関西のディープテックバレーが生み出す、日本で最注目スタートアップとは?

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関西のディープテックバレーが生み出す、日本で最注目スタートアップとは?

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日本では、2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」が発表された。2027年までにスタートアップへの投資額を10兆円、スタートアップを10万社、ユニコーンを100社創出というスケールの大きな目標を掲げ、国をあげた動きへと進化している。なかでも世界で戦えるディープテック・スタートアップの創出は目玉の一つと言える重要分野であり、今後5年間で大きな飛躍が期待できそうだ。

とりわけ日本を代表する多くの企業・大学・研究機関が存在する『関西』には、優れた技術力・研究力を有するスタートアップが集積している。関西地域の起業家に対しては、関西の各行政や大学がそれぞれ手厚い支援策を整備しており、日本人起業家だけでなく海外の起業家でもその恩恵を受けることが可能だ。海外の投資機関や外資企業にとっても成長ポテンシャルの大きい関西地域のディープテック・スタートアップへの投資や協業はチャンスといえる。

7月13日に関西広域連合・フォースタートアップス社の共催で「KANSAI Startup Night Vol.4」が開催された。まさにアジアをはじめとした海外投資家・企業との積極的な連携を目指す、関西発の日本を代表する研究開発型スタートアップ4社が登壇した。いずれも高齢化社会や気候変動問題などの解決に役立つハイレベルな技術力を有し、日本で様々な実績を重ねるだけでなく、海外企業との積極的な提携も始めている実力派だ。

glafit株式会社

次世代モビリティの「電動サイクル」、高齢者の移動手段として活躍に期待

glafit」は、『日本を代表する次世代乗り物メーカーになる!』を目指し、マイクロモビリティの設計開発から量産、販売までを⼀貫して⼿掛ける和歌山発のスタートアップ。ヤマハ発動機やパナソニックと資本業務提携もしており、バックグラウンドも超一流だ。

そして現在、glafitが掲げるビジョンが実現しつつある。日本では2023年7月から改正道路交通法が施行され、免許不要で16歳以上であれば運転できる「特定小型原動機付自転車(特定原付)」という新区分が設定、glafitは同区分に該当する新しいタイプの「電動サイクル」を発表した。

この新区分ではキックボード型のモビリティも話題を集めるが、glafitの電動サイクルはキックボードと違い着座が可能で乗り心地もよく安定する。これが日本の高齢化社会で活躍するのではないかと期待されている。

日本では自動車の運転に不安を感じる高齢者の自主的な免許返納者の数が毎年60万人に上る。しかし、返納後も移動することは変わらないため、日常の買い物や老後の楽しみの旅行時に、非常に不便を感じているという調査結果がある。自転車という選択もあるが、高齢者にとって自転車の運転はバランスを崩しやすく危険もある。glafitの電動サイクルは、ペダルレスでも走行可能な電動モビリティでもあり、高齢者にとって有効な選択肢となりそうだ。

世界のマイクロモビリティ市場は2023年の7兆円市場から2027年には15兆円になるとも言われている。glafitは日本国内ではシェアサイクル事業者と協業し数千台規模で整備を始めており、他にも協業先を増やしていく。中国でも多くのモビリティスタートアップが誕生しており、その市場成長性は世界の投資機関も注目している。中国企業や投資家にとっては、日本という新たな成長市場を取り込むための出資や業務提携の余地も大きそうだ。

glafit株式会社 代表取締役CEO・鳴海禎造氏

NUProtein株式会社

植物由来で「安心・安全」な人工タンパク質を製造、培養肉メーカーの従来コストを劇的に削減

医療産業都市である神戸市で創業、現在は兵庫と徳島に研究ラボを置く「NUProtein」は、人工タンパク質を「安く・安全に・早く」大量生産する技術を持つバイオベンチャー。原料入手の容易さ、植物由来の安全性、リードタイムの短期化に強みを持ち、培養肉、創薬、バイオマス・エネルギーなど幅広い産業の発展に寄与したいと考えている。特に、遺伝子組み換えのイネで作ったタンパク質を培養肉メーカー向けに提供することで、温室効果ガスの削減や、世界の人口増加による食糧不足といった社会課題の解決に挑戦している。

代表の南氏によれば、培養肉の課題は培養に必要なタンパク質が高いことにある。1トンの培養肉を作るのに607グラムの機能性タンパク質が必要で、そのコストは9.7億円という試算もある。しかし同社が持つ知財を利用して背の低いイネを育成することで面積当たりの生産性を向上させると、9億円のコストは140万円にまで低減できる可能性があるという。米国の培養肉メーカーなどからは高い関心を寄せられ提携も進むが、まだ培養肉はR&D段階のため量産するには至っていない。しかし今後マーケットができれば業績は一気に成長段階に入ると考えている。

