テスラ、完全自動運転ソリューション「FSD」を中国市場投入へ 運営チーム設置の計画も

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米電気自動車(EV)大手テスラが、中国で20人前後の現地運営チームを立ち上げる計画であることが36Krの取材でわかった。同社の自動運転ソリューション「フルセルフドライビング(FSD)」を中国市場に投入するためで、業界に詳しい関係者は「テスラは研修を実施するため、すでに本社からエンジニアを派遣している」と明かす。

テスラはさらに中国でデータアノテーションを手がける100人超のチームを立ち上げる考えだという。こちらもFSDのアルゴリズムをトレーニングするのが目的だ。

さらに重要な点として、テスラはデータ保存問題についても明確な方針を打ち出した。テスラ中国は8月14日、すでに中国国内にデータセンターを設け、中国本土で販売した全車両から取得したデータを中国国内で保存していると声明を出した。

FSDはテスラがこの数年、徹底して取り組んできた完全自動運転のソリューションだ。現段階ですでに標準装備されている運転支援システム「オートパイロット」とは異なり、ドライバーの介入を必要としない完全自動運転の実現を目指している。2020年に北米地域でベータ版がリリースされており、これまでに十数回のアップデートを繰り返してきた。イーロン・マスクCEOは最近、FSDの最新版となる「FSD V12」について、ベータ版ではなく全ユーザーに提供されるものになるとSNSで明かしている。

FSDの公開はこれまで延期を重ねてきたが、今回ばかりは実現が迫っているようだ。マスクCEOはFSDが米国ではドライバーの介入をほぼ必要としなくなっていると繰り返し強調し、7月に上海で開催された世界人工知能大会では「年内にはレベル4ないしはレベル5の完全自動運転性能が実現する」と述べている。

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技術アーキテクチャーとしてはFSDはほぼ完成段階に入っており、テスラは開発と並行して世界の複数の市場への投入を進めている。今年6月の一部報道によると、すでに英国、ノルウェー、ドイツ、中国などで積極的にFSDのテストを実施しているという。

テスラが数年かけてあたためてきた自動運転ソリューションの中国市場への投入を進めていることは、さまざまな兆候から見て取れる。あるテスラユーザーからの情報によると、8月9日に実施された車両システム更新では自動運転データの収集に関する項目があり、データ提供の可否をユーザー自身が選択できるようになっていたという。

自動運転機能は新興自動車ブランドが製品開発にあたって最も力を注ぐ部分になっている。その先行者であるテスラだが、近年の中国市場では競合メーカーの製品があらゆる面でスペックを上げてきており、FSDはテスラに残された数少ない強みとなっている。そのFSDすら後続者に追い上げられる懸念もあり、FSDの中国市場投入はいっそう急を要するものになっている。

しかし、もともと米国市場で育まれてきたソリューションが中国市場での試練に耐えられるだろうか?中国の道路状況は米国とは異なっており、北京や上海などの大都市では交通状況はさらに複雑だ。テスラの有するアルゴリズムや乗車体験は中国では必ずしも強みになるとは限らない。

ある自動運転業界の関係者は、FSDを中国市場に投入するには「実車を使った長距離走行試験を実施し、中国の道路でのパフォーマンスを確認して、どのような場面で挙動に難があるかを把握したうえで中国向けのニューラルネットワークモデルに改良したり、最適な戦略を練り上げたりする必要がある」としている。

自動運転の開発と試験には大量の道路データ収集や道路の安全が関わってくる。その多くのプロセスでは監督管理機関の許可が必要となる。関係者によると、テスラが上海で走行試験を行うには登記上の所在地である浦東新区臨港地区でまず臨時の走行許可証を取得し、2週間の試運転を実施してから審査機関の審査を経てようやく長期間の試験を実施する資格を得られる。一連の手続きには最低3カ月かかるという。

チームビルディングから設備導入、試験や開発など、どれもコストや時間がかかるものだ。地元中国の自動車メーカーやソリューションベンダーにとっては今このタイミングが勢力拡大のラストチャンスかもしれない。

(翻訳・山下にか)

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