AI技術の進歩に伴い、コンピューター上で三次元の立体物を作成する「3Dモデリング」の分野でも大きな変化が生じようとしている。従来の3Dモデリングはゲームや映画、テレビ、建築などさまざまな業界で利用されてきたが、制作プロセスが煩雑で制作期間が長いうえ、コストが高く、3Dモデリングの度に少なくとも数千元（数十万円）かかる。一方で、2D画像生成で成功した生成AIの技術を3Dモデリングに応用する可能性が見えてきた。

OpenAIは2021年に文字を入力すると直ちに鮮明な画像を生成する「DALL・E」を発表した。これにより2D画像の生成にAIが利用されるようになり、3Dモデリング分野にもAIを応用するヒントが示された。

2023年初めに設立された「VAST」はこの3Dモデリングを手がけている。アルゴリズムチームの全員が国内外のトップ大学やテック企業の出身者で、AIとグラフィック関連の経験が豊富だ。VASTの目標は、質の高い3Dモデルの制作に必要な専門知識とコストを減らし、3Dコンテンツの生成を簡単にすることだ。

世界トップクラスの大学とテック企業出身者から成るVASTは、技術とデータの両面で優位性があり、特に3Dモデル生成AIのアルゴリズムに強い。また、1000万以上の3Dネイティブデータベースを保有し、生成AIに豊富な学習リソースを提供している。

これまでの3Dモデル生成の技術路線とは異なり、VASTチームは表現、モデル、データを統一し、ほかのモダリティの成功体験を参考にすることで現在3Dコンテンツ生成が直面する課題を解決し、汎用的かつ拡張可能なソリューションを実現できると考えている。アルゴリズムやデータ量、サーバーなどに高いレベルが求められるが、これらはVASTチームの強みでもある。

VASTはこの考え方で生成AIの成功率や効率を向上させてきた。現在模様のある3Dメッシュモデルを8秒で生成し、その後二次編集と調整を行うことができ、さらに5分で最適化を実施する。最適化後の3Dモデルの質は手作業で作成する3Dモデルに近く、成功率は95%以上だ。

3Dコンテンツの生成で、AIはさまざまな課題に直面している。従来のプロセスでは、3Dコンテンツの生成には長時間の学習が必要で、経験のある専門のアーティストが行っていた。しかもアーティストによって作業プロセスが異なり、統一した基準がない。既存の生成AIにとって3Dデジタルコンテンツは全く新しい言語体系であるため、AIが学習して質の高い3Dモデルを生成するのはかなり複雑になっていた。

創業者の宋亜宸氏は、AIが3Dモデルの生成分野で著しく成長するには、人の知識に依存するのではなく、膨大なデータとコンピューティングによって汎用化できる方法を学習する必要があるとみる。

1年近くの模索を経て、VASTは2023年12月に汎用型3Dモデル生成AI「Tripo」をリリースした。Tripoは質の高い大量のネイティブ3Dデータベースでトレーニングを重ねた、数十億個のパラメーターを持つ生成AIだ。従来の3Dモデリングに比べると、生成したコンテンツの質、生成スピードや成功率ではトップクラスだ。

Tripoの成功は、主にVASTが技術的に汎用型3Dモデル生成AIを模索してきたことが奏功した。VASTはTripoを通して高い汎化能力を示した。写実的であれ、スタイルを変化させたものであれ、あるいは複雑な構造を持つファンタジックな生物であれすべて短時間で生成し、今後3Dの独創的なコンテンツがさらに広がる可能性を示した。

現段階では、Tripoの生成する3Dモデルを映画、テレビ、ゲーム、デザインなどさまざまな分野に直接応用することができるうえ、一つのモデルの生成は数秒で済む。従来のレンダリングエンジンでは数十分から数時間かかるのに比べると、Tripoは生成にかかる時間が非常に短い。

VASTは3Dモデル生成AIの将来は明るいとみる。宋氏は、今後も引き続き生成AIの最適化に取り組み、データと技術を蓄積して、AIが生成したコンテンツを利用したゲームなどのプロダクトをリリースする予定だとしたうえで、「生成AIの改良を進め、コンテンツのパラダイムを常に検証していけば、将来はプラットフォームを構築するチャンスが出てくるだろう」と語った。

＊2024年1月9日のレート（1元＝約20円）で計算しています。

（翻訳・36Kr Japan編集部）

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