冬のEV、航続距離は数割減も 悩めるオーナーを救うのはバッテリー交換か急速充電か

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北京に冬が訪れ、最低気温がマイナス10℃にまで下がるようになった。ある日の午前3時半、配車サービスのドライバーをしている張雷さん(仮名)はいつもの時間に自宅から最も近い公共充電設備で充電を開始した。

「北京では気温が下がると航続距離が明らかに短くなるので、少なくとも1日に一度充電が必要になる」と張さんは語る。日々300キロ近く車を走らせるが、個人で充電設備は持っておらず、夜中に公共充電設備を使えば少し安く済むので、いつも早起きして利用する。

気温が急激に低くなる冬、新エネルギー車のバッテリー性能は低下し、多くのカーオーナー、特に北方のオーナーたちを悩ませている。業界関係者によると、温度は新エネルギー車のリチウムイオン電池の活性や容量にダイレクトに影響を与えるため、温度が下がるにつれ、電池内部の化学物質の活性が低下し、電池の容量が小さくなるという。一方電池内部の電気抵抗は大きくなるので航続能力は低くなり、充電速度にも影響してくる。また、充電設備の数が十分ではない地域もあり、多くのオーナーが不便を強いられている。

航続距離は短くなるのか

北京市通州区の地下駐車場内にある充電設備(画像:時代財経)

中国の電気自動車(EV)最大手BYD(比亜迪)の2021年型「秦PLUS」を所有する長春市在住の男性はこう話す。「私の車の航続距離は公称で600キロだが、最近は満充電しても300キロ程度しか走れない」。運転時にエアコンやシートヒーターを使うため電力消費量が春や秋に比べるとかなり多くなることもあり、「冬になる前には100キロ走行するための電力消費量は12.8kWhだったが、今は21.3kWh必要」という。

同じく、東北地方に住む米大手テスラ「Model 3」のオーナーは、最近では満充電にしても公称航続距離の6割程度しか走らないと語った。

しかし、長江(揚子江)より南になると冬でも航続距離はまずまずだ。上海在住で、北京汽車集団(BAIC)傘下のハイエンドブランド「ARCFOX(極狐)」の「ARCFOX T」を所有するオーナーは時代財経の取材に対し、公称の航続距離はNEDC(新欧州ドライビングサイクル)で653キロだが、上海では冬でも550キロ走るので、8割5分といったところだと話した。さらに南の深圳では冬でも気温がそれほど下がらないため、EVの航続距離に目立った影響は見られない。

冬に航続距離が短くなりオーナーが困っているという点についてテスラと北京現代汽車(Beijing Hyundai Motor)に取材したところ、テスラでは冬季の航続距離や充電能力を高くするためにバッテリーにヒートポンプシステムと急速充電技術を取り入れており、低温環境下での性能をある程度改善する効果があるとした。北京現代は「冬季にEVの性能が低下するのは仕方のないことで、現時点では効果的な解決方法はない」とした。

中国EV充電インフラ促進聯盟が2022年11月に公表したデータによると、10月までに中国全体で加盟各社から報告のあった充電設備は168万台になる。しかし南方の省・市に偏っており、北方には少ない。同聯盟のデータからも充電インフラの整備状況の南北差がわかる。設備の数が多い上位10省・市の広東省、江蘇省、上海市、浙江省、北京市、湖北省、山東省、安徽省、河南省、福建省で全体の71.6%を占め、多くが南方の比較的気候が温暖な地域に位置し、華北地区や東北地区の公共充電設備は不足していることがうかがえる。

このほか、充電設備の設置状況が合理的でないことや規模が小さいこと、ガソリン車がスペースを占有するといったことも、新エネルギー車のオーナーにとっては改善が待たれる点だ。また記事冒頭で紹介した張さんによると、充電中には暖房を使用することができないが、充電が終わったら速やかに車を移動させる必要があるので、ただ車内で待っているしかない。これはとても不便だと張さんは感じている。

EV業界では新エネルギー車の給電効率を改善するため、現在バッテリー交換と急速充電技術という二つの対策を進めている。蔚来汽車(NIO)の「ES6」に乗る北京在住のオーナーは、冬に出先で充電する必要が生じた際には、NIOのステーションでバッテリー交換をすることが多いという。交換は10分程度で完了するそうだ。

北方ではバッテリー交換方式はEVオーナーに好意的に受け入れられており、特に日常的に車を使うことの多いオーナーに歓迎されている。北京で北京汽車の「EU」を運転するタクシードライバーの多くは、仕事柄車に乗る時間が長いが、北京汽車が多数のバッテリー交換ステーションを開設しているので、タクシードライバーにはバッテリー交換のほうが向いているとし、「冬には航続距離が短くなるが、バッテリー交換は充電よりも短時間で済むし、価格の面でも大きな開きがない」と話した。

バッテリー交換のほか、高圧急速充電技術も給電効率を高めるのに有効だと期待されている。この数年で独ポルシェ、小鵬汽車(XPeng Motors)など多くのメーカーが800Vの高電圧急速充電技術を開発、5分の充電で航続距離を200キロ伸ばすことができるとしている。

現在、政府も高圧急速充電技術の実用化を積極的に進める政策を実施している。「交通運輸部の交通運輸分野における新型インフラ建設の推進に関する指導意見」では、高速道路サービスエリアに超急速充電設備や自動車用高出力充電設備の整備が必要だと明記している。

注意すべきは、バッテリー交換にせよ高圧急速充電技術にせよ、車載バッテリーや充電技術、必要となる設備のコストが極めて高いということだ。

高圧急速充電を実現するには技術面、安全面、寿命、コスト、充電機器、送電網の整備などの課題を解決しなくてはならない。オーナーにとっても、高圧急速充電を使えば充電費用は高額になる。バッテリー交換では車載バッテリーの標準化、共通化という課題に加え、バッテリー交換ステーションが少ないといった問題も存在している。

作者:時代財経APP(WeChat ID:tf-app)、武凱

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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