テンセント、脱炭素技術の開発を後押し CCUS分野の事業化に向けて30プロジェクトを選出

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テンセント、脱炭素技術の開発を後押し CCUS分野の事業化に向けて30プロジェクトを選出

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中国IT大手のテンセントが9月18日、「CarbonXプログラム(炭尋計画)」の第1回授賞式を開催した。CarbonXプログラムはテンセントが今年3月に始動させた活動で、二酸化炭素(CO2)を回収・利用・貯留する「CCUS」関連の技術開発や能力強化、大規模実用化に焦点を当てるもので、支援総額は人民元で億単位(1億元=約20億円)になる。

地球温暖化が進むなか、CCUSはカーボンニュートラル実現に欠かせない基盤となる技術だ。しかし技術開発は困難でリスクも高いこともあり、資金などの支援が不足していた。

テンセントの上級執行副社長で最高探索責任者(CXO)でもあるDavid Wallerstein氏は挨拶のなかで「CCUSはまさに岐路に立つ新しい産業だ。かつては存在していなかったが、人類が気候変動に伴う数々の脅威に直面したことで発展した」と述べた。

テンセントがCarbonXプログラムを発表してから、プロジェクト300件以上の応募があった。今回はそこから30件が選ばれ、プロジェクトチームに対しそれぞれ50万元(約1000万円)の賞金が授与される。CarbonXプログラム組織委員会はこの30件のプロジェクトからさらに優れたものを選び、数千万元(数億円)の資金援助を行う予定だ。

今回表彰された30チームは、中国および世界のCCUS分野をリードする技術を創り出している。例えば、空気中から直接CO2を取り出す「直接空気回収(Direct Air Capture、DAC)」技術や、微生物にゲノム編集を施して産業活動から排出されるCO2を吸収・利用する技術、建設廃棄物にCO2を吸収させ建築材料として再利用する技術、貝類を養殖し海水中のCO2を吸収させる技術など、多くの最先端技術がある。

こうした最先端の技術について、審査員の間で活発な議論が交わされた。これまでのCCUS技術は排出されたガスから炭素を回収するもので、炭素を減らすかゼロにするものだが、DACは大気中から直接CO2を回収し、炭素は「実質マイナス」になるとされる。しかし大気中に含まれる炭素の量はそれほど多くはないため、大きな議論を呼んだ。

持続可能な社会的価値事業部副総裁の許浩氏は「確実性を求めず、リスクが大きくてもポテンシャルを秘めた技術を受け入れることで新たなチャンスが生まれる」と語った。CarbonXプログラムでは技術革新のために3つの部門を設けた。そのうち「CarbonX Lab」は研究室で開発中の技術に注目したものだ。ここに数千万元(数億円)の資金を投入し、技術が研究室を出て実用化されるのを支援する。

戦略発展部門のエグゼクティブディレクターでCarbonXプログラムの責任者を務める黄新我博士によると、今回選ばれた30件のプロジェクトはCCUSに関わる15~20種類の技術に及んでいるため、こうした新技術を十分に議論できるよう、審査員は4組に分かれ、さらに10の小グループに分かれてそれぞれ独立した審査が行われた。

実用可能性も審査に当たっての重要な判断基準となる。CarbonXプログラムでは選考に当たって2030年に実用化できるか否かが重要な指標とされた。CarbonX Labのほかにも「CarbonX Accelerator」部門でCCUS分野のスタートアップに注目し、起業家のコミュニティプラットフォーム「青騰(TencentX)」でのマッチングをサポートするなど、スタートアップがいち早く技術を実用化、商用化できるよう支援する。

今回選ばれたチームには、1990年代生まれの若い世代が率いるチームや、この分野で20年以上も研究を続けてきたベテランチームがいる。清華大学や香港科学技術大学、浙江大学、中国科学院といったトップクラスの大学や研究機関が含まれるほか、国家自然資源部や中国地質調査局、国家重点実験室の一つ懐柔実験室などが手がける国家プロジェクトも複数ある。

(テンセント提供)

すでに複数のプロジェクトが商用化の初期段階に進んでいる。例えばテック企業「清捕零炭」は建築廃材のCO2を固化し、新たにレンガなどに生まれ変わらせ、建設~廃棄~建設という循環経済モデルの構築を実現した。浙江省杭州市の商業施設に、CO2を取り込み固定化させたコンクリートブロックが初めて使用された。また国電電力発展(GD Power Development)と中国石油大手の中国石油化工集団(シノペック・グループ)が共同で設立した「原初科技(Yuanchu Technology)」は、大規模かつ低コストにCO2を恒久的にブロックに閉じ込める技術の実用化に向け動き出している。

 

CarbonXプロジェクトでは研究室から誕生したばかりの先端技術を市場で検証することに注力しており、審査員はCCUSの技術サイド、実用化サイド、商用化サイドを代表して中国科学院の専門家、産業界、投資機関などのパートナーが務める。

また、清華大学エネルギー環境経済研究所所長で全国炭素市場総体設計専門グループの責任者でもある張希良教授のチームがテンセントと提携し、技術的な測定・報告・検証(MRV)を通じてCCUS分野のマーケット形成と規格化に取り組んでいる。

許副総裁は「持続可能な社会を発展させるための選択肢はカーボンニュートラルに限らない。テンセントは今後も科学技術とイノベーション力によって多くのパートナーとともに持続可能なソリューションを模索し、社会的価値と経済効率を融合した発展に貢献する」と語った。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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