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7月下旬、中古車取引プラットフォームの「優信二手車(Uxin)」と「瓜子二手車直売網(Guazi.com)」が、中国最大の自動車情報サイト「汽車之家(Autohome)」との提携を相次いで発表した。両社は、これまで広告枠の争奪戦を繰り広げていたが、ここでも鉢合わせした格好となった。
複数の競合企業が1つのプラットフォームでアクセスを奪い合うことは、中古車EC業界では珍しくない。数年前には「人人車(Renrenche)」、瓜子、優信の3社が、ありとあらゆる手段を尽くして広告戦を加熱させていた。
ところが2018年になると、中古車EC業界の情勢が変わり広告戦は下火になった。優信は米国に上場、資金繰りが厳しくなり稼ぎ頭のファイナンス事業から撤退。人人車はサイト閉鎖が噂されるなか、ライドシェア企業との提携に動いた。瓜子は親会社「車好多集団(Chehaoduo Group)」を通じ、ソフトバンク・ビジョン・ファンドから15億ドル(約1600億円)を調達した。
しかし、広告戦は終わったわけではなかった。闇雲に広告費をつぎ込む手法から、照準を定めて資金を投下する新たな時代へと入ったのだ。過去の広告戦で固定客を集めることに成功した中古車ECは、次にコンバージョン率を追求した。そこで各社が次の戦場として目をつけたのが、自動車専門媒体だ。
オンラインの特性に立ち返る
中古車販売事業には、やはり実店舗がなくてはならない。だが、全国に数百店舗を構える瓜子や人人車のような大手でも、広大な中国の隅々に散らばる顧客をすべて取り込むのは難しい。集客にはコストがかかり、経営効率も悪い。
そこで、各取引プラットフォームは「ECの特性」に立ち返った。ECは実店舗も実車の展示も必要ない。サイトで動画やVRを使ったプロモーションもでき、物流サービスは外部へ委託すればよい。この構想は今後、海外とのクロスボーダー取引にも応用できるかもしれない。
優信は2019年第1四半期、顧客の居住地に関係なく全国どこからでも希望の車両が購入できる「全国購」事業の売上高が、前年同期比54倍増の2億8000億元(約42億円)に達し、総売上高に占める割合は1%から28%に急拡大した。資金繰りに余裕はないが、稼ぎ頭であるファイナンス事業を手放してでも、全国網のC2C事業を存続させるのも自然な流れと言えるだろう。
一方の瓜子は資金力に任せ、全国で実店舗の拡充を進めている。親会社の車好多も、実店舗でメンテナンス、レンタカーなどを多岐にわたり提供するロングテール戦略を展開する。瓜子としてもオンラインを通じて地域をまたいだ取引を可能にする全国購事業に着手しないわけにはいかなかったようだ。
しかし、なぜ全国購事業が必要なのか。
市場調査会社「艾瑞咨詢(iResearch Consulting)」のレポートによると、消費者は居住地以外の都市で中古車を購入するのに抵抗を感じないという。また、大都市で使用されていた中古車は走行距離が短いため、市内外を問わず引きあいがある。さらに、国の政策も全国購事業に有利に働いているという。自動車排ガス規制「国6」基準は、全国一律で適用されるわけでない。国6の規制が及ばない一部の中小都市に「国5」基準の中古車が流れるというわけだ。
汽車之家が選ばれる理由
中国汽車流通協会(CADA)の2017年のデータでは、主要中古車ECの広告によるコンバージョン率はわずか3.4%だった。
広告による集客が下火になる中、自動車専門媒体の汽車之家が選ばれるのはなぜか。
自動車関連の広告は従来、自動車専門媒体、ニュース媒体、動画サイト、旅行やエンタメ媒体と幅広いメディアに掲載されてきた。これらの媒体は、大量かつ多様な層のユーザーに届くうえ、自動車の利用シーンに紐づけた情報発信が可能だ。。
その後、自動車市場の落ち込みで広告も先細りになったが、汽車之家を含む自動車専門媒体は例外と言える。汽車之家は昨年度、メディアサービス事業の収入が前年比14.4%増の35億1000万元(約520億円)と伸びた。同社のアプリでは中古車カテゴリのデイリーアクティブユーザー数(DAU)が300万を超えたという。
専門メディア最大の強みは、車に関心をもつカーオーナーと購入意欲をもつユーザーが集約していることだ。なかでも老舗の汽車之家は、確かなユーザーを持っておりコンバージョン率も高いと業界関係者は言う。
中古車業界の各社が売上高アップを目指し、自動車専門メディアに照準を定めた。ターゲット層にマッチしたユーザーをもつ専門メディアをめぐって新たな争奪戦が始まるかもしれない。
(翻訳:貴美華)
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