つい読んでしまうネット小説、規制強化で代理販売ビジネスが袋小路に

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中国版ツイッター「微博(Weibo)」で広告以外で頻繁に目にするのは、ヒロインを振り回すような「俺様男」が登場するような恋愛小説だ。

小説の世界にどっぷりとはまったネットユーザーは多い。読み出すと止まらないため「もう配信するのをやめて!」とか「あっという間に時間が過ぎてしまう!」という叫びがネット上にあふれている。

配信しているのは誰?

微博上の恋愛小説はたいてい作品の一部のみ公開されており、公式アカウントをフォローし返信すると続きが読めるというパターンだ。

これが典型的なやり方だ。彼らは小説を転載して販売する業者で、小説の代理販売と呼ばれる。

代理販売業者はまず正規版を扱う小説プラットフォームを探す。小説を選び、その転載と代理販売をプラットフォームに申請し、プラットフォームからキャッチコピー(小説のあらすじや説明文)とリンクを手に入れる。それからユーザーの多い微博など適当なプラットフォームで配信して、対象読者の閲覧と課金を目指すというもの。小説を一つ売るのに手間はかからない。ユーザーが課金した場合、収入の9割が代理販売の取り分で、残り1割が小説プラットフォームのものとなる。相当なもうけである。

そのため多くの小説が、ユーザーを惹きつけるよう過激に走る傾向がみられるほか、コンバージョン率を高めるため、どうしても続きを見たいと思わせるよう故意に小説を小出しにしている。

斜陽期を迎える小説代理販売

小説の代理販売は参入ハードルが低く簡単に儲かるビジネスとして、ネット文学とともに数年前に一気に広がった。

しかし2018年以降、ネット文学全体の成長が鈍化し始める。ネット文学大手「閲文集団(China Literature)」も、オンライン小説の大幅な収入減で苦戦する。2018年12月時点で、閲文集団のプラットフォームと自社販路における月平均の課金ユーザー数は、2017年の1110万人から2018年の1080万人へと2.7%減少し、課金率も2017年の5.8%から5.1%に減少した。

過去に小説の代理販売を行っていた人物によると、現在は性的表現や暴力に対するコンテンツの規制が厳しくなった関係で、小説の代理販売はビジネスとして難しくなったと説明する。「WeChatがタイトル詐欺を取り締まり、集客への規制を強めたため、多くの小説配信アカウントが凍結された。そのため今は無料閲覧でユーザーを集め、広告で収益を上げるというスタイルにシフトしている」

漫画代理販売のボトルネック

一部の代理販売業者は小説に見切りをつけ、漫画の代理販売に舵を切った。

しかし漫画の場合、販売業者の取り分は8割に減るうえ、業者の選択肢も少ない。漫画は小説ほど大量に生産されておらず、漫画の大手プラットフォームは小説プラットフォームに比べて作品を出し渋るからだ。

例えば、中国最大の漫画プラットフォーム「快看漫画(KuaikanManhua)」の広報ディレクター肖成明氏は、代理販売を使わないという方針を明らかにしている。人気作品でプラットフォームに集めたユーザーが流出するのを避けるためだ。

肖氏によれば、漫画の代理販売に力を入れているのは、質より量を重視するコンテンツプロバイダー(CP)だという。クオリティーの高い作品であれば快看漫画などのプラットフォームが配信を請け負うが、政府の規制にかかるような過激な作品は、大手プラットフォームでは受け入れてもらえない。それを引き受けるのが代理販売業者というわけだ。

大手プラットフォームで配信されるような人気作品は代理販売業者に回ってくることはまずなく、普通レベルの作品ですら代理販売を通すまでもないのが現実だ。そのため代理販売業者はコンテンツ業界の底辺で、見過ごされた良質の作品を拾い上げて、大々的にプロモーションするよりほかない。限られた条件の中で、小説の代理販売のような活気あるプラットフォームを生み出すのは至難の業だ。

恋愛小説のストーリーは人を引きつけてやまないが、その背後にある代理販売のビジネスはひっそりと幕を下ろそうとしている。
(翻訳・畠中裕子)

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