バイトダンスがAIモデルのプラットフォーム。ユーザーのニーズに合わせ複数社のサービス提供

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IT各社がこぞって独自の大規模言語モデル構築を進めるなか、TikTok運営元のバイトダンス(字節跳動)はAIモデルを有する強豪と手を組むという戦略に出た。

バイトダンス傘下のクラウドサービスプラットフォーム「火山引擎(Volcengine)」は6月28日、AIモデルのサービスプラットフォーム「火山方舟(Volcano Ark)」を発表した。法人向けにファインチューニングや評価、推論などを含むAIモデルサービスを提供するという。

発表のタイミングとしては決して早いわけではない。IT御三家の百度(バイドゥ)、テンセント、アリババのほか、ファーウェイやセンスタイム(商湯科技)など、中国のテック企業はすでにMaaS(Model as a Service)プラットフォームを続々と打ち出して先行している。これらMaaSプラットフォームのサービスはどれも似通っており、自社開発の汎用型AIモデルもしくは複数の業界特化型モデルをベースとして、関連するAIモデルサービスを提供するというものだ。

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対して、バイトダンスは異なる路線を選択した。自社のAIモデルがないなら、その分野に秀でた企業と手を組めばいい。こうして立ち上げられた火山方舟は、智譜AI(Zhipu AI)、MiniMax、百川智能(Baichuan Intelligent)、出門問問(Mobvoi)、復旦大学の大規模言語モデルMOSS、IDEA研究院、瀾舟科技(Langboat)という7つのテック企業や研究機関のAIモデルを集約しており、さながらAIモデルトップベンダーの「ショーケース」となっている。

費用対効果が高く低コスト、これが火山方舟の大きな特徴だ。

AI開発レースがAIモデルに大規模なトレーニングを施す段階から、実際の活用シーンへと落とし込む段階へと次第に進み、ますます多くの企業がAIモデルサービスの「費用対効果」を重視するようになってきた。火山引擎の譚待総裁はインタビューに答えたなかで「企業は将来、複数のシナリオに対して複数のAIモデルを活用するようになる。各モデルの費用対効果はシナリオによって異なってくるからだ」と指摘した。

さらに火山引擎スマートアルゴリズム責任者の呉迪氏によると、AIモデルのトレーニングには大きなコストがかかるが、長期的に見るとAIモデルを実際に動かす推論にかかるコストのほうが上回るという。

譚総裁は例を挙げて説明する。大規模モデルが高給の博士号所持者だとすると、活用シーンの多くは小学校の算数の問題のようなもので、博士号所持者に高い給料を払って算数の問題を解いてもらうのはどう考えても割に合わない。このような実情ゆえに、大規模モデルに匹敵する性能を実現しつつコストを削減するため、多くの企業がファインチューニングを施した小・中規模のAIモデルの使用を余儀なくされている。

バイトダンスが複数企業と手を組んだ狙いはここにある。ユーザーが自身のビジネスニーズに合った費用対効果の高いモデルを自由に組み合わせて利用できるようにしたのだ。またAIモデルのファインチューニングと評価サービスも提供している。顧客は同時に複数のAIモデルに接続でき、自動化および手動評価を通じてファインチューニング後のAIモデルのパフォーマンスを評価できる。

データセキュリティーも火山方舟の売りの一つだ。現時点で最も安全性の高いAIモデルの導入方法は、企業のプライベート環境内にAIモデルを構築することだが、高い導入コストが企業にとっては負担となる。これに対し火山方舟は、コンピューティングやストレージ、ネットワークを分離し、トラフィックを監査するなどの手段でAIモデルの機密性や保全性、可用性を確保した、安全なコンピューティングソリューションを打ち出した。要するに、異なる企業のデータにそれぞれ専用のセーフティーボックスを設けた形だ。

今は弾薬売りに徹しているバイトダンスだが、最終的には自身もAIモデル開発の戦場に乗り込むことだろう。譚総裁は、火山引擎そのものはAIモデルのトレーニングを行わないと強調しつつ、「もしバイトダンス内の他の部署がAIモデルを完成させたなら、方舟で提供される数多くのAIモデルの一つとして、方舟プラットフォームを通じ外部に提供されることになるだろう」と語った。

(翻訳・畠中裕子)

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