美図がスマホ事業から撤退、黒字転換への道のりは

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「美図(Meitu)」にとって、ついに来るべき時が来た。

4月14日、美顔自撮りアプリの「美図科技(Meitu Technology)」が年内にスマートフォン事業から撤退すると発表。同社の広報担当者はその翌日、「上海証券報」の取材に対し、将来的にはシャオミ(小米科技)と合同で全く新しい美図スマホを発売すると語った。

この流れは決して意外なものではない。2018年11月19日、美図とシャオミは戦略的提携協議を締結しており、シャオミは美図のスマホブランドと撮影に関連する技術および大部分のスマートハードウェアに関する30年間の独占ライセンスを獲得するとしていた。

中国版ツイッター、微博(Weibo)の美図スマホ公式アカウントでも、「美図V7」が美図にとって最後の純正スマホになると言及。調べてみたところ、このV7はオンラインで販売中だが、価格設定は3999元(約66000円)と、ファーウェイが発売したばかりの機種「HUAWEI P30」の最低価格より11元(約180円)高い。

この価格設定は、美図スマホの歩んできた道を象徴している。美図スマホは「コストパフォーマンス」を売りにしてはこなかった。ターゲットユーザーは女性であり、キャッチコピーも「より多くの人を美しくするスマホ」というものだった。

美図側も、「限られたユーザー向けであったため、生産規模が小さくコストダウンができず、価格競争で戦うことができなかった」と公式に認めている。

コストとブランドの位置づけから考えると、美図スマホは初めから価格設定が高めだった。2018年の平均販売価格は2519元(約41000円)となっており、これはシャオミの平均販売価格の2倍以上である。しかしスペックに関しては、美図より販売台数の多い他のブランドと大差なかった。2016年と2017年には、美図スマホはまだソフトウェアでハードウェアと研究開発への取り組み不足という弱みを補うことができており、20.1%~23%という高い粗利益率を維持していたが、中国スマホ市場が飽和状態になった2018年、美図スマホの売上高は前年同期で半減し、5億元(約82億5000万円)もの赤字に陥ってしまった。

美図は会社全体でも赤字が続いている。2018年の年次報告書によると、調整後の赤字額は2017年の4600万元(約7億5900万元)から8億7900万元(約145億350万円)にまで急増しており、一刻も早く損失に歯止めをかけなければならない状態だ。

このような状況下で、シャオミのスマホブランドと提携を進めるのは赤字を食い止めるのにふさわしい方法だといえよう。将来的には「シャオミ版美図スマホ」の売り上げから一定の配分を得ることができるうえ、今後はスマホ関連技術の開発に大金を投入する必要がなくなるからである。

シャオミにとってもメリットは明らかだ。シャオミと美図がターゲットとするユーザーは重なっておらず、美図との提携で市場シェア、特にシャオミが現在注力しているミドルレンジ~ハイエンド市場のシェアを増やすことができる。また、美図のソフトウェア技術はシャオミスマホの撮影機能の不足部分を補うことができ、競争力の強化にもつながるだろう。

しかし、スマホを主とするスマートハードウェア事業は美図の事業全体のうち66%を占める。ここから撤退すると、同社の売上規模は大幅に縮小するだろう。2018年の同社のインターネットサービス事業とその他の事業の成長率はわずか26.3%で、直前2年の成長率を大きく下回った。スマホ事業から撤退しても、既存事業に依存するのであれば、黒字転換への道のりは長いものとなりそうだ。
(翻訳・山口幸子)

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