話題を呼ぶファストファッション「SHEIN」、異例の取材対応 世界の批判に回答(上)

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話題を呼ぶファストファッション「SHEIN」、異例の取材対応 世界の批判に回答(上)

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中国発のグローバルファストファッションブランドSHEINがこのほど、英国のファッション小売業界向けメディア「Drapers」の取材を受けた。SHEINがマスコミ取材に応じるのは極めてまれだ。創業者の許仰天(Chris Xu)氏は組織を静かに育むことに集中し、同業者同士の交流であれマスコミ取材であれ、あらゆる外部の視線にさらされることを拒んできた。

しかし、すでに評価額が1000億ドル(約13兆6700億円)に達し、世界で最も価値のあるユニコーン企業にまで成長してきたSHEINは、集まる注目をもはや回避できなくなった。外部に対してより多くの情報を公開し、さまざまな疑問の声にも応えていかなければならない。透明性をもって初めて持続的な信頼を得ることができるからだ。

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今回、SHEINを代表して取材に応じてくれたのはシンガポール事業のゼネラルマネージャー(GM)で政府関係業務のグローバル責任者Leonard Lin氏だ。同氏は今年2月にSHEINに加わった。その前はシンガポール政府系投資会社テマセク・ホールディングスで9年間、主に広報業務に従事してきた。テマセク以前はシンガポール国防省に6年間勤務した経験を持つ。

シンガポールは現在、SHEINの本社所在地であり、中国と欧米文化が交わる土地柄でもある。Lin氏は長年シンガポールに住み、現地に厚い人脈を持っている。彼がそのシンガポールの新たなGMとして着任したことで、SHEINはよりスピーディーに地固めを進め、欧米世界ともより円滑にコミュニケーションを図れるようになった。

今回のDrapersのインタビューで、SHEINをめぐる批判を始め、同社の基本情報、商品の配達や価格、技術イノベーション、サプライチェーンの透明性、将来の展望などについて明かされた。以下、Lin氏のインタビュー内容に筆者による独自の見解を交えてまとめている。

ベールに包まれてきたSHEINの神秘性

2020年に世界中で新型コロナウィルスの感染が広がり、オンライン消費は爆発的に伸びた。ファストファッションを何年も手がけてきたSHEINも一気に勢いづき、業績を大きく伸ばして世界中の経済メディアから注目されるところとなった。

それでもSHEINは粛々と実務に取り組み、積極的な露出を好まなかったため、かえって強烈にミステリアスさを印象づけた。Lin氏はこれを一種の「アジアンカルチャー」だと表現し、SHEINはとくに事業モデルが誤解されていると述べた。今回取材に応じたのはSHEINに対する理解を深めてもらいたいことが理由で、今後は段階的にだがより多くの情報を公開していく考えだという。

SHEINが広報の重要性を認識したのは明らかだ。これは米国市場への上場を目指しているからだけではない。グローバルブランドとしての責任を持ち、対外的にコミュニケーションを図る義務を果たすことでSHEINがユーザーから持続的な信用を勝ち取っていく必要があるからだ。

基本情報を再確認

SHEINの成功モデルについてはすでにさまざまな分析があるが、Lin氏は改めて以下のように説明した。

(1)SHEINは需要に応じて生産量を調整する「小ロット生産(small orders and quick reorders)」モデルを採用しており、一つの商品がデザイン起こしから完成品になるまでの期間を2〜3週間にまで短縮した。

(2)1日あたりの新商品発売数は市場の需要や季節性に応じて常に変動している。

(3)従来型モデルと比べ、SHEINは正確にトレンドを把握でき、消費者の需要をより正確に予測できるため、ロスが少なく在庫も減らせている。

(4)ファストファッション業界の売れ残り率は平均25〜40%だが、SHEINでは1桁台におさめている。

1日あたりの新商品発売数に関しては具体的な数字の言及は避けた。しかし筆者がこれまで長らく観察してきた限りでは、SHEINは今年に入り、1日あたり6000点あまりの新商品を発売している。これまでは、2019年だと1日あたり400点、20年は800点、21年は2000点だった。

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配達スピードの短縮や価格競争

SHEINが受注した商品はほぼすべてが中国から発送されるため配達日数がかかる。欧米のユーザーが商品を注文して通常配達を選択すると、商品を受け取るまでには約2週間、エクスプレス配達を選ぶと7日ほどかかる。

Lin氏によると、配達日数を短縮するために、消費マーケットの近くで商品を生産する試験的プロジェクトを進めているという。

それ以上具体的な説明はなかったが、該当する可能性が最も大きいのはブラジルのプロジェクトだろう。SHEINは今年3月にブラジルでプラットフォームモデルをテストしており、サードパーティの加盟店が SHEIN のサイトで店舗を開設し販売できるプロジェクトを開始した。

ブラジル現地の業者がSHEINプラットフォームへ出店できるということで、配達日数を大幅に縮めることに繋がる。将来的にはブラジル業者の商品をブラジル以外のマーケットに販売することも可能で、そうなれば米国、カナダおよび南米のユーザーはこれまでよりも早く商品を受け取れるようになる。

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一方、商品デザインが極めて豊富な上に超低価格というのがSHEIN成功の核心だ。しかし、欧米では環境配慮や持続可能性がますます求められるようになり、SHEINでもより環境に優しく値段の高い原材料を使わざるを得なくなった。これで低価格は維持できるのだろうか?

Lin氏は「3つのコスト優位」によってこれからも価格の強さを維持できると自信を見せる。

(1)SHEINの事業モデルはオンライン運営に特化するもので、実店舗を構えた場合の店舗賃料や商品保管スペース、人件費や物流手配費が大きく削減できる。

(2)SHEINが需要に応じた生産数を調整するために用いる精密な予測モデルは、在庫コストも大きく減らす。

(3)SHEINの技術イノベーションはサプライヤーの生産性を上げ、生産コストもカットできる。

環境配慮に対する欧米諸国の要求は、すべてのファストファッションブランドに向けられたもので、SHEINのライバルも同様の問題に直面している。SHEINがすべきことは、事業モデル、在庫管理、サプライチェーンのIT化など自社の強みを持ち続けて価格競争力を維持することだ。

続き:サプライチェーンの透明性・「デザイン盗用」から脱却・将来の展望について

原文:WeChat公式アカウント「博一大叔」(ID:kjds360)

(翻訳・山下にか)

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