無色透明の太陽電池、自律航行船で海のDX推進・・関西地域で続々生まれるディープテック

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大阪・関西万博の開催まで1年を切り、関西地域のビジネス環境の変化もスピードアップし、地域を挙げて注力してきたスタートアップ分野も盛り上がりを見せている。特に、関西の大学の研究成果を生かした創薬や核融合といったディープテック領域のスタートアップが育ち、存在感を発揮している。また最近では、日本の大手ベンチャーキャピタル(VC)が事務所を設けたり、海外VCがバイオ工学やヘルスケアを手掛ける関西のディープテック・スタートアップを開拓する意欲を示したりと、技術や人材に加えて資金も集まっている。

関西地域の自治体や産業界もグローバルに活躍するスタートアップを輩出すべく、その成長を後押しする。中でも、世界が注目する成長分野でグローバルに活躍するスタートアップを創出するため、関西地域の自治体・大学・企業のリソースを結集させたインキュベーションプログラム「起動」が注目を集める。生命科学やヘルスケア、カーボンニュートラル、Web3.0の分野を中心に、1社につき最大1000万円の事業資金と専門家による半年間の手厚い支援が提供される。

このような関西スタートアップ・エコシステムのポテンシャルの高さを世界に向けて発信するため、関西全域の産業連携に注力する「関西広域連合は7月11日、「KANSAI Startup Night Vol.6」を都内で開催した。スタートアップ支援事業を手掛けるフォースタートアップス(東京都港区)同イベントの運営を担当した。

イベントでは、海外の企業や投資家との連携を目指すスタートアップ4社が登壇し、これまでの実績や今後の展望を披露した。いずれも関西を代表するディープテック・スタートアップで、高い技術力を活かした事業推進にも積極的に取り組んでおり、中には既に関西の大企業と連携し、技術の社会実装に着手した企業もある。講評者として登壇した同社オープンイノベーション本部 パブリックアフェアーズディビジョンの泉友詞氏は、ここ数年の関西のディープテック・スタートアップの勢いは質・量ともに高まっており、将来のユニコーン企業誕生に期待が集まっている、と講評を述べた

モルミル株式会社

日本各地に散らばる優秀な研究者と技術シーズを集積、難病をターゲットに治療薬を開発

代表取締役 森 英一朗氏

モルミルは2022年6月に設立された奈良県立医科大学発のスタートアップ、産業技術総合研究所と徳島大学からも認定を受け、「あらゆる病気を治し社会を元気に」をビジョンに掲げている。ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの難病に苦しむ患者を救うため、「病気の状態を分子の動きで捉える」独自の測定技術を用い、治療法や治療薬の開発に取り組む。現在は、ALSのほかアルツハイマー病やパーキンソン病といった難治性の神経変性疾患や筋疾患などの治療薬開発に活用可能な基盤技術を開発している。

創業からわずか2年の若い企業だが、既に日本各地の13の研究機関と提携し、さまざまな領域の技術シーズを集約。15人の科学顧問を抱えるなど、優秀な人材が多数集まっていることが最大の強みだ。

奈良県には、県立医科大学に加えて奈良先端科学技術大学院大学などもあり、魅力的なシーズの集積地であることも、モルミルのようなアイデアを持つスタートアップが生まれた理由の一つだろう。

創薬という分野に国境はない。同社は今後、世界で戦うグローバルファーマとの提携を目指し、海外企業とも連携して画期的な創薬を実現していく意気込みだという。

株式会社OPTMASS

無色透明の太陽電池で街を森に変える、未来の都市づくりを推進

取締役 坂本 雅典氏

OPTMASSは2021年に設立された京都大学発スタートアップで、「透明太陽電池」の実用化を目指している。持続可能なエネルギーのひとつとして注目されている太陽光だが、現在利用できているのは太陽光のおよそ半分、可視光のみだ。同社は残り半分の有効活用できていない赤外光に着目し、赤外光を電力エネルギーに変換するデバイスを開発した。

