中国EV用バッテリー産業、海外進出で躍進。欧州や東南アジアで積極展開

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2022年の中国駆動用バッテリー産業を一言で表すとすれば「海外進出」だろう。

中国のバッテリー企業は2021年以降、海外自動車メーカーからの受注を大量に獲得するようになり、22年は受注量がさらに増加した。海外の自動車メーカーから受注した企業には寧徳時代(CATL)、国軒高科(Gotion High-Tech)、蜂巣能源(SVOLT Energy)、欣旺達(Sunwoda)、億緯鋰能(EVE Energy)、遠景動力(エンビジョンAESC)などがある。

増加する海外からの受注はすでに各社の業績にも反映されている。寧徳時代の海外バッテリー事業の売上高は、2022年上半期に前年同期比123.35%増の222億5400万元(約4300億円)となった。海外の売上高だけで、業界3位である中創新航(CALB)の21年売上高の3倍以上に相当する。国軒高科も22年上半期に海外事業の売上高が、同358.28%増となる7億7200万元(約150億円)に達した。

中国のバッテリー企業はこの勢いに乗ってグローバル化を進めている。寧徳時代はすでにテスラ、ヒョンデ(現代自動車)、フォード・モーター、ダイムラー・トラックなど海外メーカーと提携を結び、協業を深めている。昨年7月、フォードが寧徳時代とグローバル戦略協力を結んだことを発表、提携内容には中国、欧州、北米における駆動用バッテリー供給が含まれる。また翌8月にメルセデス・ベンツが寧徳時代との提携拡大を発表したほか、9月にはBMWが円筒型バッテリー4680の一部を寧徳時代から調達することを発表した。

中創新航も上場申請書類の中で、危険物輸送に関わるUN規格や電気・電子分野のIEC規格などの国際的な規格をすでに取得しており、22年第3四半期には世界的な自動車メーカー2社にバッテリーを納入する予定だとしていた。中創新航は欧州や米国など海外の自動車メーカーからの受注を獲得しているほか、同社のバッテリーを搭載したEV「スマート#1」が国内外で好調な売れ行きを見せるなど、グローバル化に弾みがついている。

新たなバッテリー技術の量産については、寧徳時代、億緯鋰能、遠景動力がBMWから円筒型バッテリー4680を受注しており、関連工場の建設計画も始動している。ドイツのフォルクスワーゲンは欣旺達を高電圧バッテリーのサプライヤーに加えた。これらは全て、最先端のバッテリー技術を巡る中国企業の取り組みに将来性があることを示すものだ。

図表:2022年、中国駆動用バッテリー企業の海外事業での提携状況

さらに駆動用バッテリーの産業チェーンを構成する電池製造設備・材料メーカーのうち、先導智能(Lead Intelligent)、容百科技(Ronbay Technology)、星源材質(Senior Technology)などが続々と海外に工場を建設し、グローバルなサービスの構築に力を入れている。

バッテリー産業が群れをなして海外に飛び立つ原動力となっているのは、予想外の成長を見せる川下の新エネルギー車市場だ。中国の新エネルギー車の輸出台数は増加を続けており、2022年1~10月には前年同期比96.7%増の49万9000台を輸出した。海外でも新エネルギー車の販売台数は増加の一途をたどっている。欧州9カ国の新エネルギー車販売台数は1~11月に177万9000台で、同8.4%増加し、普及率は22.5%に達した。さらに海外のエネルギー貯蔵市場で需要が急増したことにより、中国のバッテリー企業は第2のビジネス開拓に動いている。

地域別に見ると、新エネルギー車の主力市場の一つは欧州だ。全体の普及率は約20%で、なおも成長する見込みがある。欧州の自動車メーカーのEVシフトが進むにつれて、駆動用バッテリーの需要も日増しに高まっている。欧州のバッテリー企業の生産能力では到底この需要を満たすことができないため、欧州の自動車メーカーはバッテリーを中国企業に大量発注しており、多くが長期契約を結んでいる。

ほかに進出先として注目されているのが東南アジアだ。

東南アジアは6億人もの人口を抱え、経済成長を続けている地域だが、自動車の普及率は20%に満たないため、将来的に新エネルギー車が増加する余地が十分にある。

また東南アジアは鉱物資源に恵まれている。インドネシアは世界最大のニッケル生産国で、2020年には世界のニッケル生産量の31%を占めた。次世代の高性能バッテリーは通常、ニッケルの含有量を増やすことでエネルギー密度を高めている。これに伴い、ニッケル資源に対する産業界の需要が大幅に高まっており、駆動用バッテリー企業や材料メーカーはこぞってインドネシアに生産能力やリソースを配備している。

寧徳時代は昨年4月にインドネシアでの産業チェーン構築に着手した。インドネシア国営非鉄金属大手AnekaTambang(ANTAM)および国営バッテリー企業Industri Baterai Indonesia(IBI)と協議を締結し、共同でインドネシアに駆動用バッテリー産業チェーンを形成することで合意した。プロジェクトにはラテライト型ニッケル鉱床の開発、ニッケル精錬、バッテリー材料のリサイクルなどが含まれる。

ベトナムやタイにも進出が相次いでいる。寧徳時代は昨年10月にベトナムのEVメーカーVinFastとグローバル戦略提携を結んだことを発表、CTP(Cell to Pack)バッテリー供給における提携をベースにスケートボード型統合シャシー(CIIC:CATL integrated intelligent chassis)などのプロジェクトで協力を進めるという。12月には、国軒高科のシンガポール法人Gotion Singaporeがタイ国営エネルギー会社PTTグループ傘下のNuovo Plusと戦略提携を結び、タイに合弁会社NV Gotionを設立した。同合弁会社はリチウムイオン電池のパック生産ラインを建設し、タイでバッテリーの現地生産と市場開拓を行う。

東南アジアの新エネルギー車市場および川上の産業チェーンでは、日本や韓国の企業が大きなシェアを占めている。中国の新エネルギー企業が東南アジア市場へと進出すれば、必然的に日韓企業のシェアを奪うことになる。今後、東南アジア市場での競争はますます激しさを増していくに違いない。

(翻訳・畠中裕子)

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