アリババ傘下「菜鳥」、独自の宅配サービス開始へ。国際物流でも「5日以内に配達」

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アリババ傘下の物流企業「菜鳥網絡(Cainiao Network)」が、設立10年にして自社運営の宅配業務を広く外部にも提供することを決めた。

6月28日に開催された「2023グローバル・スマート・ロジスティクス・サミット」で、菜鳥の万霖CEOが宅配事業「菜鳥速逓」を立ち上げることを発表、すでに営業許可証も取得しているという。菜鳥はスマート物流プラットフォームという立ち位置で、提携する物流企業を通じて効率的な配送サービスを提供してきた。

菜鳥速逓は、これまでアリババ傘下のネットスーパー「天猫超市(Tmall Mart)」向けに展開していた宅配業務を国内全域に拡大したもので、半日配達、当日・翌日配達、夜間集荷など質の高いサービスを提供する。ライバルは同様にサービス品質の高さをうたう「順豊速運(SF Express)」や「京東物流(JDロジスティクス)」だ。

サミットでは、青島ビール、乳製品メーカーの認養一頭牛(ADOPT A COW)、家電メーカーTineco(添可)、資生堂傘下ブランドAUPRES(欧珀莱)、生鮮スーパー盒馬(Hema Fresh)、銀泰百貨(Intime Retail)などが菜鳥速逓と契約を締結し、菜鳥の宅配事業が全面的に始動したことが示された。

菜鳥ブランドの宅配事業はすでに6年前から試みが始まっていたが、これまでは天猫超市や盒馬、銀泰百貨などアリババグループ内のサービスに限定したものだった。

この自社運営の宅配事業を後押しするため、菜鳥は早くから端末物流のネットワーク構築に着手してきた。2019年には複数の地元物流企業と手を結び、菜鳥速逓の前身となる物流サービス「丹鳥(Danniao)」を立ち上げた。最終的には宅配物を預かる地域のサービス拠点「菜鳥ステーション(菜鳥驛站)」でも、天猫(Tmall)や淘宝(タオバオ)と連携して宅配サービスを開始した。

ただ自社で手がける宅配事業には高いサービス品質やコストコントロール能力が求められるため、これまで外部向けのサービスは提供してこなかった。しかし菜鳥も増大する市場のニーズに逆らえなくなった。淘宝に出店している事業者は、菜鳥の物流サービスをグループ外にも拡大することを望んできた。サービス品質の向上やコスト削減、返品率の低減につながるからだ。実際に、乳製品中国大手の伊利(Yili)が昨年から天猫サイトの一部の旗艦店で菜鳥速逓を試験的に利用し始めたところ、物流に対するクレームは30%減少、セール時の物流コストも30%減少、返品率は半分になり、固定客のリピート率は10%上昇した。

また菜鳥ステーションを中心に据えた利用モデルも今のユーザーにはなじまなくなっており、玄関まで配達してくれないことに対する不満が膨らんでいる。菜鳥がこれまで構築してきた全国的な物流網を宅配業務までカバーするものへと進化させ、自社運営の宅配サービスとして市場に投入する時がまさに満ちたと言える。

スピンオフして資本市場への進出を目指す菜鳥は、何としても新機軸を打ち出す必要がある。その点でサービス品質の向上はよい足がかりになる。少し前の決算説明会でアリババグループの張勇(ダニエル・チャン)CEOは、12~18カ月のうちに菜鳥を上場させるつもりだと明言している。菜鳥がすでに外部の出資者を獲得していることは、決算報告書にも示されている。

グローバル事業を積極的に開拓することも、資本を呼び込む好材料となる。宅配事業立ち上げの発表と同時に、5営業日以内に配達する国際物流サービス「全球五日達」を年内に開始することも明らかにした。また、スペインでは自社ブランドの宅配事業をすでに開始しており、国内30都市以上をカバーしている。そのうち20都市余りで翌々日配達サービスを提供、マドリードやバルセロナなどの中核都市では翌日配達を行っているという。

サミットにはアリババグループ副会長で菜鳥会長の蔡崇信氏が初めて登壇し、世界的な物流網の構築に取り組む姿勢を示した。「目下、AIは急速な発展を見せており、生成型AIは今年最も話題をさらったテクノロジーとなった。大量の荷物を扱い学習してきた中国の物流技術が、よりいっそう顧客のコスト削減と効率化に貢献すると確信している」

菜鳥はまた、今後10年間で世界をリードするスマート物流網を構築し、国内・越境・海外という三大物流ネットワークを作り上げるとしている。

(翻訳・畠中裕子)

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