従来の太陽電池は黒くて重く設置場所に制限がある。同社が目指すのは、透明で目立たずどこにでも設置でき、遮熱と発電を同時に実現する唯一無二の製品だ。仮に、高さ300メートルの関西一の高層ビル「あべのハルカス」に貼り付ければ、1MWのメガソーラーになる計算だという。

透明太陽電池の開発は2030年ごろの完成を目途に進めており、まずは遮熱に効果を発揮する透明フィルムを開発し、24年7月には大阪市にある南海電鉄の本社ビルの窓ガラスに貼り付ける実証実験を開始するなど社会実装も進む。関西地域では、革新的なスタートアップの省エネ技術を積極的に取り入れていく機運が高まっており、万博でも多くの省エネ技術を持つスタートアップが登場する予定。同社は「起動」プロジェクトの第1期に採択され、外部のパートナーから多くの支援を受けながら成長している。

株式会社エイトノット

小型船舶の自動運転技術で、「海のDX」を推進

代表取締役CEO 木村 裕人氏

エイトノットは、関西の貿易都市として栄えた大阪の堺市で2021年に設立されたスタートアップだ。ロボティクスとAIの専門家集団として、小型船舶向け自律航行技術の開発を中心に「海のDX」と「船舶のロボット化」を推進する。

実は、操船は自動車に比べて運転者の負担が大きい。船の事故のうち小型船舶が占める割合は70%以上、事故の原因もヒューマンエラーが70%以上とテクノロジー導入が遅れている業界でもある。同社の強みは高い技術の統合力であり、カーナビを使う感覚で目的地を指定すれば、AIによるルート選定からロボティクス技術による正確な船舶誘導、着岸までを全てフルオートで実現できる。

現在、同社が狙うのは北米のプレジャーボート市場だ。調査をしてみると、ほとんどのボートオーナーが操船を負担に感じており、多少価格が高くてもオート機能つきのボートを購入したいと考えているという。

海外進出を検討する際には、北米などでの現地調査やキーパーソンとの連携など、スタートアップだけでは解決が難しい複数の課題に直面した。しかし、関西地域の行政機関やJETROに相談すると、それぞれの担当者から多大なサポートを受けることができ、海外事業の前進につながったという。

カノンキュア株式会社

最先端の再生医療で、世界で100万人が亡くなる肝疾患の有効な治療法に挑戦

代表取締役 汐田 剛史氏

カノンキュアは、2016年に設立された鳥取大学発の再生医療スタートアップだ。鳥取大学大学院の汐田剛史教授らが研究成果をシーズとして立ち上げ、ヒトの骨髄細胞を培養して肝細胞化する技術を用い、肝疾患治療用細胞シートの開発を行っている。この細胞シートは、移植以外に治療法のない重度の肝疾患の有効な治療法になると期待されている。

汐田氏によると、日本には13万人の肝硬変患者がおり、肝移植が必要な重症患者は2500人いるが、実際に移植できるのは年間500人にとどまる。移植が受けられない多くの患者が死亡しており、死亡者数は日本だけで年間1万7000人に上る。世界を見ると年間100万人が肝硬変で亡くなっており、その数は右肩上がりで増えている。特に中国やインド、インドネシア、モンゴルなどが多く、同社の研究の意義は大きい。

細胞シートの実用化を加速するため、技術支援や事業化支援につながる協業パートナーを国内外問わず幅広く募っている。既にオーストラリアの企業と共同で基礎研究を実施しており、今後は海外企業との連携をさらに強化する意向だという。同社の研究は現在、非臨床試験の最終段階という重要な局面にある。これをクリアすれば治験に進み、本格的な治療への道も開けてくる。

まとめ

関西地域では自治体や企業、大学などが連携しディープテック・スタートアップの成長を支援する仕組みが出来上がりつつある。大企業がスタートアップと協業し、社会実装に向けて製品導入を進めるなどすることで、共に成長を目指す事例も出てきた。日本での起業を考える海外の優秀な人材にとっても、関西地域は有力な選択肢の一つになりそうだ。

(36Kr Japan編集部)

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