ガチ中華の「重心」、池袋から上野に移る納得の背景~知名度高いアメ横、インバウンド再開視野【中華ビジネス戦記】

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池袋、高田馬場に西川口。都内周辺でガチ中華の店が多く集まるエリアはいくつかあるが、2022年に出店が続いたのが上野・御徒町エリアだ。筆者は新店情報を聞きつけては食べ歩き、ブログで発信しているが、ブログを振り返ると2022年は上野エリアでは池袋と高田馬場を上回る15店舗以上がオープンしていた。ガチ中華の「重心」が移動しているのか?店のオーナーに話を聞いてみた。

理由1:コロナ禍で好立地のテナントが空いた

2022年は上野にガチ中華店の出店ラッシュが起きた

上野エリアにガチ中華の新店が増えた理由として、多くのオーナーが指摘するのは、「コロナ禍で多くの店が撤退した結果、出店しやすくなった」ことだ。

2019年に池袋で熊猫火鍋(パンダホット火鍋)をオープンした金さんは2022年に上野にも出店した。金さんは、「コロナ禍以前の上野は家賃が高く、飲食店を経営するのに適さない場所も多かったが、コロナ禍以降いい物件が空き、家賃も以前より手頃になったことで上野店の出店を決めた」と教えてくれた。

ちなみに、熊猫火鍋1号店の池袋はビルの7階で、上野店はアメ横からほど近い通りの1階。新小岩で2021年に四川料理店 楽串をオープンした袁さんは、「店の位置が1階か2階以上にあるかで人の入りが大きく変わります。駅チカで1階に出店できるテナントはあまり多くないので探すのが大変なんです。上野や池袋も探しましたがなかなかいい物件が見つからなかった」と話す。やはりコロナ禍でテナントの選択肢は増えたようだ。

理由2:食材調達しやすい

コロナ禍の影響で好立地のテナントに入りやすくなったエリアは上野だけではないだろう。その中でガチ中華飲食店に上野が選ばれるのは、「食材調達に便利」という理由もあるようだ。アメ横周辺には大きな中華物産店や、一般的なスーパーでは取り扱っていない皮・骨付き肉などを販売している店も多い。

アメ横には中華物産店もいくつかある

理由3:日本人と中国人の観光客見込める

インバウンドの復活を視野に上野で店を開くケースもある。中華料理店に中日言語対応のメニュー端末を導入しているICMの宋さんは「上野で中華料理が増えているのは池袋や高田馬場の中華料理店の飽和に加え、中国人観光客の知名度が高いエリアだから」と解説する。池袋や高田馬場は日本語学校が多く、留学生を中心に在日中国人の集客が見込めることから、中国人向けの店舗やサービスが広がっていった。一方、上野はアメ横をはじめ観光客の知名度も高いので、在日中国人と中国人旅行者の両方を呼び込めると考えて出店するオーナーもいるという。

上野といえばパンダのイメージも強く、熊猫(パンダ)火鍋の金さんは「当店にとっては上野なら日本人のお客さんにも注目してもらいやすい」と話した。

宋さんによると上野で薬局や焼肉屋、居酒屋などを経営する中国人も増えている。筆者が以前、高田馬場の中華料理店で食べて支払いをしたところ、レシートに記載されていたのはアメ横にある寿司屋だったことがあった。この寿司屋がある場所は以前は広東料理店だったので、オーナーが業態を変更し、高田馬場ではガチ中華、上野では寿司屋の日中料理二刀流に整えたと推測される。観光地が集まる上野なら、中国人オーナーが日本料理店を営むことで、日本人と中国人観光客の両方にアプローチできるメリットがあるのだ。

アメ横にある飲食店「京味居」。オープン当初はガチ中華を提供していたが、最近は日本人向けの居酒屋になっている

上野にガチ中華の飲食店が増えている理由として、丸の内などの都心エリアに近いため、日本で働く中国人をターゲットにしているという話もあった。このまま上野にガチ中華の出店が続き、第二の池袋になるのか注目したい。

阿生:東京で中華を食べ歩く26歳会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。Twitter:iam_asheng

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