テンセント 法人向けサービスを拡大、モバイル決済の先を行く

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今後モバイル決済の成長可能性

7月31日、中国ネット大手のテンセントのメディアカンファレンスで、同社のモバイル決済サービス「WeChatPay(微信支付)」事業グループ副総裁の耿志軍氏は、今後、WeChatPayの事業展開について、KPI(重要業績評価指標)重視の戦略方向を変えると発表した。

今では36分野、100以上の業種に導入されているWeChatPayの一日あたりの平均取引数は10億回を超え、加盟店は5000万にものぼり、中国全土に浸透している。今後もWeChatPayが成長し続けるには、応用分野と利用シーンをさらに広げることが重要となっている。

企業向けサービスの拡大

昨今はビジネス環境の変化によって、インターネットビジネスの中心が、消費者(個人)から企業(法人)へと移りつつある。そのため、WeChatPayは、企業(法人)向けの信用スコアリングサービス「WeChat Pay Points(微信支付分)」を2019年の重要戦略と位置付けている。

WeChat Pay Pointsは、ユーザーの基本情報、消費データ、違反行為の記録等のビッグデータに基づいてスコアが算出される仕組みで、シェア・レンタルや宿泊サービスを利用する際のデポジット免除、無人型店舗の利用、オンラインタクシーや娯楽施設の利用料金の後払い等、様々なシーンで活用されている。サービス開始わずか3カ月で、免除されたデポジットの総額は100億元(約1600億円)を超えたという。

それ以外にも、8月下旬には、ミニプログラム(WeChat上で動くダウンロード不要のアプリ)に対応し、WeChat公式アカウント、マーケティングやデータ分析サービス等にアクセスできる新たな顔認証デバイス「青蛙(カエル) Pro」を発表する予定だ。ちなみに、WeChatPayと常に比較されるアリババのアリペイ(支付宝)の顔認証デバイスは「蜻蜓(トンボ)」と言い、名称からも2社のライバル心が見て取れる。

あらゆる利用シーンを網羅する

信用スコアリングサービスや顔認証デバイスの導入によって、利用シーンはますます広がるだろう。すでに医療、教育等の分野にもWeChatPayは浸透しつつある。また、スマート交通分野も成長が見込める巨大市場の一つだ。ETCサービスに加えて、高速道路のサービスエリアでWeChatPayによるスマート洗車、スマート給油などのサービスが導入される予定だ。現在、WeChatPayを利用する自動車オーナーは月間1億3000万人を超えるという。

今年5月、WeChatPayは深圳市交通運輸局、深圳市税務局と共同で、中国初のタクシー配車ミニプログラムをリリースした。利用者はWeChatPayで支払いを済ませ、ミニプログラムを通じて領収書の発行や保存、運転手の評価、遺失物の問合せ等が行える。これまでに深圳の全2万2000台のタクシー、4万1000人のタクシー運転手がこのミニプログラムを利用している。サービスの利用延べ人数は90万人、発行された電子レシートは30万枚を超えるという。

WeChatPayは、消費者、企業、政府と共に協力し、既存および未来の利用シーンを完全に網羅することを目指している。

WeChatの理念に基づく

WeChatPayのあらゆるサービスは、企業の経営効率、顧客体験およびユーザーの利便性向上を第一の目標としている。その背景にあるのは、テンセントの商品理念と哲学である。耿志軍氏によると、新しい商品を発表する際、昔はユーザー数や取引額をどれだけ増やせるかを考えていたが、今では「面白い商品かどうか、キラリと光るものがあるか、どんな口コミが広がるか」を考えるようになったという。

WeChatPay事業グループ総裁で「WeChatの生みの親」と言われる張小龍氏は、首尾一貫した理念を持つことが重要だと語っていた。理念が定まっていないと、商品の方向性もバラバラになってしまう。WeChatは他の企業と協業する際も、こうした理念を堅持しているという。
(翻訳・桃紅柳緑)

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