リチウムイオン電池用のシリコン負極材、生産拡大に注力する中国企業が存在感

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リチウムイオン電池用の負極材を手がける中国のスタートアップ企業「昱瓴新能源(Yuling New Enegy)」が、電池材料大手の航盛鋰能科技(Hangsheng New Energy Materials)の主導するシリーズA+で資金調達を進めており、数千万元(数億~十数億円)を調達する見込みだという。

昱瓴新能源は、高性能リチウムイオン電池の負極材となるシリコンオキシカーバイド(SiOC)、多孔質シリコン、人造黒鉛などの研究開発、生産、販売、ソリューションを手がける総合サプライヤーで、研究開発センター、パイロット試験、生産を集約した統合プラットフォームを構築した。製品は、容量が420~550mAh/g(ミリアンペアアワー毎グラム)のローエンド、550~1000mAh/gのミドルエンド、1000mAh/g以上のハイエンドという3種類で展開している。

リチウムイオン電池の重要な材料である負極材は、リチウムイオン電池のコストの10%ほどを占め、この負極材とリチウムイオンの可逆反応性が電池の蓄電性能を決める。リチウムイオン電池の負極材は、使われる活物質によって炭素系材料と非炭素系材料に分けられる。うち炭素系材料には天然黒鉛、人造黒鉛、グラフェンなどの黒鉛系材料が含まれ、非炭素系材料にはチタン系材料、シリコン系材料、スズ系材料、窒化物、金属リチウムなどがある。

リチウムイオン電池の負極材で主流となっている人造黒鉛は、主にミドル・ハイエンドの電気自動車(EV)、コンピュータ、通信機器、家電(3C)などの分野で、天然黒鉛は主にローエンドのEV、蓄電、3Cなどの分野で活用されている。シリコン系負極材は、次世代の高容量リチウムイオン電池用負極材の最有力候補と見られている。黒鉛系負極材は理論容量が最大372mAh/gにとどまる一方、シリコン系負極材は最大4200mAh/gと黒鉛系を大きく上回り、環境にやさしく埋蔵量が豊富で、コストパフォーマンスにも優れるという特長がある。

同社はシリコン系複合負極材の開発に力を入れ、リチウム消費抑制、多孔質シリコン複合、CVD(化学蒸着)の3つをコア技術としている。SiOCは、SEI被膜をベースとするリチウム消費抑制技術を採用し、カーボン被覆と組み合わせて電子伝導性を高めることで、構造の安定性を向上させ、充放電効率とサイクル寿命を高める。この技術はプレリチウム化よりも安全性と加工性に優れ、コストも低いという。

シリコン系材料は容量の大きさなどが特長だが、リチウムイオンの挿入によって体積が膨張し、電池構造が壊れやすいという重大な欠点もある。創業者の劉萍博士によると、同社の多孔質炭化ケイ素負極材は、膨張の問題に対処するために3次元の多孔質構造を採用した。この多孔質構造ではリチウムイオンが素早く移動でき、リチウムイオンの挿入と脱離に伴う活物質の体積変化を緩和することで、より安定性に優れた構造を実現した。

劉博士は、昱瓴新能源のCVD炭化ケイ素(SiC)に関する特許技術について、電極材料メーカーの米EnerG2に劣っておらず、米国のCDV-SiC負極材市場で大きなシェアを握るEnerG2の子会社「Group 14」の牙城も崩せるかもしれないと考えている。また、昱瓴新能源の技術はGroup 14の製品と同等の性能を実現できる上、コストは約3~4割下回るという。

同社は年産1万トンに上るSiC負極材工場の建設を終え、2023年12月に生産を開始した。また、シリコン系複合負極材を製造する年産3万トンの第2期工場も建設中だ。

*2024年4月8日のレート(1元=約21円)で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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