原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録
美しい景色や楽しい会食の一コマを写真や動画に収め、SNSで披露するのが中国の人々の習慣となっている。携帯電話メーカーはこうしたニーズを格好のセールスポイントと捉え、カメラ機能の向上に大きな精力を注いできた。先日発売されたアップルのiPhone 11シリーズ、サムスンのNote 10シリーズに加え、中国国内で「華米OV」と呼ばれる四大大手のファーウェイ、シャオミ(小米科技)、OPPO、vivoが発売した旗艦モデルでも同様だ。ただし目指す所は同じだが、中国メーカーとその他のメーカーでは対応が異なるようだ。
画素数は高いほど良いのか
ここ数年、中国のスマートフォンメーカーはどこも画素数の引き上げに躍起になっている。昨年には2400万画素、今年は4000万画素以上のカメラが旗艦モデルに標準搭載されるようになり、シャオミが9月下旬に業界初の1億画素ケータイを発表したことで、ついに新記録が更新された。とはいえ、実際のところUX(ユーザー体験)はどの程度向上しているのだろうか。
1200万画素と4800万画素のカメラで撮影した画像を比較してみると、写真のシャープさという点のみにおいては大差がない。極端なシーンでの撮影でない限り、肉眼で見分けられる違いを出すのは難しい。写真の美しさを決定づけるのは、メーカーによる画像処理アルゴリズムの改良および撮影時のこだわりとテクニックなのだ。
ある業界関係者によると、中国メーカーの旗艦モデルのカメラは通常1000~1200万画素にデフォルト設定されているという。4000万画素以上に設定した場合、プロセッサーに過度の負荷がかかり、バッテリーの減りも早くなる上に写真サイズが数倍とかさむため、ストレージの空き容量の減りも早まるからだ。さらに、携帯のデフォルト設定を変更しないユーザーがほとんどであるため、多くの場合において超高画素レンズの恩恵を受けていないのが現状だ。
ドイツの光学機器製造会社カールツァイスのCEO兼社長を務めるMichael Kaschke氏はメディアの取材に対し、「スマートフォン業界は、高画素化をめぐる処理速度、ノイズ除去、コストの面ですでにボトルネックを抱えている。携帯電話には4000万画素以上のセンサーは不要であり、ユーザーはこの機能を完全に持て余している」と述べている。
つまり、画素数のセールスポイントとしての意義が実用的価値を上回っている。とはいえ、複雑で専門的な機能説明に比べ、カメラの画素数にはユーザーに対する最も直接的なインパクトがあるのも事実だ。大手携帯メーカーのいずれか一社が画素数を引き上げれば、他社もそれに追従するほかない。シャオミが6400万画素の携帯を発売すると、OPPOのサブブランドrealmeやvivoもこの流れに加わった。どの携帯メーカーも商機を逃すまいとして、カメラ機能をさらに進化させざるを得ない状況に追い込まれている。ある意味、一種の過当競争といえるだろう。
求められるのはアルゴリズムの改良
スマートフォンの性能評価サイト「DxOMark」による9月下旬時点でのカメラ性能ランキングを見ると、サムスンは3機種がトップ10にランクインしており、ファーウェイが5機種ランクインしているのに次いで健闘している。特にサムスンの「Note 10+5G」は総合ポイントが117点で2位、動画ポイントが101点、また自撮り機能ポイントでは99点で世界トップのパフォーマンスだ。同機種のリアカメラ(メインカメラ)およびフロントカメラはいずれも1200万画素であるにもかかわらず、実際にはこのような高評価を得ている。
これに対し、トップ10に名を連ねた中国メーカーの旗艦モデルでは、リアのメインカメラはいずれも4000万画素以上、またフロントカメラでも1600万画素以上となっている。
中国メーカーが画像処理アルゴリズムの技術不足を補うため、ハードウェアのスペックを上げることでカメラ性能を高めていることは明白だ。実務上やむを得ない選択であるとはいえ、これがメーカー側のコスト上昇と利幅の縮小につながっている。
アップルやサムスンは高画素化とは距離を置いているが、それでも両社のカメラ性能は常に世界トップクラスを維持している。画素数と画質は必ずしも比例するわけではなく、画質に影響を与える要素の一つでしかないといえる。
大まかに言って、携帯カメラの画質はソフト・ハードウェア両方によって決定付けられる。ハードウェアとは主にCMOSセンサーの性能やパフォーマンス、またソフトウェアとはアルゴリズムの調整や改良だが、特にCMOSのサイズが最も重要な要素となる。サイズが大きければ画質は上がるが、携帯電話自体の重量増加、温度上昇、また連続撮影速度やフォーカス速度の低下といった問題にもつながる。また携帯電話のサイズは決まっているため、CMOS自体のサイズにも上限がある。CMOSのサイズが一定の状況においては、画素数を上げると一画素あたりの感度が低下するため、高画素であればあるほど良いわけでもない。
消費者は冷静になり始めており、セールスポイントが実用価値を伴わないことが分かれば、その意義も次第に薄れていくだろう。画素数合戦が単なる数字遊びになりつつある今、アルゴリズムの向上を加速させ、真の実力をつけることこそ業界の正攻法といえる。
(翻訳・神部明果)
原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録