中東マネー、中国自動車産業への流入加速。自動運転の「Pony.ai」、サウジ投資ファンドが1億ドル出資

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中東マネー、中国自動車産業への流入加速。自動運転の「Pony.ai」、サウジ投資ファンドが1億ドル出資

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自動運転技術を手掛けるユニコーン企業の「小馬智行(Pony.ai) 」が、サウジアラビアのスマート都市建設プロジェクト「NEOM(ネオム)」傘下の投資ファンド「NEOM Investment Fund (NIF)」から1億ドル(約150億円)の出資を受けたことが36Krの取材でわかった。両社はさらに合弁企業を設立して、現在建設中のNEOMにPony.aiのロボタクシー(自動運転タクシー)を導入し、生産・開発拠点を設ける計画だ。

事情に詳しい人物によると、このシリーズD2後もPony.aiの評価額は変わらず、85億ドル(約1兆2700億円)だという。

Pony.aiは2016年に設立され、自動運転を手がける中国企業としては最高の評価額をつけている。同社はこれまでロボタクシーとロボトラックの開発に専念し、ドライバー不要の無人運転実現を目指してきた。

しかし、米テスラの運転支援機能「Autopilot」の進化を目の当たりにした多くの業界関係者は、無人運転よりもドライバーの運転を支援するアプローチのほうがよりスピーディーに業界に普及していくと確信した。中国では「小鵬汽車(Xpeng Motors)」やファーウェイのスマートEVブランド「問界(AITO)」などが真っ先に先進運転支援機能をリリースしたため、今後は多くの自動車メーカーもこれに続くことになりそうだ。Pony.aiも戦略を立て直し、乗用車向け運転支援機能開発事業を立ち上げた。

運転支援機能をめぐる過酷な量産合戦に対して、かつての輝きを失ったロボタクシーは数年前のような勢いはないものの、依然として実用化や商用化に向けて前進し続けている。

Pony.aiは限られたエリア内の運行であるとはいえ、中国の4つの一線都市で無人運転の試験運転・試営業の許可を取得している。さらに、ロボタクシーの商用化を目指してトヨタ中国法人ならびに広汽トヨタ(広州汽車とトヨタの合弁会社)と合弁会社を設立する計画だ。

Pony.aiなどのスタートアップは評価額が上がりすぎたため、国内のプライマリーマーケットから資金を調達することはもはや難しい。一方で米中関係が悪化したため、多くのスタートアップが米国での上場を棚上げしている状態だ。Pony.aiも生き残るために、より多くの資金を集めなければならない。

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そんななか中東諸国の投資機関が近年、中国のAIやスマートカーに強い関心を示している。しかも、いつでも気前よく出資してくれる得難い支援者たちだ。

Pony.aiはこうした中東系の投資機関と密な関係を築いてきた。10月18日にはUAEの政府系ファンドであるアブダビ投資庁と提携協議を締結。アブダビのスマート・自動運転車両産業クラスター(SAVI)のメンバーとなり、ヤス島での公道テスト実施許可を取得した。

Pony.aiと同様、自動運転を手がける一部の企業も中東系投資機関から高く評価されている。「文遠知行(WeRide)」は、UAE国内でレベル4の自動運転車の走行ライセンスを取得した。「宏景智駕(Hongjing Drive)」は、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコ傘下のProsperity7 Venturesから数千万元(数億〜十数億円)の出資を受けている。

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自動運転だけでなく、中国の新エネルギー車メーカーも中東諸国で人気の投資先になっている。

「蔚来汽車(NIO)」の資金繰りが著しく改善したのもこれが理由だ。今年6月、NIOはアブダビ政府系ファンドCYVN Holdingsから11億ドル(約1600億円)の出資を受けると発表。CYVN HoldingsはNIOが新たに発行した株式のほか、テンセントから発行済み株式を買い取り、7%の株式を保有することになった。

これとほぼ同時期、超高級EVブランド「HiPhi(高合汽車)」の親会社「華人運通(Human Horizons)」がサウジアラビア投資省と56億ドル(約8400億円)相当の投資契約を締結。「長城華冠(CH-AUTO)」は、ヨルダン最大の民間企業Manaseer Groupと戦略的提携関係を結んだ。

スマートEVブランド「BeyonCa」は10月23日、サウジアラビアのAl Faisaliah Group (AFG)と出資および戦略的提携に関する覚書を交わした。

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中東の投資機関が中国の新エネルギー車を支援するのは、脱石油依存に向かう流れと関係がある。例えばサウジアラビアの「ビジョン2030」では、首都リヤドにおけるEV普及率を2030年までに30%以上に引き上げる目標を掲げている。

もちろん中東諸国も無条件に出資しているわけではない。36Krが複数の関係者に取材したところ、大部分の投資案件には業績に関する条件が付されており、出資金は複数回に分割され、一定の業績を達成するごとに支払われるという。

(翻訳・山下にか)

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