原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録
中国のIT大手バイドゥ(百度)の出資者たちは、同社に関するいくつもの悪いニュースに嫌気が指している。同社はもはや沈みかけた船のようであり、なす術がなく沈没を待つしかない状態だ。かつては中国のIT企業御三家「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」ともてはやされたのも今や昔、現在では事実上、「AT(アリババ、テンセント)」の二強時代になりつつある。バイドゥの時価総額はわずか362億ドル(約4兆円)で、約4000億ドル(約43兆円)規模のアリババやテンセントに遠く及ばない。今では、生活関連O2Oサービス大手「美団点評(Meituan-Dianping)」やEC大手「京東集団(JD.com)」にも追い越されて業界3位の座を失い、ソーシャルEC「拼多多(Pinduoduo)」との5番手争いを繰り広げている。
バイドゥはまさに大敗を喫しているが、1年前には同社に対して最も悲観的な見方をしていたアナリストでさえ、800億ドル(約8兆6000億ドル)の時価総額が300億ドル台(約3兆2000億円)まで落ち込むとは想像できなかった。2018年上半期に20億ドル(約2100億円)だった純利益が2019年上半期にはわずか3億ドル(約300億円)まで下落した。過去に今回の上半期純利益を下回ったのは2010年のことだ。
バイドゥにまだ打つ手はあるのか
バイドゥのような検索サービスの独占企業は、石油会社のように資金源が途絶えることなどなかった。同社の事業の核となる検索サービスはまさに金のなる木であり、そこから得られた資金を新規事業のインキュベーションや他企業への投資などに投入していた。まず上場企業を見ると、同社傘下には大手動画配信サービス「愛奇芸(iQIYI)」と大手オンライン旅行会社「携程旅行網(シートリップ)」という2つの大きな投資実績がある。直近の愛奇芸の時価総額は132億ドル(約1兆4000億円)で、携程は177億ドル(約2兆円)だ。バイドゥは愛奇芸の株式56.7%を保有しており、その価値は74億8000万ドル(約8000億円)に相当する。携程の方は19%で33億6000万ドル(約3500億円)だ。同社はこの他に中国のEVメーカー「威馬汽車(WM Motor)」やトラックと貨物のマッチングサービス「貨車帮(Huochebang)」などにも投資しており、今年8月には中国のQ&Aサイト「知乎(Zhihu)」にも出資している。
バイドゥは過小評価されているのか
「投資家たちの間でバイドゥは過小評価されていると思う者は少なくないが、あえて株を買おうとする者もいない」と業界関係者は語った。バイドゥは今年第1四半期に5000万ドル(約54億円)の純損失を計上したが、第2四半期では状況が打って変わって純利益が3億5000万ドル(約380億円)となった。ただ、第2四半期の収益改善は厳格なコスト管理によるものであり、現状維持のままでは来年の収益増は難しいとみられる。同社の主力事業である広告による収入は、第2四半期で前年同期比8%減であり、第3四半期にはさらに下落するとJPモルガンは予測している。バイドゥグループの決算報告での売り上げ増加はすべて愛奇芸によるものだ。
劣勢に立たされているインターネット企業をどのように評価すればよいのか?大半の証券会社はバイドゥに対して、事業部門ごとの推定評価(Sum of the parts valuation)を用いている。これは多角経営のホールディングスを評価する際によく用いられる方法だ。こうした企業は多様な事業を同時進行させているため、それぞれの事業にとってふさわしい評価方法を選び、持ち株比率に基づいて重み付けをして集計するのだ。
JPモルガンなどの予測では、バイドゥの主要事業(検索とフィード)に10倍の株価収益率(PER)がつけられており、事業評価額が244億ドル(約2兆6000億円)と値が上がった。いずれの企業が下した評価も近く、425億~460億ドル(約4兆6000億~5兆円)の間だ。
注目に値するのは、各証券会社がバイドゥの自動運転やAI事業を「ゼロ」と評価したことだ。「これらを収益化するにはあまりに長期にわたる」とある関係者は語り、「現在資本市場が関心を持っているのは、来年はインターネット広告市場が回復するかどうか、躍進中のバイトダンス(字節跳動)がどれほどのシェアを奪うのかなどだ」とした。
現在、バイドゥの経営陣はしきりに「コンテンツのエコシステム構築」を強調している。つまり、同社が提供する個人向けメディアプラットフォーム「百家号(Baijiahao)」や「智能小程序(AIミニプログラム)」などの強化だが、出遅れ感は否めない。破竹の勢いで拡大するバイトダンスは2019年に1000億元(約1兆5000億円)の売り上げ目標を掲げており、その額の大半をバイドゥの手がける事業からのシェア奪取によって達成させようとしている。同社は今年3月から検索事業にも進出し、8月にはオンライン百科事典「互動百科(baike.com)」に出資し、バイドゥに対抗する姿勢を示している。
(翻訳・虎野)
原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録