中国人の労働時間、世界屈指の長さに。原因はスマート化、不景気、過当競争か

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中国人は世界で突出して働いている――そんなデータが発表され、先日大きな話題になった。

中国人が平均して1年間に働く時間数は2450時間で、他国を引き離して調査対象ではトップに。ちなみに日本は1611時間、韓国は1872時間、アメリカは1799時間となる。これが中国インターネット大手企業に限定すると3600時間にもなる。インターネット企業社員の間で朝9時から夜9時まで週6日働く「996」という言葉が流行ったのも納得がいく。中国の就業者数は7億3700万人いて、その平均値がこの数字なのだから恐ろしい。

この数字のからくりだが、中国では春節、国慶節など祝祭日による大型連休があれば、直前もしくは直後の土曜や日曜の休日に出勤して勤務日を調整する習慣がある。そのため、年間で実質の休日が少ないことにも起因する。とはいえ週平均労働時間も年々長くなる一方で、中国政府統計によると2023年は49時間となった。ちなみに2024年6月のデータでは若干減って48.6時間になっている。労働時間が増える傾向は2015年から続いていて、しかも中国のゼロコロナ政策を含む2020年から2023年の間に労働時間は大幅に増加した。日に換算すると、この3年間で中国人の労働時間は13日分も増えたことになる。

さらに1日あたりの労働時間で割ると1日あたり9.8時間になる。これは中国の労働法36条の規定にある「1日の労働時間は8時間を超えず、週の平均労働時間は44時間を超えない」ですら平均値で守られていないことになる。

労働時間が一貫して増え始めたという2015年は、スマートフォンに伴うキャッシュレスなどの様々なサービスの過渡期にあたる。あれから様々なネットサービスが登場し、生活は楽になるはずなのに、労働時間は増えている。特に不景気と言われる2020年以降の増加が顕著だ。

では配車やデリバリーで働くギグワーカーはどうだろう。彼らはそれまでは工事現場や工場勤務での期間工として働いていたが、自由に働けるようになった結果、仕事量はどうなったのか。中国社会科学院によると、オンラインの配達員や、ライブコマース配信者、オンライン文学作家などの新産業の若者は、1日あたり平均6日、日平均でほぼ9時間働いているという。やはり労働時間が長い。

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悩ましいのは社内の勤務環境のスマート化が進んで監視体制が強化され、社内ルールを超えたちょっとした休憩すら許されなくなっていることだ。不景気となる中国で、リストラを進めている中国企業は強気であり、社員に対して辞められるものなら辞めてみろ、代わりはいくらでもいると強気だ。花形のはずのインターネット業界は35歳で退職が当たり前であり、転職後は仕事が見つからずギグワーカーで日銭を稼ぐ人も多くいる。最近上映された話題の映画「逆行人生」でもそんな人々が主役になり話題になった。会社が従業員よりも強いことから、統計に見えないサービス残業も常態化する企業も少なくない。

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中国の統計局によれば 2024年7月の全国都市調査失業率は5.2%で、2023年6月より0.2%上昇し、2023年7月より0.1%低下した。6月より上昇するのは学校を卒業した新卒者が入ることによる影響だが、それでも同月の16~24 歳の失業率は、6月の13.2%から7月には17.1%と上昇し学生は就職難だ。ちなみに同月の日本の失業率は2.7%、就職率は98.1%となっている。

ここまで中国人が働いてしまっている理由について「会社の内外で競争が激化」「伝統的に勤勉が美徳とされている」「会社にしがみつかみ続けなければならない状況」「テクノロジーの導入で業務が高度化し、またどこでも仕事ができるようになった」ことを挙げる意見もある。2024年6月には若干労働時間が減ったと紹介したが、消費が減った結果、激しい競争はあるが会社として受注量が減ってきたのではないかという分析もある。

男女共働きで休めない、休むと稼げないし辞めさせられたら仕事が見つからない可能性があり、稼がないと子供を育てられない。かといって会社としての受注量が減れば暮らしは向上するが所得は減る。また、日本のメディアでも取り上げられた「寝そべり族」への憧れを抱く若者もいるが、働き詰めにとっては厳しいのが現状だ。今、中国は試練に直面している。

(文:山谷剛史)

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