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中国上海市で10日に閉幕した第6回中国国際輸入博覧会は、企業の展示面積など多くのデータが過去最高を記録し、成約意向額は年間規模で前年比6.7%増の784億1千万ドル(1ドル=約151円)となった。
日本企業はこの6年間、輸入博に意欲的に参加し、今年も多くの「古参」企業と「新顔」企業が会場の国家会展中心(国家エキシビション・コンベンションセンター)に集まった。これらの企業は、輸入博に対する率直な考えを語り、博覧会が今後も継続的に利益をもたらすことを有望視し、協力と革新を通じたウィンウィンの実現に期待を寄せた。
輸入博の約束
「2022年、日本の製薬会社は消化器系の希少疾患を治療する新薬を携えて輸入博に参加し、海南省博鰲楽城国際医療観光先行区と契約を結んだ。新薬の承認は通常数年かかるが、輸入博の後押しの下、新薬はわずか6カ月でボアオの医療機関に導入された」
5日の輸入博開幕式では、外資系企業の三つのエピソードが紹介され注目を浴びた。その一つが、輸入博の常連、武田薬品工業に関するものだった。
武田薬品工業のシニアバイスプレジデント、武田(中国)投資有限公司社長の単国洪氏は「6回の輸入博に5回出展し、常に輸入博と共に歩んできた。国内と海外が共有し、協力する重要なプラットフォーム、特に世界のイノベーション成果とテクノロジーを展示する最良の窓口として輸入博が重要な推進力を発揮するのを再び目の当たりにすることができ光栄に思う」と述べた。
同社は今年、消化器や腫瘍、希少疾患、血液製剤など中核分野で世界初となる多くの革新的製品と画期的治療法を展示。単氏は「わが社は今後も中国市場への投資を強め、中核事業分野での革新的成果の導入を加速させる。中国の現地パートナーとのイノベーション協力も強化していく」と語った。
輸入博に第1回から参加する「皆勤賞」企業のパナソニックは、ペロブスカイト太陽電池や廃棄植物由来の繊維素材など、毎年多くの環境先進技術を発表または初展示してきた。中国進出数十年の歴史を持つ同社は輸入博を通じ、中国で事業を発展させる確固たる自信を示してきた。
パナソニックホールディングス(HD)の楠見雄規社長兼グループCEO(最高経営責任者)は「今回は4回目の中国訪問、初めての輸入博への旅となった。輸入博で中国のイノベーションの速度、発展の速さを感じた」と語った。会場でのスケジュールは既に埋まっていたが、楠見氏は特別に時間を割いて日本企業5社のブースを訪れた。
古参企業に加え、初出展企業も会場に彩りを添えた。3年後に創業100周年を迎える東レは、化学という目立たない業界の「隠れたチャンピオン企業」であり、長年にわたり中国市場を深く耕し、今年輸入博に初出展した。
東レの中国法人、東麗(中国)投資の姫島義夫副董事長は新華社の取材に「輸入博は国家レベルの高水準な総合展示会で、展示はバラエティーに富み、来場者も多く、深い印象を受けた」とし、日本企業に対し「ぜひ来訪して良さを感じ、積極的に出展してほしい」と呼びかけた。
生活雑貨ブランド「無印良品」を展開する良品計画も今回初出展した。二つの新商品を世界に先駆けて披露し、展示ブースも設計に工夫を凝らした。ブースは「未完成」の状態で公開され、会期中は来場者に環境保護活動への参加を呼びかける意味で外壁を収納ケースとして持ち帰ってもらい、展覧会終了時に最終形を見せることで同社が提唱する「ナチュラル、環境保護、シンプル」というライフスタイルを表現した。
同社中国法人、無印良品(上海)商業の清水智・董事長兼総経理は会場で「中国で設計した商品の世界市場への投入」「中国市場に根を下ろす無印良品の揺るぎない決意を世界に示す」という二つのビジョンを表明した。
良いものを分かち合う
輸入博では、魅力的な食品や化粧品、人のように動くロボット、没入型視聴覚体験装置などのほか、中国の市場と消費者に向けたより良い生活のためのソリューションも展示された。日本企業も多くの新製品、新事例で貢献した。
消費財展示エリアに入ると、大小さまざまなブースが「キャンプ地」を形成し、キッチン用品やウインドブレーカー、寝袋、リュックサック、手袋などが所狭しと並んでいた。日本貿易振興機構(ジェトロ)は今年、これまでと趣向を変え、キャンプやウィンタースポーツ関連のブランドを多数取りまとめて出展した。
