中国人の死因1位、心血管疾患を遠隔心電図システムで管理する「粒恩医療科技」

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

テクノロジー注目記事

中国人の死因1位、心血管疾患を遠隔心電図システムで管理する「粒恩医療科技」

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

心血管疾患の罹患率が年々上昇している中国では、現在2億9000万人に上る患者を抱えている。2018年の「中国内住民の栄養・慢性疾患状況報告」によると、中国では毎年350万人以上が心血管疾患によって死亡し、全死亡者数の約40%を占めている。その大きな原因となっているのは、心血管疾患に対する認知度が低く、十分な予防対策がなされていないことだ。

代表的な心血管疾患の不整脈を例にとると、突然死に至るリスクが高い一方で、症状が断続的かつ不規則に出現するため、通常の心電図検査では発見しづらく、診断の精度が問題となっている。24時間体制で行うホルター心電図等の方法もあるが、現実的にはハードルが高い。

こうした状況に対し、AIを用いたデータ収集・管理によって心血管疾患の医療サポートに取り組む中国企業がある。「粒恩医療科技(Lifeon Medical Technology)」は心電図データのスマート収集デバイス、ビッグデータのクラウド管理プラットフォーム、AIによるリアルタイムのモニタリングシステム、専属医師による照合・観察の4段階で医療設備およびサービスを提供する。

粒恩医療科技社製の簡易心電図検査機器

12件の特許を取得している同社は、昨年10月に国家食品薬品監督管理局(CFDA、現・国家薬品監督管理局 NMPA)の認可を取得して今年2月に初の商品を正式に発売している。創業者の孫鑠氏によると、この商品は医療機関向け、術後患者向け、一般消費者向けの3種類がある。

心電図計測器を装着した患者からバックヤードに検測データが随時伝達され、自動照会によって処理される。患者に異常が生じた場合、アラートが出されると同時にバックヤードにデータが送信される。不整脈に関連する21の疾患を自動診断し、その後は専属医師による観察が24時間体制で行われる。患者への経過報告やアドバイスはアプリやSNS、電話などを通じて行われる。

アプリに送信されるレポート

心電図による診断は難しいうえ、異常が検出されると即時対応が求められるため、専属の医師チームによる支援が必須だ。しかし、市場に数多く出回る心電図伝達システムは、こうしたバックヤード体制を整えていない例が多い。粒恩医療科技では医療機関と提携し、発作性上室性頻脈に関する臨床研究プロジェクトを進め、サービスと実際の臨床現場の連携度をより深く検証している。

孫鑠氏は、遠隔型の心電図伝達システムが知名度・販売数の双方で伸び悩む要因について、以下の3点を挙げている。

1)大部分の製品は医学的精度が低く、臨床的な診断やモニタリングには向かない。
2)心血管疾患の高リスク群は高齢層に多く、彼らにとってアプリの形態をとるサービスは扱いづらい。
3)専門の医療チームを抱えるサービスはほとんどなく、異常を検知できても即時対応ができない。

それでも、関連商品が多数登場するという現状は、市場の潜在力を示している。医療機関向けの用途を拡大しながらも、家庭での管理を可能にした商品を市場に浸透させるには、血圧計や血糖値計測器のように、多少の時間を必要とすると孫氏はみている。

国外に目を移せば、近年、同分野での成功例もある。2016年10月にナスダックに上場した米「iRhythm」もその一つだ。同社の時価総額は14億ドル(約1500億円)を超え、販売高も年々伸びている。

iRhythmの商品は検査データを常に同期するわけではない。一定期間に収集したデータをまとめてユーザーにフィードバックし、専属チームによるレポートが担当医に共有される。一方、粒恩医療科技は自社のクラウドプラットフォームを活用して40時間連続でモニタリングを行い、リアルタイムでデータ分析を行う。

同社の従業員は約30人だ。創業者兼総経理の孫鑠氏は医療設備業界で10年以上のキャリアを持ち、医療機器メーカー国内最大手「マインドレイ・メディカル(邁瑞生物医療電子)」をはじめ、「理邦精密儀器(Edan Instruments)」などでプロダクト運営に従事してきた。同社は現在、プラットフォーム構築やプロモーション、生産能力拡大などのため、シリーズプレAで1500万元(約2億4000万円)の調達を目指している。
(翻訳・愛玉)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録