中国で電子たばこバブル、一部企業は海外展開に活路

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中国で電子たばこバブル、一部企業は海外展開に活路

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中国では最近、電子たばこ業界への新規参入が相次いでいる。この1年、業界でその名を知らしめたのが汪瑩氏だ。
汪氏が代表を務める「深圳霧芯科技(RLX Technology)」は電子たばこ「RELX(悦刻)」を手がけており、設立からわずか1年で評価額が24億ドル(約2500億円)に達した。これは、設立から8年経つQ&Aサイト「知乎(Zhihu)」がシリーズEで資金調達を完了した時点の評価額とほぼ同レベルだ。

長年にわたり、中国で最先端を行く起業家たちはみなインターネット関連事業を展開していた。しかし実はこの分野が中国のGDPに占める割合は極めて小さい。中国で最も儲けている企業は、多くの人が思い浮かべるであろうIT大手テンセント(騰訊)やEC大手アリババ、四大メガバンクではなく、大手たばこメーカー「中国煙草総公司(CHINA TOBACCO)」だ。2018年は税引き前利益が1兆1556億元(約17兆3340億円)に達した。これはアリババ18社分に相当する。

しかし諸外国のたばこ事業をみると、中国煙草のような国有企業か、米たばこ大手「フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)」のような超大型企業が取り扱っており、一般企業がここに割って入るのは難しい。

一方、電子たばこはまだ明確な位置付けがなされていない新たなカテゴリーだ。収益の柱は本体ではなく、カートリッジの販売になる。カートリッジは原価10元(約150円)に対し、小売販売価格が39元(約590円)。1本当たり30元(約450円)近くの利益が出る。また、電子たばこ利用者は通常、3~4日ごとに新しいカートリッジに交換する。

電子たばこ業界には新規参入が相次いでいる。広東省深圳市で毎年開催される中国最大の電子たばこ展示会「国際電子たばこ産業博覧会(IECIE)」では今年、出展ブランドの6割が悦刻のようにインターネット関連企業によるものだった。出展企業は、従来は大企業ばかりだったが、今年は100を超える電子たばこブランドが出展した。

製造元確保の難しさ

世界の電子たばこの95%を生産している深圳は、業界の聖地となっている。

電子たばこの人気上昇に伴い、OEM工場は代金全額を事前に支払うか、あるいは手付金のみで製造を開始しても、商品引き渡し前に残りの代金を支払うよう要求するようになった。

そのうち更にエスカレートし、自社技術の特許名称を商品に印刷することなども要求し、それに応えたブランドには生産を優先したり、値下げしたりするという便宜を図るようになった。工場はブランドの市場戦略を左右するほどの力を持つようになっているのだ。

だが企業はこの「工場」という難関を越えても、ようやくスタートラインに立ったにすぎない。

販売チャネル争奪戦

最も激しいのは販売チャネルの争奪戦だ。

中国ではたばこ業界の企業が広告を出すことは禁じられている。そのため販売チャネルを独占し、地道に営業をかけていくしかない。悦刻は今までに中国各地の5000カ所以上で営業活動を行ってきた。ショッピングセンターへのポップアップストア出店やバーでのプロモーション、コスメブロガーやインフルエンサーへの宣伝依頼など。バーやクラブ、カラオケボックスには喫煙者が多いため、大きな売り上げが見込まれる。

「英諾天使基金(Innoangel Fund)」の王晟氏によると、これまで電子たばこ業界で資金調達に成功したのは大部分がインターネット業界出身の起業家だった。だが、最近多額の資金を調達しているのは小売りや消費財、3C製品(コンピューター、通信機器、家電)などの市場で豊富な経験を持つ人材だという。

販売コストの上昇

8月末、RELXが展開するチェーン店「RELX Store」が600店を超えた。

コンビニエンスストアは電子たばこの重要な販売チャネルだ。スマートコンビニチェーン「便利蜂」の北京エリアマネジャーによると、自社の電子たばこを店頭においてもらおうとこれまでに10数ブランドの幹部や時には創業者までもが直接オフィスを訪ねてきたという。コンビニチェーンへの「入場料」は100万元(約1500万円)にまで高騰している。

それに伴いプロモーションの費用も上がっている。

悦刻が今年ある音楽イベントに参加しようとした際、主催者側から出展料30万元(約450万円)を提示された。しかし、最終的にはライバル企業によって100万元(約1500万円)にまで吊り上げられたという。

こうした支出を合わせると、電子たばこというビジネスのコストは決して低くはない。そして現時点で、業界内で本当の「勝ち組」は出現していない。これはなぜだろうか。

背後に潜むリスク

ニコチンの価格が急騰している。

昨年後半は1キロあたり800元(約1万2000円)だったのが、今年6月には2500元(約3万7500円)前後にまで値上がりした。それでも十分なニコチンを手に入れることはますます困難になっている。

電子たばこの要ともいえるニコチンは中国煙草にしっかりと管理されている。同社は、これまでにニコチン工場十数社を買い上げた上、輸入も管理しており、ニコチンの価格と供給を完全にコントロールできる立場にある。

電子たばこ業界にとっては政府の方針もまたリスクの一つである。

「国家標準化管理委員会(SAC)」は6月、公式サイトで、電子たばこに関する「強制標準(GB)」が認可を得る段階に入ったと発表した。
GBの草案は全68ページで、7つの部分から構成されており、電子たばこの本体やリキッド、ラベルなど各部の定義や要件が盛り込まれている。

業界関係者が特に気にしているのは「リキッドのニコチン濃度は2%を上限とする」という点だ。中国では現在、大部分のリキッドがニコチン濃度3%以上で、中には6%以上のものもあるという。

各リキッドメーカーの研究者たちは、この要件は「非常に厳しい」と語る。これが強制標準として施行されれば、一部のトップブランド以外は満たすことができないとの見方を示している。

喫煙制限も世界的な流れとなっている。中国は2015年に北京、上海、深圳で屋内の公共の場での喫煙を禁止した。2030年には中国の喫煙率は20%まで低下するとみられており、政府が電子たばこにどのような税率を設定するかも注目されている。

現行のたばこ税率

電子たばこの民間企業による運営はこのまま許され続けるのか。中国煙草に買収されることも考えられる。国営企業である中国煙草は利益の85%を国に納めている。昨年の税引き前利益1兆1556億元(約17兆3340億円)のうち、1兆元(約15兆円)を国に納めている。

中国のたばこ税収入

生き残る道の一つは海外進出だ。悦刻、「雪加(SNOWPLUS)」、「Flow(福禄)」などのブランドはすでに海外進出を果たし、中でも悦刻は海外での売り上げが中国国内の売り上げの三分の一を超えている。
(翻訳・山口幸子)

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