次々とユニコーンを生み出す中国オンライン教育業界、トップ企業10社の集客戦争

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次々とユニコーンを生み出す中国オンライン教育業界、トップ企業10社の集客戦争

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K-12(5歳児から高校生)を対象とした中国のオンライン教育企業各社は、夏休みシーズンを前に苛烈な広告合戦を繰り広げている。

すでにニューヨーク証券取引所に上場済みの超大手「TALエデュケーション・グループ(学而思国際教育集団、現在は「好未来」に改名)」と並び、オンライン学習サービス御三家と称される「猿補導」「作業幇」ではいずれも夏季受講生の募集に数億元(十数億~140億円)の予算が投じられており、1日当たりの広告費は1000万元(約1億6000万円)にも上る。

TAL傘下のオンライン学習サービス「学而思網校(Xueersi Online School)」は6月27日、大々的に夏期講習のトライアル受講会を開催した。創業から17年間で、これほど受講生募集に力を入れるのは稀だという。夏休みシーズンに向けて確保していた4000人の講師に加え、1000人の大学生アルバイトを追加募集している。

中国が主催するワールドインターネットカンファレンスに出展する「学而思網校」

広告は、公共交通機関から屋外、WeChat(微信)やTikTok、TVドラマのタイトルスポンサーシップなど、オンライン、オフライン双方であらゆる媒体を網羅している。

この生徒争奪戦には、TALのほか前出の猿補導、作業幇、また各ユニコーンが手掛ける「掌門1対1」「一起学」「作業盒子」「VIPKID」「有道精品課」「企鵝補導」「跟誰学」が加わった。これら10社が今年の夏休みシーズンに向けて投入したプロモーション費用の総額は30~40億元(約470億~630億円)といわれ、結果的に延べ100万人以上の受講生を獲得した企業も複数ある。
とはいえ、全国の5歳児と小中高生(K-12)に占めるオンライン夏期講習の受講者数はようやく10%に届くレベルだ。

スーパーユニコーンへの道のり

K-12を対象としたオンライン教育業界は、評価額1000億ドル(約10兆8000億円)を達成する企業を生むポテンシャルがある。

中国教育部の統計によると、全国のK-12世代は2億人。前出の「10%」という数字を当てはめれば、オンライン学習サービスの潜在顧客は最低でも2000万人になる。グループレッスンの受講料が年間3000元(約4万7000円)で、1人当たり1.5科目を受講すると仮定すれば、受講生1人で年間4500元(約7万円)の受講料を支払うことになる。全国で2000万人の受講生を集めれば、その市場規模は1000億元(約1兆6000億円)に迫るのだ。すでに上場した企業のPSR(株価売上高倍率)を鑑みれば、将来的にスーパーユニコーンが誕生するという仮説は成立する。

「猿補導」を運営するユニコーン会社には、IDGキャピタルやテンセントからも出資

あるアナリストの分析によれば、オンライン学習サービスの中でも、収益面や財務面で最も理想的なのはグループレッスンだ。その粗利率は50~70%にも上り、収益に占めるコストも低い。そして、大規模化すればするほど収益力は伸びていく。

オンライン学習サービスが従来型の学習塾を急速に駆逐している状況だが、TALは、もともと学習塾などのオフライン事業で成長した企業であり、現在も主力はオフライン事業だ。もしオンライン事業で競合他社に敗北を喫することがあれば、負の影響がオフライン事業にまで及ぶのは必至である。その意味でも、オンライン事業の成功は失敗の許されないミッションなのだ。

また、オンライン学習サービス各社もそれぞれに課題も抱えている。

問題集や回答検索の無料アプリから出発した猿補導にとっては、グループレッスン事業の成功が収益化への唯一の道だ。宿題添削の無料サービスを主力事業とする一起作業や作業盒子は、事業スキーム自体がすでに行き詰まっており、有料化への転換が必須だ。エリート教師陣を売りにしている掌門1対1は、オンライン学習サービスの講師に対し教員免許の取得を義務化した政策の影響で、やはり方向転換を迫られている。来年に黒字化、再来年に上場を目指すVIPKIDは、現行のマンツーマン授業以外に、さらなる収益化戦略が求められている。

業界参入の門は閉じかけている

この5年間、水面下で着々と成長してきたK-12向けオンライングループ講習事業は、ここにきて爆発的な成長をみせている。しかしこれは同時に、後発企業にとってはもはや参入余地がなくなったことをも意味する。

集客コストはすでに前例がないほど跳ね上がっている。あるオンライン教育企業のCEOは「マンツーマン講座を手がける企業にとっても、グループ講座を展開する企業の台頭は打撃だ。集客コストはこの2カ月連続で従来の倍になった」と述べた。生き残れずに淘汰された企業も多いという。

加えて、グループ講座の運営は一朝一夕で軌道に乗るものではない。

複数の受講生を相手にするグループ講座は、カリキュラム、講師、サービス、技術のどれをとってもクリアすべき条件の水準が高い。オンライン教育事業としては最もハンドリングが難しい形式だ。さらに体系的なマーケティング力も求められる。この事業で問題となるのは「やる、やらない」ではなく「できるか、できないか」にあるといえる。

ただし、「地方」には、この市場に後発が参入できる唯一の道があるかもしれない。

例えばシェアサイクル業界では、主要大都市のマーケットを席巻したリーディングカンパニーを、地方都市での事業展開に絞り込んだ後発企業が追い上げ、最終的に業界の覇者になった前例がある。

教育業界でも、多額の資金を注ぎ込み大都市圏で勝負をかけるよりも、地方都市で地道に事業を育てていく戦略が、後発企業にとっては勝機となるかもしれない。そのためには、直接営業を主軸に、地域の特性に寄り添った事業展開を行うべきだろう。

オンライン教育の事業スキームは、O2O(オンラインからオフラインへの誘導)からマンツーマン講座、そしてグループ講座へとトレンドが変遷してきている。苛烈な競争が続く中、最終的にスーパーユニコーンとなるのはどの企業だろうか。
(翻訳・愛玉)

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