ジャック・マー、久々に姿現す。アリババ傘下の式典で語ったAIの未来

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中国電子商取引(EC)大手アリババグループの創業者、馬雲(ジャック・マー)氏は2024年12月10日、傘下の金融会社アント・グループの20周年式典に登壇し、3分間のスピーチを披露した。23年3月に中国に帰国して以来、久しぶりに公の場で姿を現した馬氏の発言に大きな注目が集まった。

馬氏は20周年の祝辞を述べ、スマートフォン決済サービス「​​支付宝(アリペイ)」などをゼロから作り上げ、アントを初期から支えてきたスタッフたちに敬意を表した。その上で、これから先の20年は人工知能(AI)の時代になると強調し、次の時代も本当に価値のあること、他とは違うことに取り組んでいってほしいと激励した。

アリババ20周年の2019年9月10日、55歳の誕生日を迎えた馬氏は会長を辞任し、今後は環境保護事業、とくに農業分野に挑戦していくと明らかにした。22年以降は、日本やオランダ、スペイン、タイ、ネパールなどを訪れ、休暇を楽しみながら現地の企業や大学などとの交流を深めていた。

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2022年以降、中国ではネットユーザーの増加が頭打ちとなり、政府の規制も強まった。加えて消費市場の低迷や市場競争の激化など複数の要素が絡まり、アリババの成長は鈍化していった。これを受け、23年に始めた大規模な組織再編と人事改革が功を奏し、24年1〜3月期までの四半期業績は回復傾向を見せていたが、同年7〜9月期には再び失速している。

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アントは大きな変化の波にもまれながらも、主力事業のアリペイを世界最大のスマホ決済サービスに育て上げた。2014年にはアリババから独立してアントフィナンシャル(現、アント・グループ)を設立し、20年には新規株式公開(IPO)の準備を始めた。しかし同年10月、馬氏が上海で開かれた「外灘金融サミット」に登壇し、中国の金融管理や伝統的な銀行を批判したことで大きな議論が巻き起こった。間もなく馬氏は規制当局の事情聴取を受け、アントの上場計画は頓挫した。同社はその後数年間の調整期に入る。

2023年1月、アントは資本関係を調整。馬氏の議決権比率は50%から6%に下がり、実質支配株主から外れた。アントは集団指導体制に移行し、馬氏は完全に同社の経営から離れた。同年7月、中国人民銀行、国家金融監督管理総局、中国証券監督管理委員会などの金融当局は、アントが消費者権益保護法や保険法に違反したとして、71億2300万元(約1500億円)の罰金を科したと発表した。

馬氏はここ1年以上にわたって公の場から姿を消してはいたが、社内会議や社内メールを通じてアリババの事業や戦略について数々の指針を示していた。2023年5月には小規模な社内会議で「アリババは(原点の)ECサービス・淘宝(タオバオ)に、そしてユーザー中心に立ち返り、インターネットに戻るべきだ」とし、今後は同社を成功に導いてきた方法論では対応できない可能性があるため、迅速に方針を改める必要があるとの考えを示したという。

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馬氏が示した指針は、AI事業の推進などを含めて大部分がアリババの変革計画に取り入れられ、迅速に実行に移されている。創業者である馬氏が、依然として現役の経営陣をしのぐ影響力を保っていることが分かる。

アントの20周年に馬氏が登壇したことで、現役の経営陣の方針が裏書きされ、現在の戦略の信頼度と安定感が増した。社内外の懸念もかなり払拭されたのではないだろうか。

馬氏はアントの全員に「夢を追い続けよう」と語りかけ、次のようなメッセージで短いスピーチを締めくくった。

「雨が降らなければ虹を見ることはできません。ここ数年の経験と試練に感謝し、アントを信じ支えてきてくれた全ての仲間に感謝しています。みなさんの激励もありがたいものでしたが、批判や指摘にはもっと感謝しています。私はアントが新たな1ページを開き、義理人情に厚い若者たちが今という変革の時代に新たな奇跡を起こすと信じています。未来への道のりは険しいかもしれませんが、私たちはラッキーなことに未来に参画することができるのです!」

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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