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動画投稿アプリTikTokを運営する中国のテック大手企業バイトダンス(字節跳動)が、このところ事業内容を大きく変化させている。ビジネスツール「飛書(Feishu、海外版『Lark』)」を手掛ける事業部門で1000人の人員削減を実施、ゲーム事業も再編し一部が売却された。その一方で、決済サービス「抖音支付(Douyin Pay)」が拡大戦略のカギを握る重要事業になっている。
バイトダンス創業者の張一鳴氏が株式の99%を所有する子会社「天津同融」は先ごろ、抖音支付のために「海聯金滙(HyUnion Holding)」の子会社「聯動優勢(UMFintech)」を14億元(約300億円)で買収し、オフラインのアクワイアリング事業の許可を手に入れた。これは抖音支付がオフライン決済市場へと勢力を拡大しつつあることを示すものだ。
オフラインのアクワイアリングサービスとは、簡単に言うと商業施設やコンビニなどの実店舗で消費者がカードやQRコードにより決済することを指す。今回のバイトダンスの動きは、モバイル決済の分野でテンセントの「WeChat Pay(微信支付、ウィーチャットペイ)」やアリババグループの「アリペイ(支付宝)」に対抗するためにとった重要なアクションだ。バイトダンスは2020年8月、今回と同様に買収によって決済事業のライセンスを手に入れ、それから5カ月後に抖音支付をリリースした。しかし決済はオンラインに限定され、オフライン市場は含まれていなかったことから事業展開には限界があった。今回の買収で抖音支付の利用シーンが大きく広がり、ユーザーの利便性が増すほか、抖音の生活関連サービス事業をさらに拡大する後押しにもなる。
中国国内のモバイル決済市場を長期にわたり主導してきたWeChat Payとアリペイは、合わせて90%を超えるシェアを誇る。バイトダンスは、テンセントとアリババグループが決済サービスで得てきた巨額の利益の一部を、抖音支付によって手に入れようと考えた。そして、中国中央テレビ(CCTV)の年越し番組「春節聯歓晩会」など大型イベントのスポンサーになったり、抖音で継続的にマーケティングを展開したりして抖音支付のプロモーションを進めてきた。
抖音支付は大型商業施設やコンビニで利用できるようになり、抖音の生活関連サービスにWeChat Payとアリペイ以外の選択肢が加わった。抖音の重点事業のひとつでもある生活関連サービスは、ショート動画コンテンツのエコシステムを基盤として2020年にスタートし、22年のGMV(流通取引総額)は770億元(約1兆7000億円)に達した。中国の経済メディア「晩点(LatePost)」によると、23年の上半期にはGMVが1000億元(約2兆2000億円)を突破し、年間目標は2900億元(約6兆3800億円)を掲げたという。
抖音の発表では、2023年の生活関連サービスの総取引額は256%増加し、370都市以上で450万店以上が加入している。
しかし、ユーザー数についても、利用シーンについても、抖音支付にはなお努力が必要だ。「1億人以上が使っている」とうたっているものの、WeChat Payやアリペイのユーザー10億人に比べると影響力は限られる。またバイトダンス系サービス以外のオンライン取引では、抖音支付の存在感はそれほど大きくない。
もちろん、バイトダンスがこうした戦略に打って出たことで、テンセントやアリババとの間に新たな競争が勃発することは間違いない。テンセントとアリババはインターネット金融の分野で盤石な地位を築いているが、抖音支付が加わったことでこのバランスが崩れてしまうだろう。今は3社の関係は落ち着いているが、限りあるパイを奪い合う中国のインターネット分野では競争は避けられない。
抖音支付がモバイル決済市場である程度のシェアを獲得できるかどうか、そしてバイトダンスの売上の新たな成長ポイントとなるか、今後業界の大きな焦点となるだろう。
作者:字母榜(WeChat公式ID:wujicaijing)
※1元=約22円で計算しています。
(編集・翻訳 36Kr Japan編集部)
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