ポータブル電源で世界シェア2位に躍進。中国「EcoFlow」設立5年でユニコーンになったわけ(下)

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ポータブル電源で世界シェア2位に躍進。中国「EcoFlow」設立5年でユニコーンになったわけ(下)

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キャンプなどアウトドアシーンだけでなく、停電などもしもの時にも活躍するポータブル電源の需要が高まっている。中国の業界団体が発表したリポートによると、世界のポータブル電源の出荷台数は、2016年にはわずか5万2000台だったが、21年には約90倍の483万8000台となった。しかも、その9割は中国メーカーの製品だった。

そのなかで、設立わずか5年で業界トップクラスのポータブル電源ブランドに成長し、ユニコーン入りも果たしたEcoFlowという会社がある。同社の20年の世界シェアは6.3%で2位、21年の売上高は16億元(約320億円)近くとなっている。さらに、すでに上場の準備を始めているとの情報もある。その成功の要因と今後の行方を探ってみたい。

上篇:製品開発至上主義+クラウドファンディングで海外市場をつかむ

新製品に全力投球

ポータブル電源の需要の高まりに大手企業が目をつけないわけがない。すでに車載電池大手の寧徳時代(CATL)や通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)、スマートフォン大手の小米(シャオミ)などがポータブル電源を発売している。

ある投資家は「ポータブル電源市場には飽和の兆しが見えている。過当競争の段階に入れば、大手が優勢になるだろう」と指摘する。

EcoFlowはポータブル電源でブランド力を築き上げ、ユーザーからも高く評価されている。しかし、これに甘んじてはいられない。同社は盤石な経営基盤の構築に向け、次々と新たな製品を送り出している。

「EcoFlow」のポータブルクーラー

ポータブルクーラー「EcoFlow Wave」の電池容量は1008Wh。冷却モードのみでの駆動時間は3時間、冷却モードと送風モードの自動切り替えで8時間の連続使用が可能となっている。しかし、同社の社員は「さまざまなチャネルでプロモーションを仕掛けたが、市場の反応はもうひとつだ」と語る。

キャンピングカーや山小屋などでも使えるモジュール式電源システムは、日本でも「EcoFlowパワーシステム」として発売されている。とはいえ、モジュール式電源システムは、壁面への固定が必要で、電池容量も大きく、価格も高い。モジュール式電源システムを用いるようなライフスタイルを実践する人もまだ少ない。

EcoFlowの2022年の目標売上高40億元(約800億円)のうち、ポータブル電源が7〜8割、少なくとも30億元(約600億円)となり、ポータブルクーラーやモジュール式電源システムなどの新製品は10億元(約200億円)程度にとどまる見通しだという。

そして現在、EcoFlowは住宅用蓄電池の開発に向けて動き始めている。

注目集まる住宅用蓄電池

2022年に入り、海外市場を中心に住宅用蓄電池の需要が大きな高まりを見せている。ロシア軍のウクライナ侵攻が始まって以降、欧州ではエネルギー危機が叫ばれ続けている。電力の安定供給に対する不安と電気料金の高さに頭を抱え、住宅用蓄電池の設置を急ぐ家庭も増えている。

アウトドアでの利用がメインのポータブル電源の蓄電容量が0.5〜5kWhなのに対し、住宅用蓄電池の蓄電容量は5〜20kWhと大きい。

住宅用蓄電池があれば、家庭で使う蓄電池を自給自足することが可能になる。電力供給の不安定さを解消できるだけでなく、電力コストを下げることもできる。住宅用蓄電池の価格はおよそ1万ドル(約140万円)。耐用年数を20年とすると、余剰電力を売却すれば購入費用分に加えて5000ドル(約70万円)が受け取れる計算になるという。以上のような背景もあり、米テスラの家庭用蓄電池「Powerwall」は長期にわたって供給不足が続いている。

テスラの住宅用蓄電池「Powerwall」

住宅用蓄電池がEcoFlowに新たなチャンスをもたらすのは間違いない。しかし、同社が競合他社にやや出遅れてしまっているのも事実だ。 Hello Techは新たなハイエンドブランドを設立して住宅用蓄電池を打ち出し、早ければ2023年にも発売する計画だという。ポータブル電源市場でシェア3位の「BLUETTI(ブルーティー)」を展開する「深圳市德蘭明海科技(Shenzhen Poweroak Newener)」は21年、すでに住宅用蓄電池を発売している。EcoFlowは今後、熾烈な競争に直面するだろう。

(翻訳・田村広子)

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