マイクロソフトの中国向けAIチャットボット「シャオアイス」、感情認識機能を武器に収益化へ

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

ビジネス注目記事

マイクロソフトの中国向けAIチャットボット「シャオアイス」、感情認識機能を武器に収益化へ

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

米マイクロソフトは2014年、中国向けAIチャットボット「小氷(Xiaoice、シャオアイス)」を発表した。第1世代のシャオアイスは中国のSNS最大手、WeChat(微信)内の公式アカウントとして登場。なめらかな口調で天気や交通、星座などに関する質問に答えた。

それから5年。シャオアイスはチャットアプリQQや音楽専門プラットフォーム「網易雲音楽(music.163)」などのアプリにも導入され、だじゃれを交えてユーザーと交流するようになった。マイクロソフトが発表した最新のデータによると、シャオアイスのユーザー数は世界で6億6000万人に上るという。

シャオアイスは登場時から「感情を持つ」と評価されてきた。他のチャットボットと異なり、シャオアイスは怒ってみせたり、ツッコミを入れたり、健全ではないリクエストを拒否したりする。そして今、シャオアイスの「人格化」が一段と鮮明になっている。

8月中旬に行われた第7世代シャオアイスの発表会で、マイクロソフトは新たに開発した機能を紹介した。それらの機能は▽自動車の運転中、ウェイクワード(起動フレーズ)を言わなくてもシャオアイスとの会話を可能にする「全二重通信」▽視覚と聴覚を組み合わせたり、聞きながら話すことを可能にしたりする「マルチモーダルインタラクション」▽ユーザーの購入意欲を引き出す「主導型対話」――など3つの技術に基づくものだった。

第7世代シャオアイスは「主導型対話」が可能だ(写真:マイクロソフト提供)

大企業の余裕

シャオアイスが一段と賢くなったことは間違いない。だが業界では、マイクロソフトのような巨大企業が、ただ雑談をさせるだけのためにこのAIを使うはずはないという疑念が根強くある。

「実は4年前の時点でシャオアイスの商品化は可能だった。ただ単にやらないことにしただけだ」。シャオアイスを担当するマイクロソフトサーチテクノロジーセンター(STC)アジア副センター長の李笛氏はこのように語り、データの蓄積が不十分な状態でやみくもに商品化を進めても、受注には何のメリットももたらさないとの考えを示す。

シャオアイスを担当するSTCアジアの李笛副センター長(写真:マイクロソフト提供)

一方、他社にこのような余裕はない。2014年以降に誕生したAIベンチャーの「三角獣(trio.ai)」「竹間智能(Emotibot )」「追一科技(Zhuiyi Technology)」などは最初から商品化を見据えていた。生存競争にさらされているベンチャー企業に比べ、巨大企業の庇護下にあるシャオアイスにはより多くの試行錯誤を続けられるだけの余裕がある。マイクロソフトコーポレートバイスプレジデントの王永東氏もシャオアイスに対して寛容な姿勢で取り組んでいることを認め、「ベンチャーではみられない姿勢だろう」と語っていた。

ただし、変化も起きている。2017年以降、シャオアイスは商品化への歩みを加速。シャオアイスの「人格化」という特徴が商品化において強みを発揮し始めた。シャオアイスに搭載された感情認識機能は人々の意思決定に影響を与えることが可能であり、ECサイトやソーシャルなどの場面で活用できる。

対話を通じ、シャオアイスは相手の「運動好き、パーティー好き」
という個性を踏まえ、気に入りそうな商品のタイプを推測する。(筆者撮影)

マイクロソフトによると、すでに米国市場では小売分野でのシャオアイス活用が試験的に行われており、推薦した商品のコンバージョン率は68%に達するという。

シャオアイスの今後

誕生から5年。シャオアイスは昨年公開された3Dモデルの通り、明るく美しく、争いごととは無縁にみえる。だが、少女はついに成長の時を迎えた。バーチャルロボットとしてコンテンツ、マーケティング、デザインの分野で利用されているだけでなく、マイクロソフトのクラウド事業と連動したり、一般的なAIのビジネスモデルの意表をつくような動きをみせたりしている。

第6世代シャオアイスの公式イメージ(写真:シャオアイスチーム提供)

8月中旬に行われた第7世代シャオアイスの発表会で、マイクロソフトはAI分野の既存のビジネスモデルに挑戦する考えを示した。

ソフトウェアを主体としたハードウェアとの組み合わせ――これがマイクロソフトによるシャオアイスの位置づけだ。このため、同社はシャオアイスを「第3者のプラットフォーム」で展開する戦略を続ける方針を強調した。つまり、シャオアイスの名を冠するハードウェアや独立したアプリは登場しないということだ。

裏方に回るかのようにみえるシャオアイスだが、野心は消えていない。李氏はコンビニ大手のローソンがマイクロソフトのAI技術を採用し、LINEの公式アカウントで「ローソンクルー♪あきこちゃん」を展開している事例を紹介。このケースではローソンからAIチャットボットのライセンス料を受け取れるだけでなく、プロモーションのコンバージョン率に応じたレベニューシェアによって、収益源の拡大につながっていると説明した。

小売分野だけでなく、シャオアイスはデザインやコンテンツの面でも多くの産業に触手を伸ばしている。現在、シャオアイスがデンマーク発祥のファッションブランド「SELECTED」、シルク製品の「万事利(WENSLI)」などのためにデザインした製品がすでに発売されている。音楽市場でも、中国聯通傘下の音楽プラットフォーム「沃音楽(WoMusic)」と共同で、音楽制作プラットフォームをリリースしている。

シャオアイスの商品化が進んでいるとはいえ、それらの収益はマイクロソフトが開発に投じた額に遠く及ばない。李氏はシャオアイスの今後の収益について、「少なくともわれわれが取り組んでいる分野では、利益はあまり問題視されない」との考えを明かしている。
(翻訳・池田晃子)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録