消費財展示エリアの「ジャパンパビリオン」は、前回まで化粧品を中心に展示していたが、今年はアウトドアライフをテーマに、アウトドアやキャンプ、ウィンタースポーツ関連ブランドを展開する15社のほか、ペット用品ブランド8社も加わり、400種類以上の商品を展示した。
ジェトロ上海事務所の水田賢治首席代表は、昨年の輸入博で初出展したキャンプブランド3社が大きな注目を集めたことから、日本企業は中国人の健康的な生活志向とアウトドア経済の急速な発展を感じ取ったと指摘。この1年はアウトドアやキャンプ、ウィンタースポーツ、ペット用品などの新興貿易分野を積極的に開拓してきたと説明した。
輸入博期間中、多くの来場者がこれらのエリアで休憩し、バイヤーも熱心に商談に臨んだ。展示品には二次元バーコードが用意され、スマートフォンで読み取ることで各ブランドのオンラインストアやジェトロの公式アカウントからより詳細な情報を入手することができた。
地元上海のキャンプ愛好家、羅婷さんは、自身の装備が当初の防湿キャンプマットやタープ(天幕)から、調理器具やテーブル・椅子、テント、その他さまざまな専門的装備に「アップグレード」していったと説明。「数年前のキャンプでは装備も欧米ブランドが中心で、品ぞろえもそれほど多くなかった。今は日本のブランドが続々と進出し、選択の幅が広がり、デザインも収納しやすく工夫されている。キャンプ生活は専門化され便利になった」と語った。
輸入博に何度も出展してきたユニクロは、新商品や「ヒートテック」の展示に加え、服のリペアやリメイクサービスを提供する「RE.UNIQLO STUDIO」を初めて設置した。トートバッグのリメイクを体験できるワークショップでは、来場者が刺しゅうステッカーや落書きなどを通じてオリジナルエコバッグを作成。製品が再利用されるだけでなく、唯一無二の「芸術品」に生まれ変わる過程を体験した。ブース担当者は「今回初めて輸入博にRE.UNIQLO STUDIOを設置した。服の愛し方のもう一つの可能性を伝え、低炭素型ライフスタイルを気軽に実践できるよう手助けした」と語った。
共に未来をつくる
「新しい時代、共有する未来」は、第6回輸入博のテーマであるだけでなく、出展企業の方向性にもなった。
「共有」から「共創」へ。第6回輸入博の期間中、日本企業は次々とウィンウィン協力や未来の共創に言及した。
輸入博の「古株」ソニーは会場で、「テクノロジー+(プラス)カルチャー」と銘打ったクリエーティブプロジェクトを発表。「中国でのプロジェクト発表を通じ、より多くの中国の人々をクラウドイノベーション(群衆が生み出すイノベーション)の実現に招き入れていきたい」と表明した。
同社は輸入博で、スイッチを押し鼻歌を歌うだけでメロディーを奏でられる「ウルトラライトサックス」を発表し、注目を集めた。モノのインターネット(IoT)の特許技術を応用した革新的な楽器は、音楽初心者や愛好者、障害者にも音楽を楽しむ可能性を広げた。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント上海の添田武人総裁は「音楽を使った癒やし、これこそクラウドイノベーションといえる。一人でも多くの人に参加してほしい。今後の大阪万博でも広めていきたい」と語り、同社が「ゆるミュージック(YURU MUSIC)」と呼ぶ公益プロジェクトの中国展開は、誰でも簡単に演奏できる入門的な楽器を開発し、より多くの人に音楽の楽しさと感動を届けるためだと説明した。
第1回から6年連続出展となったファンケルも、日本と中国の企業が共により良い未来を築いていくことに強い期待を寄せた。島田和幸社長兼CEOは新華社の取材に対し、この5年間で輸入博の影響力を肌で感じてきたと指摘。世界的なブランドは輸入博で中国の消費者と密接に接触することで、消費者のニーズと市場のトレンドをより深く理解していると述べた。
輸入博の古くからの友人、島田氏にとって、6年間の最大の変化は会場出展から会場とオンラインの結合方式への移行だった。会場展示と同時に実施するライブ配信で会場内外の消費者をつなぐことが可能となり、企業はこれまで以上にユーザーのニーズを理解し、より良いサービスを提供できるようになったという。
島田氏は「中国市場にはまだ大きな潜在力がある。今後も引き続き成長していく」と自信を持って語った。(新華社上海)
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