テンセント経済圏のEC戦争:WeChatのソーシャル機能を生かした拼多多の奇襲

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8月、中国大手ECプラットフォーム「拼多多(Pinduoduo)」が第2四半期決算を発表した。市場予測を上回る好調な業績を受けて株価は大幅に上昇、時価総額は407億ドル(約4兆3550億円)を突破した。これにより、WeChat(微信)を展開するテンセント経済圏の一員である拼多多は、中国検索大手の百度(バイドゥ)を抜いて中国第5位のインターネット企業となった。インターネット業界の最大の魅力はこの何が起こるか分からない不確定性にある。

WeChatユーザーはタオバオで買い物をする?

2015年頃までは、テンセントに対するイメージは「ソーシャルメディアのユーザー数は多いが、その優位性をECに活かせていない」というものだった。2016年9月、米国ワシントン大学と中国復旦大学の教授らは、機械学習や計量経済学を駆使した研究を通じ、WeChatユーザーが流出している先は、主にニュースアプリ「テンセントニュース」とアリババ系ECアプリ「タオバオ(淘宝)」であることを明らかにした。

出典:“How Mega Is the Mega?Measuring the Spillover Effects of WeChat by Machine Learning and Econometrics”
出典:“How Mega Is the Mega?Measuring the Spillover Effects of WeChat by Machine Learning and Econometrics”

この研究結果は、タオバオに流出するユーザーを食い止めれば、テンセントもECで成功する可能性があるということを示唆していた。

そこで、テンセントは2016年9月以降、自社のECシステム構築に取り掛かり、2017年2月にシリーズCで拼多多への出資を実施したほか、その10ヶ月後には、すでに業務提携を行っていた京東(JD.com)と「唯品会(vip.com)」にも出資するなど、あらゆる顧客層を取り込んでいった。

2017年から2018年は、拼多多のGMV(流通取引総額)が爆発的に増加した時期であり、CAGR(年平均成長率)は業界の水準をはるかに上回って234%に達した。テンセントは顧客の囲い込みを狙い、2018年5月にWeChat内でタオバオ商品をシェアすることを禁じた。

京東の過ちと拼多多の台頭

京東とWeChatの提携は約5年前に始まり、WeChatのトップページにはECサイトでは、唯一「京東商城」のリンクのみが設けられた。京東の新規ユーザーの25%以上はWeChat経由となっている。しかしこの5年間、顧客のトランザクションコンバージョン率は思ったほど高くない。京東はWeChatの強みをうまく生かしきれなかったのだ。ようやく今年第2四半期の決算発表会になって、京東の劉強東CEOはWeChatという入口を重視し始めたが、そこにいたるまで、あまりに時間がかかり過ぎた。

テンセントも、京東以外のECプラットフォームが必要だと感じていたようだ。拼多多はこの空白を埋めるのに最適の存在だった。拼多多が展開している、大勢の他人と一緒に購入すると商品の価格が安くなる「拼団(共同購入)」というサービスには、かつては10人単位という決まりがあり、人が集まらなければキャンセルになる仕組みだった。しかし、今ではユーザーがWeChatという巨大ソーシャルメディアを活用し、商品を他人にシェアするだけで割引価格が適用される。京東も今年になってようやく共同購入を強化し始めている。

拼多多の黄峥CEOは、ビジネス誌『財経』のインタビューで「これまで京東、唯品会、磨姑街(Mogujie)等のECプラットフォームが拼多多のモデルを模倣してきた。しかしこれらの企業にとって、共同購入はGMVを増やすためのツールにすぎなかった。拼多多は人を中心に考えている。共同購入を通じて人を理解し、人を通じて商品を紹介する。多くの企業が一様に「低価格と共同購入」を売りにしていたが、拼多多は出発点も方向性も他社と異なり、成長した姿も他社とは異なる」と語っている。

現在、中国のEC市場は、アリババ、京東の二強時代から拼多多含めた三強時代へと突入している。GMVが7000億元(約10兆5000億円)、MAU(月間アクティブユーザー数)が3億6000万人という拼多多は、今や上記2社にとっても無視できない存在だ。2019年3月時点で、拼多多の平均MAUは京東の2億3000万人を抜いて2億6000万人を記録している。

一方、テンセントとアリババは小売業でもトラフィック、データ、インフラ等各方面で真っ向から競い合っている。中国のEC市場には、今後も様々な変化が待ち受けているだろう。
(翻訳・桃紅柳緑)

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