設備の異常を”音”で検知、位置も画像化。中国のAI音響検査装置、配電網などで大活躍

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人工知能(AI)を搭載した音響検査機器および設備の製造を手がける「聯豊迅声(Lianfeng Xunsheng)」がプレシリーズAで1000万元(約2億円)以上を調達した。出資を主導したのは西安市人材発展基金。

2018年に設立された同社は「ロボット聴覚」を中心に、ポータブル音響検査機器などの製品を展開している。製品は電力、工業、炭鉱、警備など20種類以上の活用シーンで顧客100社以上に提供されている。

同社の技術チームは主に西北工業大学の出身者で構成され、環境音認識の技術を競う国際大会「DCASE」において数年連続でトップ3に入っている。チーフサイエンティストの陳建峰氏は西北工業大学の教授で、音響信号処理分野に20年近く従事。社長の項彬氏は西北工業大学を修了してすぐに同社を立ち上げた。

音響技術とAIアルゴリズムを組み合わせたAI音響検査は音響シーンの分類、異常音のモニタリング、音響イベントの検知と位置特定などの効率を向上させられる。AI音響検査は従来の電気的、化学的、光学的な特性に基づく検査方法に比べ、非接触で測定が可能な上、故障検知や位置特定などの点で優れており、音響信号を通じて早期の故障検知と予知保全を可能にした。

同社のAI音響検査機器および設備は主に産業のニッチ分野で活用されている。創業者の項氏は、ニッチな分野に注力してこそ、競争力が高く標準化された製品をつくることができると考えた。同社で最も商用化が進んでいる音響画像生成機は、マイクロホンアレイ技術をベースに、特定の空間内でマイクロホンに到達した音波信号の位相差を測定し、フェーズドアレイの原理に基づいて音源の位置を特定、音源の振幅を測定することで、空間内の音源分布を画像化する。これを使えば、電力システムの配電網や圧縮気体の漏出などの場面で検出した異常音を画像化することができるという。

例えば電力システムの配電網は高架で遠くまで広がっているため、スタッフが巡回検査をするには作業量が多く、検査結果も正確さを欠くといった問題が生じる。同社のポータブル音響画像生成機は、リアルタイムに電力設備の局所的な放電信号を捉え、音場マップによって故障箇所を表示する。それを同社の「クラウドAIスマート分析」と組み合わせればすぐに診断結果がわかり、配電盤、変圧器、断路器などの設備・部品の異常と故障を含む配電システムの各種問題の検査に活用して、早期に欠陥を見つけられる。

また、圧縮気体の漏出に対し、従来のレーザーや化学的な検査手法は濃度をもとに検知するため、多くは1~2種類の気体にしか対応できず、手作業の検査も効率が低かった。同社のポータブル音響画像生成機を使えば、気体が穴から漏れる際に生じる渦流の超音波信号を捉え、濃度が大きく変化する前にエアー漏れの箇所を正確に特定できる。広範囲な検査画像を自動生成できるため、気体漏出の早期検知やエネルギーロスの削減につながると共に、人が危険な気体に近づき触れるリスクを回避できる。

聯豊迅声はロボット巡回検査にも力を入れ、ソリューションの効率を高めた。今年4月には同社のマイクロ音響カメラが宇樹科技(Unitree Robotics)の犬型ロボットに搭載された。このカメラは「ロボットの耳」となって環境音信号をリアルタイムで収集・処理し、高周波信号の認識と位置の特定を可能にするもので、聴覚面で移動ロボットをサポートする。

聯豊迅声マイクロ音響カメラが搭載された宇樹科技の犬型ロボット

同社が独自に構築した「迅声クラウド環境音データベース」は、環境音を対象とした中国初のデータベースで、1000万件近くの環境音データを収容している。また、自社開発の「迅声クラウドAIエンジン」を活用して、特定のシーンに対する音響アルゴリズムモデルを改良し、環境音の効率的な検知と分析を可能にした。

項氏によると、同社の音響画像生成機は中国の競合製品のなかで画像生成の感度や安定性が最も優れており、このコストパフォーマンスを生かしてロシアやスペインなどにも進出したという。来年は国内外の販売ネットワークをさらに拡大するとのことだ。

(翻訳・大谷晶洋)

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