赤字にも関わらず、こんなにも多くの資金が流入するのはなぜだろうか。
まずは市場規模が十分に大きいことだ。中国汽車工業協会(CAAM)の予測では2025年までに中国の新エネ車市場規模は1299万台に達し、21年から25年までの年平均成長率は約38%となる見込み。22年上半期だけを見ても、中国の新エネ車の累計販売台数は251万台で、世界の新エネ車(乗用車)販売台数421万台からすると、中国だけで世界の59%のシェアを占めていることがわかる。
また、大きな利益が出ることも明らかだ。例えばテスラはわずか21カ月で時価総額が1000億ドル(約14兆円)から1兆ドル(約144兆円)になった。蔚来は合肥市とのギャンブル契約(バリュエーション調整メカニズム、VAM)がネットで話題になったが、合肥市が同社に投資、支援をすることで2020年から25年までに得られる税収は78億元(約1560億円)にのぼるという。さらに政府が掲げる脱炭素戦略「ダブルカーボン(双碳)」も追い風となり、EVは1兆元(約20兆円)規模の市場で、今後も高い成長率が予想されるため、多くの投資家がその分け前を狙っているのは間違いない。
そして技術の進歩により産業チェーンの川上、川下でも大きな利益が生まれている。自動運転、バッテリーなど技術の進歩にともない、新エネ車はガソリン車時代のエンジンやシャーシ、トランスミッション(変速機)などを必要としなくなり、全く新しいサプライチェーンシステムが形成された。産業全体の川上、川下企業に数多くのチャンスが生まれている。
バッテリーだけを見ても、2018年に新興企業向け市場の「創業板」で上場した「寧徳時代(CATL)」は上場以降株価が上昇を続け、21年には時価総額が1兆元(約20兆円)に達した。同社の曾毓群董事長も長者番付で何度も1位となっている。その後ろに控える投資家はさらに大きな利益を上げているだろう。
自動車製造そのものが黒字化するのも時間の問題だ。完成車の粗利率とはつまり自動車1台あたりの損益状況だ。現在ネット上でよく見かける計算方法は専門的に見ると問題がある。単純に1台の車を製造するには赤字も黒字もない。損失は主に他のコストからくる。自動車業界では、自動車1台の粗利率が10%を超えれば同企業の利益水準は良好とされる。例えばテスラが第1四半期に発表した1台あたりの粗利率は32.9%に達している。これは1台50万元(約1000万円)で販売したとしたら、この車両の粗利益は16万元(約320万円)ということになる。
新興EV3社の1台あたりの粗利率は今年上半期、蔚来が22.1%、小鵬が13.8%、理想が11.5%だった。決算発表後、蔚来の株価が4日連続で値上がりしたのもこのあたりに深い理由がありそうだ。自動車製造で利益が出るのなら、完成車の粗利率が高いほど産業チェーンの川上、川下企業への価格決定権も強くなり、販売台数さえ増えればいずれは黒字転換できるだろう。
作者:WeChat公式アカウント Tech対角線(ID:gh_a2aad43a8244 )、金河渓
(翻訳・山口幸子)
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