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自転車および電動自転車は、短距離ならば中国で最も便利な移動手段だ。中国の交通法規では満16歳以上なら誰でも電動自転車に乗ることができる。また、国家統計局によると、2018年末時点で中国の16~65歳人口は9億8000万人に達している。つまり、中国では9億8000万人が電動自転車の利用者となる可能性があるということだ。
現在、中国における電動自転車保有台数は2億5000万台超。今年4月には電動自転車に関する国家標準(電動自転車安全技術規範)改訂版が施行され、規定に満たない古い車両は数年内に市場から淘汰されることとなった。
新たな国家標準では、電動自転車はペダル付きであること、最高時速が25キロ以内であること、時速15キロに達するとアラームが鳴ること、車両総重量(バッテリー含む)が55キロ以内であること、モーター定格出力が400ワット以内であること、バッテリー電圧が48ボルト以内であること、耐タンパー性や難燃性などでも基準を満たすことが求められる。
「雅迪(yadea)」、「愛瑪(AIMA)」といった中国の代表的な電動自転車ブランドはいずれも2000年前後に設立された。しかし、新国家標準の実施を受け、後発メーカーもこれを満たす製品を開発することによって、市場シェアを獲得できる機会が巡ってきたと言えるだろう。
2016年に創業した新興メーカー「星駕出行(Star Drive)」は、スマートバッテリー搭載の電動自転車とビッグデータを活用したアプリケーションプラットフォームを開発するスタートアップだ。「借りる、買う、充電する、バッテリーを交換する」のすべてを網羅するサービスエコシステム構築を目指している。
創業者兼CEOの余林氏は、もともと愛瑪ブランドの原始株主。業界で十数年のキャリアを持ち、かつては「新日(SUNRA)」や愛瑪を販売台数トップのブランドに押し上げた実績もある。同氏は新国家標準の実施について、「スピードや重量、サイズなどの基準が明確化した。実装できる機能が限定される中、リチウムイオンバッテリーが標準装備になるのは必然で、外観や使用感、スマート化、IoT化といった要素が各製品の差別化ポイントになってくるだろう」と述べる。
同社が新国家基準に合わせて発表した新製品「極克.KING」は、開発期間2年、投入資金数千万元(数億円)をかけて完成したもの。発売は6月末を予定しており、すでに江蘇省・浙江省・上海市・安徽省の一部で同製品対応の充電スタンドを敷設している。また、セルフ方式のバッテリー交換スタンドも試験運用段階に入っており、7月には正式に運用を開始する。
バッテリー交換サービスの需要に関して、余CEOは、中国での電動自転車の利用回数は1日当たり7億回であり、自転車1台当たり3日に1回の充電を行うと仮定すると、1日のバッテリー交換サービスのニーズは2億回を超えると試算する。また、国家応急管理部は火災防止のため居住空間などの屋内で私的にバッテリー充電サービスを運営することを固く禁じており、こうした規定も事業にとって追い風になると見ている。
電動自転車を販売するだけではなく、レンタルサービスや充電設備網までを網羅する同社のサービスエコシステムは、よりチャネルや利用者の需要に添ったものになるだろう。
極克.KINGは、自動車開発に携わるチームが設計した。その開発プロセスは全面デジタル化され、CAE(設計・製造シミュレーション支援ソフト)による製品分析も導入している。製品には自社開発のスマート集中管理装置を実装し、定格容量48V18Aのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用した。
第5世代移動通信システム(5G)が普及し、すべてのモノがIoT化すれば、電動自転車もスマートツールの一つとなり、利用者の移動や生活のシーンと密接に結びついてくると余CEOは見ている。こうした時代に、販売店だけでは集客はかなわない。販売だけではなくレンタルにも対応し、なおかつその利便性を上げるシステム全体が整ってはじめて、ユーザーの需要に応えられるからだ。
(翻訳・愛玉)
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