ロボタクシーの実用化に一歩前進の「WeRide」、「走行データが自動運転開発の鍵になる」

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ロボタクシーの実用化に一歩前進の「WeRide」、「走行データが自動運転開発の鍵になる」

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36Krでは、広州市黄埔区の開放道路で自動運転技術開発の「文遠知行(WeRide)」が手掛けるロボタクシー(自動運転レベル4以上の無人運転タクシー)に試乗した。試乗にあたっては、事前にスマホで同社の「WeRide Go」アプリをダウンロードし、招待コードを入力してアプリを起動させる必要がある。

20分ほどの試乗中、車は人操作なしで、車線変更、インターチェンジの出入りなどを行った。車線変更して前方車両を追い越したり、トラックが割り込んできたりするなどの複雑なシーンへの対応も、人間のドライバーと大差なくこなし、乗客がめまいなどの症状を起こすこともなかった。

(動画提供元:文遠知行より提供された黄埔区での試乗ルートと録画画像)

試乗後、同社COOの張力氏とエンジニアリング担当副総裁の鐘華氏に話を聞いた。これは今年7月に同社CEO韓旭氏に独占インタビューを行って以来の、同社の経営幹部へのインタビューとなる。

前出の張氏と鐘氏によると、文遠知行は現在シリーズBの資金調達を行っており、資金調達後の企業評価額はユニコーンに達する見込みだという。調達した資金は主に研究開発の強化、車両の拡充、データ収集、ビジネスモデルの検証、人材募集に充てられる。

張力氏

同社COO張力氏へのインタビュー概要は以下の通り。

今年8月、文遠知行は広州市のタクシー会社「白雲出租汽車公司(Guangzhou Baiyun Taxi Group)」及び「広州科学城投資集団(SCI Group)」と共同でロボタクシーの合弁会社「文遠粤行(WeRide RoboTaxi)」を設立した。合弁会社の登記上の資本金は1.8億元(約27億円)で、3社がそれぞれの持ち株比率に応じて出資している。文遠知行は広州以外の都市に進出する際にも、地元の自動車会社やライドシェア会社との合弁会社モデルを広げていく計画だ。

来年、文遠知行はロボタクシー営業許可を持つ100台以上の車を投入して広州の限定された地域でモビリティサービスのテスト運営を行う予定。「広州汽車集団(GAC Group)」など地元の自動車会社やライドシェア会社と提携していく。

広州にはタクシー会社が70社以上あり、タクシー車両の総数はおよそ2.2万から2.5万台だ。また、インターネット配車サービス車両が5万から6万台ある。広州におけるモビリティ市場の規模はおよそ100億元(約1500億円)であり、その1%のシェアを取るだけでも1億元(約15億円)というかなりの収入になる。

文遠知行が自動運転ソリューションプロバイダにならず、自動運転によるモビリティ会社になったのはなぜか。モビリティ会社の場合、自動運転に欠かせないセンサーのコストを含めた車両のコストの総額が35万元(約525万円)以下であれば、4年の経営で利益が出るとされる。しかし、Tier1の自動運転ソリューションプロバイダの場合、自動運転車メーカー側の認証取得に3年から4年を見積もらなければならない。さらに、メーカー側と販売代理店側も利益を取るので最後に手にできる金は少なくなる。そのため、自動運転によるロボタクシーというビジネスモデルを選んだ。

現在中国の広州市、安徽省安慶市と米国カリフォルニア州で公道走行テストを行っている文遠知行の車両だが、広州市黄埔区を中心とした走行距離はすでに65万キロに達している。

鐘華氏

エンジニアリング担当副総裁の鐘華氏へのインタビュー概要は以下の通り。

文遠知行がL4自動運転の開発を手掛けるのは、L4は技術的な難易度が高いからだ。今後の戦略は、参入障壁が高く、大きな潜在市場が見込めるロボタクシーの実用化を目指すことだ。

車線変更、障害物の識別などL3自動運転の一つ一つの機能を積み重ねたからL4ができるのではない。また、ロボタクシーが直面するすべてのシーンと気候に対応するアルゴリズムは十分に優れたものでなければならない。しかし、そのような高度な機能を搭載している自動車は高くて売れないだろう。これも文遠知行がモビリティ会社になった決定的な理由の一つだ。現在無人運転のタクシーというビジネスモデルで使う車両は高価であるが、誰もタクシーに乗る際に車やセンサーの値段は気にしないだろう。気にするのは1km走るといくらかかるかということだけだ。次世代のセンサーセットを使い始めたら、1kmは1.6元(約23円)まで下げられる見込みだ。

ロボタクシーの実用化に向けて、文遠知行は去年の5月に組織再編を行い、2つのチームを設けた。一つはプロダクションチーム、もう一つはデータチームだ。

データは人工知能の命だ。データは更新し続けなければならない。1、2年更新が止まるとアルゴリズムは遅れてしまう。十分なデータを得るため車両チームには100台以上の車が必要だ。

Alphabet傘下の自動運転車開発企業Waymoがなぜ優れているのか。それは2018年に500から600台の車両を投入し、1年で800万マイルのテスト走行を行ったからだ。GM傘下の自動運転企業Cruiseは2018年末に190台を投入して米国サンフランシスコの中心部を走り、1年で60マイルのテスト走行を行った。Waymoの10分の1以下だ。

これから、文遠知行はライドシェア最大手の「滴滴(DiDi)」やネット配車会社、さらには「高徳(Amap)」のような集合型配車プラットフォームとも提携し、無人運転によるドライバーの収入部分だけを稼ぐこともできる。ロボタクシー業界の参入障壁はやはり高度の自動運転技術だ。

将来は2つのトレンドに注目する必要がある。1つはドライバーコストが上昇を続けること、もう1つはハードウェアコストが下がり続けることだ。

現在ごく一部の車にVelodyne Lidar社のLiDARが搭載されているが、その他の車には全て中国企業「禾賽(HesaiTech)」のLiDARを採用している。禾賽の製品は安く、Velodyne Lidar社は中国でのカスタマーサービスがまだ不十分だ。故障した場合アメリカに送り修理しなければならない。手間と税関費用がかかるため現実的ではないのだ。
(翻訳・桃紅柳緑)

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