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中国の新興電気自動車(EV)メーカー「小鵬汽車(Xpeng Motors)」の自社開発する自動運転向けチップがテープアウト(設計完了)した。関係者によると、小鵬汽車の自動運転向けチップは人工知能(AI)や大規模モデルなどに特化した設計になっており、「AIの演算能力は主流の自動運転チップ3つ分に相当する」という。
これ以前に、中国の新興EVメーカー「蔚来汽車(NIO)」も5nmプロセスの自動運転用チップ「神璣NX9031」がテープアウトしたと発表したばかり。自社開発チップのテープアウトは、自動運転を支えるハード・ソフト技術をめぐるメーカー各社の戦いの始まりともなった。
小鵬汽車は自動運転向けチップの開発チームを2020年に立ち上げ、現在では200~300人の規模になっているという。同社が開発したチップの演算能力は、自社の自動運転用エンドツーエンド大規模モデルの実用化を想定して設計されている。 小鵬汽車は今年5月20日に、ニューラルネットワーク「XNet」、制御モデル「XPlanner」、大規模言語モデル「XBrain」という3つの部分からなる、量産車向けの自動運転用大規模モデルを発表している。
同社の何小鵬CEOは以前にも、、自動運転を開発する米Waymo(ウェイモ)をベンチマークに設定し、18カ月またはさらに短い期間で完全自動運転のロボタクシーのレベルに到達したいとの意欲を見せていた。言い換えると、自動運転をレベル2(システムがアクセルやブレーキ操作を担う)から徐々にレベル4(特定の条件下での自動運転)へと移行させるためには、エンドツーエンドの大規模モデルそのものや、チップアーキテクチャによるサポートの面で、まだまだ力を入れる必要があるということだ。
EV王者と言われる米テスラでさえも、現在課題を抱えている。 今年8月、テスラの運転支援機能「フルセルフドライビング(FSD)」の最新バージョンv12.5がユーザーに配布された。 最新バージョンに使用されている大規模言語モデルのパラメータ数は前バージョンの5倍になるため、まずHW4(テスラのFSD向けハードウエア第4世代)を搭載した新モデル向けにリリースされ、それから半月後にようやくHW3向けに配布されることになった。
テスラのイーロン・マスクCEOは、HW3向けに最適化するにはもっと時間が必要だと述べており、HW3が性能の限界に近づいているということが見てとれる。しかし、HW4もテスラの車載コンピューターの終着点ではない。 テスラはすでに、HW4の10倍の性能を持つ「AI 5」の開発を進めており、2025年12月ごろの発表を予定している。
自動運転をめぐるハードウェアとソフトウェアの競争は長期戦になるため、自動車メーカーの長期的な投資能力が試される。中国EVメーカー「理想汽車(Li Auto)」自動運転部門の責任者・郎咸朋氏は、10億ドル(約1400億円)の利益を出せる企業でなければ、この先の自動運転業界を生き残ることはできないと明言した。小鵬汽車も同様の試練に直面している。同社の2024年4~6月期の販売台数は3万台を超えた。販売実績は平凡だが、粗利益率は前年同期から大幅に改善して14%にまで回復した。
8月27日に発売された低価格のサブブランド「Mona(モナ)」も小鵬汽車にとってかなり重要だ。予約価格は13万5900元(約270万円)と、中国EV最大手「BYD(比亜迪)」の主力の価格帯に攻め込む。小鵬汽車はMonaの販売を月1万台と見込み、全社で月間2万台を実現することを期待している。より多くの車を販売しながら、技術サービスをしっかり行うことで、同社がAIの研究開発に投資を続け、自動運転という最終目標に近づくための基礎固めとなるはずだ。
*1ドル=約142円、1元=約20円で計算しています。
(36Kr Japan編集部)
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