早くも中国でAIが生成した美人ブロガーが多数登場。その前例に学ぶことは

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中国でテクノロジーをマネーに変える速度は往々にして試行錯誤をしないので速い。最近流行りのAI画像生成もそのひとつ。Stable DiffusionやMidjourneyなどのアルゴリズムが更新され、実在のモデルやインフルエンサーのような人物と見紛う画像を生成できるようになり、これが早速ビジネスに適用され、AIで描かれた女性がSNS「小紅書(RED)」やECの「淘宝」や「天猫」などで見るようになった。

少なくとも現時点でAIが生成した美人画像は中国でウケがよく、小紅書では生成したAI画像を自撮り画像であるかのように投稿して数万のフォロワーを抱えるアカウント(ここでは便宜上「AI美人ブロガー」とする)が続々と登場している。AI美人ブロガーを作成した人はほぼ全員が男性でありAI関連分野に仕事や研究で携わっている。一方女性の作成者についてはアニメーターやデザイナーが参入していて、キャリアや感性を生かしたコンテンツは高く評価されている。ちなみに作成元の地域では広東省が圧倒的に多いという。

数万のフォロワーを短時間で獲得するのは中国でも難しい。イラストを描いていてもすぐになれるものではない。ところがAI美人ブロガーとなると状況は変わる。AI画像を鍛える開発側のクオリティが高く、AI画像の真偽の区別ができないために、本当の人物と思って連絡先や服について聞こうと連絡しようとする人が多数いる。「アカウントはすべてAIによって生成されており、当分の間通信する機能はありません」という自動応答を返すAI美人ブロガーも。

自動応答を返すAI美人ブロガー

AI美人ブロガーのマネタイズ方法はいくつかある。トラフィックのコンバージョン、広告、プロモーション、ブランド提携といったもので特にサイトへの誘導が一番多い。そのため報酬はそれほど多くない。広告やプロモーションの中で多いのが、AI美人ブロガーの作り方教室だ。レッスン販売は収益化するための最速の方法であり、多くのクリエイターがビジネスにしている。閑魚や淘宝などのECサイトでもAIで描く女性モデルを写真1枚からIPまで様々な形式で数十元(数百円)から数百元(数千円)で販売している。 

AI美人ブロガーとブランド提携はまだほとんどなく、関心を持ったアカウントの写真がAIによって生成されたことを知ると企業担当は提携を断念しがちだ。AI美人ブロガーは男性をターゲットに男性目線の姿や服装を見せることができるだけなので儲からないというのが理由だ。バーチャルキャラクターが動いて語って踊って歌ってキャラクターを確立し、企業とも広告提携を行う事例が多数出てきているのとは対照的だ。

淘宝でAIモデルを導入するショップは既に出てきている。AIモデルをいち早く導入したアパレルショップのオーナー林氏は「(この技術は)まだテスト段階にあり、現時点で最大の欠点は光と影、そして衣服の素材の質感がいまいちなことです。また店で1人のモデルばかり採用しているような感覚になります」と語る。

AIモデルを採用したケース

AI美人ブロガーのメリットはこうだ。コストは非常に安く、すぐ作成してくれるというメリットがある。AI美人ブロガーをカスタマイズするにしても、本物のモデルを雇うよりもはるかに安価だ。中国で盛り上がったバーチャルキャラクターだが、これを動かして喋らせるのはまだまだ非常に高価だ。また様々な有料サービスを組み合わせなければならず、価格面で不利なだけでなく手間の面でもハードルは高い。前述の通り、AI美人ブロガーは企業の広告塔としては使えないが、さっと男性ファンを獲得してお金を落としそうな広告に誘導するだけならコストは安く役目としては十分だ。

手軽にAI美人ブロガーが生成できるとなると、誰もが参入するようになり、やがてAI美人ブロガーの競争過剰になる。テクノロジーとコンテンツの両方を理解している人は少数派で、まだ作成方法がわからない人も多いことから、サービスの初期普及時のユーザーを獲得するボーナスチャンスとなっているからだ。こうした動きはこれまで中国のネットトレンドでも繰り返し行われていた。

REDで多数公開されているAI美人ブロガー

リスクもある。他国でもそうであるようにAIで作画した画像は既存の画像を学んだものでありプライバシーの侵害にならないよう倫理的配慮が必要である。中国政府の工業和信息化部や公安部などは連名で発表した「インターネット情報サービス深度合成管理規定」では、中国でもディープラーニングサービス事業者は、加工対象者に別途同意を得なくてはならないことを記している。

またAI美人詐欺を使ったリスクは今後しばしば起こるだろう。実際2月にはAIで描かれた女性をさも本物のように紹介し、女性が同行するという船上パーティーを1人3000元で募る詐欺が話題になった。これまで中国は無数のネット詐欺事件と対峙し加害者を逮捕したが、それでも詐欺はなくならない。中国メディア各誌はこのリスクを上げており、「AIに騙されないリテラシーが必要」とまとめている。

https://36kr.jp/230132/

(作者:山谷剛史)

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