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中国国家新聞出版署は12月22日、「オンラインゲーム管理規制(意見募集稿)」(以下、「意見募集稿」)を起草し、社会から広く意見を募集すると発表した。
「意見募集稿」には、現行のオンラインゲーム運営方式に影響を与える規定が数多く含まれている。例えば第18条は、過度のゲーム利用や高額課金を制限する内容になっており、毎日のログイン、初回の課金、連続課金などに対するリワードも禁止している。
この発表を受けて、中国国内向けのA株市場や香港株式市場に上場するゲーム関連企業の株価が軒並み急落した。22日取引終了時点の下げ幅は、ゲーム大手のネットイース(網易)が25%以上、心動(XD.com)が19%以上、テンセント(騰訊控股)が14%以上、動画配信大手Bilibili(ビリビリ動画)が11%以上になった。このほか多くのゲーム関連企業の株価が10%以上下落したほか、ストップ安になった銘柄も多かった。
具体的な規制内容の多くはゲーム会社にとって致命的なものだと、ネットイースの元ストラテジストは指摘する。例えば「意見募集稿」の第12条は「版号(ゲームライセンス)」の有効期限を1年と定め、ライセンスをストックすることはできないと規定している。また第17条が定める強制的な対戦の禁止は、シミュレーションゲームの世界大会に大きく影響するものだ。
さらに、過度のゲーム利用や高額消費を制限する第18条では、毎日のログインボーナスなど利用を誘導するようなリワードも禁止している。もし「月間パス」のリワードもこれにカウントされるなら、ユーザーの定着率のみならず、ゲームの売り上げにも打撃が及ぶことになる。
さらに、ユーザーが課金できる限度額を設定することも必要になる。前述の元ストラテジストは、現地の最低賃金レベルの月3000~5000元(約6万~10万円)が上限になると予想する。そうなれば、ゲーム会社の利益も頭打ちになってしまう。
中国のオンラインゲームは、まず無料を売りに大量のプレーヤーを集めてから、一部の課金勢から収益を上げるという運営モデルが一般的だ。もし「意見募集稿」が実際に施行されれば、ゲームエコシステムの再編が起こり、新規ユーザーの獲得や課金ユーザーからの収益確保が難しくなる。
とはいえある投資家は、ブラウザゲームの名残が強いゲームメーカーほど打撃が大きく、すでに路線変更しているトップメーカーにとっては一時的な影響に過ぎないとの見方を示す。
流通市場では、業界全体が低調だった2023年に、ネットイースが年初の100香港ドル(約1800円)から180香港ドル(約3300円)まで値を上げて勢いを見せたが、今回の株価急落で1年間の上げ幅がほぼ帳消しとなった。
テンセントや心動などは年初に高値を付けてから下げ続けており、心動は29香港ドル(約530円)から9香港ドル(約160円)へ、テンセントは412香港ドル(約7500円)から273香港ドル(約5000円)へと下落した。
ゲーム会社が被る直接の影響のほか、広告を主な収入源とするプラットフォームにも間接的な影響が及ぶとみられる。ゲーム会社はプラットフォームにとって大口の広告主のため、新規制によりゲーム業界の収入が激減すれば、プラットフォームの広告収入も深刻な打撃を受けることになる。
*2023年12月26日のレート(1元=約20円、1香港ドル=約18円)で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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