英ダイソンが数千億円を投じたEV事業から撤退

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英ダイソンが数千億円を投じたEV事業から撤退

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独創的な掃除機やドライヤーで知られるイギリスの家電大手ダイソンのEV(電気自動車)開発事業をご存じだろうか。

2020年の実用化を目指して進められていたダイソンのEVプロジェクトが中止された。先日、創業者のジェームズ・ダイソン氏は、従業員宛のメールの中でプロジェクトの中止を明らかにした。

自動車製造は、最も長い歴史をもつ産業の一つだが、近年、多くの勇敢なアントレプレナーを惹きつけている。チャレンジ精神旺盛なダイソン氏もその一人で、2016年に理想の車づくりに向けて本格的に動き始めた。

ダイソンの自動車開発に対する姿勢は本気そのものだった。豊富な資金力を背景に、EV開発に20億ポンド(約2700億円)を投じると発表し、ロールスロイス、ランドローバー、ベントレー、テスラ、アストンマーティンといった名だたるメーカーから優秀な技術者を集めてチームを結成した。EVの要ともいえるバッテリー技術向上のため、米ミシガン州のバッテリー開発ベンチャー「Sakti3」を9000万ドル(約97億2000万円)で買収したほか、2016年には14億ドル(約1500億円)の全固体電池工場建設計画を発表した。

2018年、自動車産業が低迷期を迎える中、ダイソンはシンガポール工場でのEV車両生産計画を発表。2019年に新型EV車の生産を開始し、2021年の発売を目指すとした。また、イギリス国内での研究開発センター建設計画や、EV関連の特許申請手続きも進められていた。

しかし、時代の急激な変化に対応することはできなかった。3年が経過し、ダイソンが世に出したのはコンセプトカーの設計図だけだ。競争優位性を保つためには、製品のブラッシュアップ、マーケティング、販売体制、充電設備の設置、アフターサービス等のあらゆるプロセスが不可欠であり、研究開発はその一部にすぎない。

本来、ガソリン車に対するEVの強みは、自動運転や充電システムといった高度な技術だ。しかし、技術の研究開発にはコストがかかり、サイクルが長く、方向性も定まりにくいといった難点がある。また、たとえ実用化に至ったとしても、市場や消費者のニーズと一致するとは限らない。

とはいえ、ダイソンもこの3年間を無駄に過ごしてきたわけではない。EV事業からは撤退するが、今後は全固体電池やセンシング技術、視覚システム、ロボット工学、機械学習、AI等の技術開発に注力するという。

革命的な製品で世界的企業に成長したダイソンも、自動車産業の高い壁を越えることはできなかった。世界規模でEV開発競争が繰り広げられる中、米国のテスラは苦節10年の末に「モデル3」の輸出を本格化した。中国では、新エネルギー車ベンチャー上海蔚来汽車(NIO)やEVスタートアップ企業威馬汽車(WM Motor)が量産車を発売し、市場にも認められつつあるが、資金繰りの問題が解決できずにいる。このほか、未だ方向性の定まらないアップルやグーグル等の巨大企業、そしてアイディアの具現化に至っていない無数のベンチャー企業も多く存在する。

今後は、ダイソンのようにEV事業を諦める企業が次々と現れるかもしれない。
(翻訳・桃紅柳緑)

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