同社は海外での評価も高く、2020年には深圳先端技術ピッチコンテスト日本予選大会で特別賞受賞。2021年には世界最大のディープテック推進団体のHello Tomorrowの世界大会で、「工業バイオ・新素材」部門で日本企業で初となる優勝を果たした。今年も、経済産業省及び日本貿易振興機構(JETRO)が、シンガポールの政府系機関と共催した、第1回「Singapore-JapanFastTrackPitchEvent」において、日本を代表するスタートアップとしてスイスのビューラー社向けにピッチを行った。またシンガポールの培養ウナギ開発のパイオニア企業「UmamiMeats」とも事業提携をしている。

中国では、培養肉メーカーが次々に出現していることから積極的に連携していきたいとして注目しているという。

NUProtein株式会社 代表取締役・南賢尚氏

C4U株式会社

日本発の先端ゲノム編集技術で新たな創薬や遺伝子治療に貢献

C4U」は、新規ゲノム編集技術の研究開発に取り組む大阪大学発のバイオベンチャー企業。国産オリジナルのゲノム編集技術であるCRISPR-Cas3(クリスパー・キャス3)技術を用いて、遺伝子性疾患をはじめとする様々な疾患に対する新規の治療法開発を自社及び他社との連携により推進すると同時に、幅広い産業への応用に向けたプラットフォーム展開にも取り組んでいる。今年5月には、シリーズBで総額15億円の資金調達を実施し、創薬・再生医療分野に特化したVCであるDCIパートナーズをリードに計7社が出資を行った。

3年前にノーベル賞を受賞したゲノム編集技術「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャス9)」が現在グローバルスタンダードの技術となっており、その研究開発会社は海外で上場を果たすなど非常に注目されている。C4Uの「CRISPR-Cas3」は「CRISPR-Cas9」よりもDNAの大規模欠失を誘導できる点や、オフターゲット欠失発現の懸念が少ないことから安全性の観点でも優れており、特許上のFTO(Freedom to operate)も確保されているといった強みがある。

ノックアウト・ノックインによるゲノム編集プラットフォームによって医療(医薬品・診断薬・遺伝子治療)、バイオテクノロジー、農業、環境(バイオマス)分野での活用に期待でき、特に医療分野での応用を目指して製薬会社・バイオベンチャーとの研究・開発を進めている。

ノーベル賞クラスの技術によって将来大きな飛躍が見込まれ、中国をはじめとした大手製薬会社との業務提携も積極的に進めたい意向だ。

C4U株式会社 事業開発部長・秋山克良氏

株式会社トータルブレインケア

100歳まで生きる社会で、ゲーム感覚で脳の認知機能をトレーニングできるプラットフォーム

トータルブレインケア」は2015年に設立され、認知機能の測定とトレーニングができるクラウドシステム「CogEvo(コグエボ)」を開発・提供する。医学的エビデンスを持つ、生活軸で認知機能を測定できるシステムが特徴で、簡単な楽しいゲームにより個人の認知機能の特性・経時変化を確認することができる。結果レポートの自動作成、主治医や家族とのデータ共有もでき、医療機関や老人ホーム、保険薬局など既に多くの場面で活用されている。

代表の河越氏よると「ビジネス現役寿命」は認知力に左右されるという。人生100年時代と言われるが人間は40歳をピークに認知力は徐々に衰える。仕事に支障をきたさないよう衰えのカーブを緩やかにし業務遂行力を維持すること、そして快適な老後生活にも認知機能の維持は必要となる。これまで市場にあるのは認知症かどうかを診断するためのツールのみだったが、同社のサービスによって「認知機能を見える化」することで認知症の予防や早期発見にも繋げたいと考える。

同社の強みは、各分野の第一人者の専門家との共同研究で作成した論文に基づくエビデンスベースを重視し、長期間にわたりテストマーケティングを実施、有用なデータを収集・解析することで着実にエビデンスを構築していることだ。

例えば、国立長寿医療研究センターが行う認知症の抑制検証に関する国家プロジェクト「J-MINT」では、認知機能検査のひとつに「CogEvo」が追加されたほか、認知症以外でも脳震盪の分野で日本ラグビーフットボール協会のスポーツドクターが「CogEvo」を使うなどスポーツ分野にも広がる。健康経営を掲げるトヨタでは、社員全員が36才になると認知機能を測定する仕組みができるなど、エビデンスの社会実装が始まっている。

これらの取組みは、日本でディープテック・スタートアップが成功する上で極めて重要だ。重要なデータ収集の仕組み作り、データを用いたエビデンスの強化、幅広い大企業や研究機関との連携による社会実装で信頼を作り、経営を成長軌道に乗せていく。日本進出を考える海外企業にとっても非常に参考になる考え方だと言える。

株式会社トータルブレインケア 代表取締役社長・河越眞介氏

まとめ

世界を目指すディープテック・スタートアップが関西地域から続々と誕生しており、上場やユニコーンといった目に見える形での成功も数年後には当たり前になっているかもしれない。関西のスタートアップ・エコシステムは海外との連携を強化しており、外国人起業家や海外企業の誘致でも多数の支援実績がある。また海外投資家や海外企業による関西発スタートアップへの出資や協業もさらに加速させていきたいという。詳しくはまずこちらから最新情報をチェックしてほしい。

(36Kr Japan編集部)

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