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ロケットとその回収技術を開発する「北京千億之一航天科技(Nayuta Space)」(以下、千億航天)がこのほど、シードラウンドで複数の個人投資家から数千万元(数億円超)を調達したと発表した。
2023年に設立された千億航天は、液体燃料を使用した再利用可能なキャリアロケットと観測ロケットを開発しており、航空宇宙分野で必要とされている輸送能力の大幅な向上とコスト削減を、ロケット回収技術により実現しようとしている。同社は観測ロケット「宇宙猟人EX号」やキャリアロケット「宇宙猟人1号」など複数のロケットを開発している。
中国で衛星インターネット事業が活況を呈するなか、商用ロケット産業も成長の黄金期を迎えている。衛星打ち上げの需要が拡大するのに伴い、宇宙輸送能力に対するニーズも爆発的に増加している。千億航天の李鋭CEOは、中国の衛星コンステレーション(多数の小型人工衛星を協調的に運用する仕組み)の統計から試算すると、通信衛星ネットワークだけでも数万個の衛星が必要だが、中国が過去2年間に打ち上げた衛星は毎年平均200個余りにとどまっていると指摘。今後10年でロケット輸送能力に対するニーズは急増するとの見方を示した。
とはいえ現段階で、中国のロケットはコストが高く生産能力も不足しているため、人工衛星の分野では思うように成長が進んでいない。イーロン・マスク氏率いる米宇宙企業スペースXと比べると、輸送能力やコストには数十年の遅れがある。コストを削減するうえで第一歩となるのがロケットの回収・再利用技術であり、まさにこの分野に注力しているのが千億航天だ。
千億航天は自社のキャリアロケットと観測ロケットに、独自開発した空力減速技術を採用している。発射後に切り離された第1段ロケット(ロケットが宇宙空間に到達するのに必要な推進力を生む部分)が大気圏に再突入し着陸するまで、全過程で空力減速技術と3軸飛行制御方式が用いられる。ロケット減速時には逆噴射せず、回収時の推進剤が不要なため、スペースXの大型ロケット「ファルコン9」に比べて輸送能力のロスを20%減らせるという。またエンジンの点火回数が減るため、再利用するロケットの耐用年数を延ばすことにもつながる。
千億航天が開発した観測ロケット「宇宙猟人EX号」は、第1段ロケットに推力70トンのエンジン9基を搭載しているため輸送能力が高く、回収後の再利用ができる。固体燃料を使用した従来の観測ロケットより積載可能な重量が増え、飛行高度や速度も向上したほか、素早いミッション対応や低コスト、高い信頼性といった特長を備える。
「2024年には3つの試験を実施する計画だ。1つ目は第1段ロケットを固定した状態でのエンジン燃焼試験、2つ目は離着陸飛行試験。そして3つ目にロケットを逆さにした状態で離着陸飛行試験を行う。私たちのロケット回収技術は、スペースXのファルコン9などとは異なるため、難易度の高い回収操作を最終試験で検証する必要がある」と李CEOは語る。
千億航天では観測ロケットを利用した収益化と回収・再利用技術の蓄積を進め、軌道投入用ロケットの回収試験も行う計画を立てている。既存の観測ロケットはいずれも再利用できない固体燃料ロケットで、機敏なミッション遂行も難しい。液体燃料を使用した再利用可能な大推進力ロケットなら、研究開発サイクルの短縮、開発費やリスクの低減など、多くの面で競争力を発揮できる。
李CEOによると、同社は2024年末までに回収技術のブレークスルーを果たし、25年に観測ロケットの最初の飛行試験を、26年にはキャリアロケットの最初の飛行試験を終える計画だという。
*2024年1月22日のレート(1元=約21円)で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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