生鮮食品ECが上海で激突 全国制覇の前哨戦か

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上海の生鮮市場で版図を広げてきた次世代スーパー「盒馬鮮生(Hema Fresh)」や生鮮食品EC「叮咚買菜(dingdongmaicai)」に対し、北京を本拠地とする生鮮食品EC「毎日優鮮(MissFresh E-Commerce)」が真っ向から戦いを挑んでいる。

「今年の目標は(上海)市場で絶対的な1位を占めることだ」。毎日優鮮の王珺CFOはこう宣言した。同社は上海を中心とした華東市場で毎月30%という速度で急成長しており、王氏の発言も決して夢物語ではない。同社は今年、上海で10億元(約160億円)の追加投資を行った。下半期には上海に500か所の配送倉庫を新たにオープンする計画だ。

上海は生鮮食品関連のスタートアップが最初に進出する市場だ。14年前に中国初の生鮮食品ネットスーパー「易果生鮮(Yiguo.com)」が誕生。2016年にはアリババが手掛ける盒馬が第1号店をオープンしたことで「ニューリテール(新小売)」ブームが巻き起こり、各社がしのぎを削っている。中でも最前線にいるのが、上海生まれの盒馬鮮生と叮咚買菜であり、また上海進出では後れをとったものの、急速に成長している北京生まれの毎日優鮮だ。

上海市の主要ネットスーパー(作成:36Kr)
北京市の主要ネットスーパー(作成:36Kr)
生鮮食品関連企業のビジネスモデル一覧(作成:艾瑞諮詢)

盒馬鮮生:ブランディングは成功したが、万全ではない

盒馬はコンビニエンスストアや「京東物流(JD Logistics)」で小売・物流経験を積んだ侯毅氏により設立され、中国国内で初めて配送倉庫と実店舗を一体化させた生鮮食品ビジネスを確立させた。

5000平方メートル近い巨大な店舗には、飲食店、クリーニング、美容室など数多くのサービスが揃い、週末に家族が揃って出かける憩いの場所となっている。盒馬の店舗数は、大型店舗を構える同業他社と比べて圧倒的に多い。また自社アプリやアリババ系ECサイトを武器に、大量かつ安定した集客に成功している。

盒馬の快進撃は長く続いたが、叮咚買菜が上海の「社区」(中国独自の地域コミュニティ、行政単位)での大量出店を果たし、これが盒馬の低所得層向け市場開拓に一定の打撃を与えた。また毎日優鮮も上海市内にわずか1年で中小規模の配送倉庫を400か所開設しており、盒馬は社区進出を急ぐ必要に迫られている。このため、同社は全国進出のスピードアップもさることながら、各タイプの店舗を最大限に活用し、上海でより多くの地域や顧客層をカバーすることに引き続き取り組んでいる。

叮咚買菜:マーケティングが奏功、課題は客単価

社区の中高年層の取り込みに成功したことが、叮咚買菜の躍進につながったというのが業界の一致した見方だ。とはいえ、同社の密かな躍進はつい先日まで盒馬にさえ認知されておらず、資金調達も困難を極めていた。

同社は社区での街頭プロモーションを主なマーケティング戦略としてきた。これも同社の創業者である梁昌霖氏の長年の経験に基づくものだ。叮咚買菜の前身「叮咚小区」を手掛けた際は、社区に長期間滞在し住民の消費心理に関する研究を深めた。こうした経験が役立ち、社区の住民が叮咚買菜の顧客となっていった。

また、ウォルマート中国の陳昌耀総裁の支援も成功の大きなファクターとなっている。陳氏はウォルマートの中国でのモデルチェンジを主導し、自社による生鮮食品配送を推進した人物であり、叮咚買菜が資金調達に苦しんだ時期に手を差し伸べ、たびたび出資している。

そんな彼らにとっても、毎日優鮮の存在は脅威だ。両社の上海市場での顧客数と倉庫数は拮抗しているが、毎日優鮮は北京で黒字化を達成しており、基本的な財務モデルが構築されている。一方で叮咚買菜は客単価、粗利、SKU(最小管理単位)でいずれも毎日優鮮より劣っている。まずは客単価を引き上げて採算がとれるようにし、その上で上海以外の地域への進出を検討することが同社の最重要ミッションとなっている。

毎日優鮮:急成長を果たすも、弱点は集客

毎日優鮮はわずか1年あまりで上海での事業拡大を成功させた。2018年以降は組織の現地化を推進し、品揃えの面では上海市民の嗜好を汲んだ上で水産物の充実化を図った。現在は水産物が倉庫の10%前後を占めている。

同社は次の四半期に出店エリアを上海全域に拡大する予定で、今年中に上海で最大の市場シェア獲得を狙う。また坪効率を12万元(約190万円)にまで引き上げ、年末までにキャッシュフローをプラスにしたい考えだ。

毎日優鮮はSNSによる集客を市場シェア獲得の重要な手段と考えており、先日テンセントと新たな協力協定を結んでいる。さらに街頭プロモーションなどのマーケティングも実施しており、オフラインでも一定の集客に成功している。

商品の配送効率は同社の重要課題だ。ライバルの叮咚買菜は社区から1㎞圏内に倉庫を構え、すでに29分以内の配達を実現している。だが社区から3㎞ほど離れている毎日優鮮は、現在ごく一部の店舗で30分以内の配達を実現しているにすぎない。今後はサービスネットワークを拡大し、社区との物理的な距離を縮めていく必要がある。

逃げ場が無く、最も成熟した上海市場での激戦を生き抜いた先にしか、中国全土でのシェア獲得という扉は開かれないだろう。
(翻訳・神部明果)

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