3600円で1日1200件架電するテレアポAIは人間を救うか?

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ChatGPTが巻き起こした人工知能(AI)ブームのなか、中国ではAI電話代行(ロボットコール)サービスの活用が増えている。

AIチャットボットなど大規模言語モデル(LLM)を使ったサービスを利用するユーザーは急増しているものの、ビジネスシーンでのサービスとなると、顧客獲得のコストがかさみ、技術面での投資も大きくなるため、収益化は難しい。そうしたなか、法人向けサービスとしてAI電話代行が効率の高さで注目されている。月給2000元(約4万円)の従業員が1日にかける電話はせいぜい100件台だが、AIオペレーターはその何倍もの発信業務を行い、かつコストを下げ、顧客対応や電話営業に革命をもたらした。

AI電話代行は、あらかじめシステムで営業トークを設定し、自動で次々に発信して見込み客を探す。業界により電話1件にかかるコストは異なるが、ほとんどが1分間で0.1元(約2円)前後だ。一般的なシステムひとつで1日に800~1200件を発信できるといい、3人から5人分の業務量を肩代わりできる。電話1件に1分かかるとしてコストを計算すると、1200件かけても最大180元(約3600円)だ。

また、SaaSサービスとして、企業によっては営業トークの内容や進め方、ナレッジベース、AIの訓練などをカスタマイズすることが必要になる。それぞれ別個に課金され、費用は数千~数万元(数万~数十万円)と幅広い。

こうしたシステムの大部分は電話が繋がってから料金が発生する。あるメーカーによると、午前9時~11時半と午後2時~5時くらいまでは電話が混雑する時間帯なので、作業効率を保証するために複数の回線を準備する。また、見知らぬ発信者番号の電話には出てもらえないので、例えば北京の人に電話するなら、発信者番号に北京の市外局番が表示される回線を使うといった対応をとる。

テレアポAIは本当に効果的か

AI電話代行は企業にとってサービス効率の向上が見込めるものの、消費者には不評だ。こうした電話のほとんどが不動産や教育サービス、金融商品などありとあらゆる商品を勧める内容で、多くの人はセールスだと分かるとそのまま切ってしまうか、迷惑電話として着信拒否にしてしまう。

ある関係者によると、AIロボットが消費者に電話をかけると、その対応によりバックオフィスシステムが、見込みあり、どちらとも言えない、拒否、の3つに分類する。データは最終的に文書にまとめられ、顧客企業に提出されるという。

AI電話代行を導入しているある企業は、ロボットは人間のように臨機応変に対応することはできないので、完全に人間の代わりをさせるのは不可能だと語る。ロボットの役割は、スタッフに代わって大量の発信業務を行うことだ。電話が繋がる割合は金融業界以外で40~60%ほど、金融業界ではさらに低く25~40%になる。ロボットがあらかじめ電話をかけ、見込み客が見つかればスタッフが直ちに引き継ぐことで、業務効率を最大限向上させることができる。

実のところ、初めてロボットからの電話を受けた人は、本物の人間がかけていると思うようだ。複数のメーカーでは、ロボットの声に合成音声ではなく、実際に人が録音したものを採用している。

AIロボットのコア技術には自動音声認識(ASR)、自然言語処理(NLP)、音声合成(TTS)があり、より本物の人間らしくするために人の声の録音を採用する企業もあるが、多くはコストの安い技術に頼る。

中国のAI電話代行業界では大手と中小企業の間で激しい競争が繰り広げられている。大企業は多くのリソースを投じて先端のAIモデルを開発するが、中小企業ではリソースも技術力も足りていないため、サービスの質に差が出てくる。コスト削減のためにクオリティの低い音声技術を採用すれば、消費者の心理的抵抗はいっそう増すだろう。

関係者によると、金融など一部の特殊な業界では、セキュリティーを考慮して自社内にシステムを構築する必要があり、費用は一般的に50万元(約1000万円)から、場合によっては100万元(約2000万円)台になることもある。それでも中小企業ではなく、ある程度の規模と実力のある企業を選ぶことが多い。

AI電話代行技術の発展には憂慮すべき点もある。こうした技術を採用する企業が多くなれば、消費者が迷惑電話に悩まされることがますます増えることになる。消費者の生活の質を押し下げることになり、プライバシー保護の問題が生じる恐れもある。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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