日本の自動運転ベンチャー「FUTU-RE 」、異例の中国進出 天津市の介護施設で自律走行車の実証を開始

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日本の自動運転ベンチャー「FUTU-RE 」、異例の中国進出 天津市の介護施設で自律走行車の実証を開始

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日本の自動運転スタートアップ企業「FUTU-RE」は、「次世代モビリティによる高齢化社会の課題解決」というミッションを掲げ、独自開発した小型自律走行車の実用化を加速しようとしている。

2014年に設立されたFUTU-REは、本社を名古屋市に置き、国際色豊かなチームを中心に、自動運転技術と制御システムの研究に注力してきた。日本の自動車大手や研究機関と協力し、すでに予知保全システムや大型車向けの高度な自動運転システムなどを開発している。

自動運転分野のノウハウを蓄積したFUTU-REは2023年、次世代モビリティ専門の研究開発チームを立ち上げ、独自の1人乗り小型自律走行車の開発に着手。現在は、それぞれ異なる用途とコンセプトの3モデルを開発中だ。23年からは巨大な中国市場に目を向け、天津市で製品の実証実験を開始している。日本のベンチャー企業が最初の進出先に中国を選ぶのは異例かもしれない。

36KrはFUTU-REの最高技術責任者(CTO)の李徳衡氏とプロダクトマネジャーのRobert Stynes氏に取材し、その取り組みを聞いた。

中国に進出した理由については、中国は自動運転に対する社会受容性が高く法規制も比較的柔軟なため、ベンチャー企業にとって有利な環境を備えている点を真っ先に挙げた。次に、中国では将来的に日本よりも高齢化が進むと予測されていることを挙げ、次世代モビリティの需要が必ず高まると見込んで市場開拓を試みたと説明した。

「中国ではテクノロジー企業やスタートアップ企業を中心に自動運転技術の開発競争が激化しているが、私たちはニッチな分野に注目して差別化を図ろうと考えた。まず目指したのが大型高齢者介護施設への実装だ」と李CTOは述べた。

同社は現在、天津市の濱海新区第一老年養護院で製品の実証実験を進めている。同施設は北京市・天津市・河北省で最大規模の高齢者総合介護施設として、周辺の医療機関とも連携し、「医療と介護の一体型」モデルを取り入れている。

中国市場のニーズによりよく応えるため、FUTU-REは天津理工大学の電気工程・自動化学院の毛経坤博士が率いる研究チームとタッグを組み、実際のニーズや最新技術に関する知見について積極的に情報交換できる体制を取り、効率的な製品開発に生かしている。ちなみに、李CTOと毛博士は理系の名門・清華大学で机を並べた仲だという。

FUTU-REと天津理工大学の研究スタッフ

FUTU-REは現在、高齢者介護施設向けの小型自律走行車3種類の開発と実証実験を進めている。

高齢者向けの1人乗り自律走行車「Senior Mobility Vehicle(SMV)」は、介護施設の利用者がより自由に移動できるよう支援する。濱海新区第一老年養護院で実施した実証実験では、ローカライゼーション、進路計画、障害物検知のテストをクリアし、敷地のゲート付近と施設内の病院を往復するルートで、乗客を乗せて自律走行することに成功した。

SMVにはバイオメトリックセンサーも搭載し、乗客の健康状態のモニタリングや緊急事態時の通知ができるようにした。今後は走行データや利用者の行動データの蓄積・分析を進め、高齢者の統合介護ケアシステムと連動させることも視野に入れているという。 

施設内の「ラストワンマイル」を実現するために設計されたデリバリー・ビークルや自動搬送車は、利用者の部屋と施設内の配達ボックスを往復して荷物を運んだり、利用者に常備薬を届けたりするのに大活躍する。ロッカーソリューションと組み合わせれば、高密度な集合住宅や高層住宅などへの展開も考えられる。

次世代モビリティの導入により、高齢者の移動を改善して生活の質を高めるだけでなく、介護スタッフの負担軽減や、施設側の運営コスト削減や人手不足解消にも一役果たすだろうとFUTU-REは期待している。

製品開発をさらに効率的に進めるため、同社は天津市に中国法人を設立した。今後は製品の量産や中国事業の拡大に向け、国内外の投資家からの資金調達を進める計画だという。

(取材:WANG、編集・田村広子)

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