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生成AI分野のユニコーン企業「智譜AI(Zhipu AI)」がこのほど、新たに30億元(約660億円)を調達した。複数の戦略投資家や国有資本のほか、君聯資本(Legend Capital)など既存株主も参加した。
智譜AIは調達した資金で大規模言語モデル(LLM)の研究開発を進めるという。質問に対し回答を返すレベルから、マルチモーダルの複雑なタスク解決へとアップグレードし、業界のエコシステム発展をさらにサポートする。
智譜AIでは製品化による売上高が2024年に2倍以上に増加した。同社の張帆COOは以前、「通常は、法人向けサービスを提供する企業が年間経常収益(ARR)を数億元(数十億円)規模にするのに10年ほどかかるが、わが社では2023年中に数カ月でこれを実現した」と語っている。
法人向けサービスではAPIの料金が大幅に値下げされ、AIモデルをクラウドで提供する智譜AIのMaaS(モデル・アズ・ア・サービス)プラットフォーム「Bigmodel」でAPIの年間収益が30倍以上増えた。消費者向けサービスでは、AIアシスタント「智譜清言」のユーザー数が2500万人を超え、2024年7-9月期の有料サービスリリース以降、年間売上高は数千万元(数億円)を超えると見込まれている。
LLM開発企業にとっては現在、AIモデルのAPI販売とMaaSでのサービス提供が法人向けビジネスモデルの主力となっている。
智譜AIのMaaSであるBigmodelでは、大規模言語モデル「GLM-4」シリーズやマルチモーダルモデル「GLM-4V」シリーズ、自律型AIエージェント「AutoGLM」などのAPIを提供しているほか、わずか3ステップで導入可能なAIモデルのファインチューニングプラットフォームもある。
Bigmodelの1日当たりの平均トークン消費量は150倍に増え、そのうち有料トークンは40倍以上に増加した。法人や開発者などのユーザーは前年比30倍以上の70万人となり、有料ユーザーは20倍以上になったという。
しかし価格戦争が始まり、各社のAIモデルにそれほど能力差がない状況では、MaaSの商用化も一筋縄ではいかなくなっている。Bigmodelはこうした状況でも、コスト削減の成功により成長することができた。
智譜AIは2023年初めから24年下半期にかけて、オープンプラットフォームの利用料を100万トークン当たり500元(約1万円)から0.1元(約2円)へと引き下げた。同社の幹部は、「これはアーキテクチャやエンジニアリングに関わる技術の最適化など、技術の進歩によってもたらされた値下げで、価格が5000分の1に下がったとしても会社に損失はなく、価格競争を引き起こしているわけでもない」と述べた。
2025年はAIエージェントが爆発的に普及する年になる、というのが世界のAI業界でのコンセンサスだ。米メタのマーク・ザッカーバーグ氏、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、OpenAIでチーフサイエンティストを務めていたイリヤ・サツキバー氏などは公の場で、AIエージェントの活用について楽観的な見通しを示している。
智譜AIも2024年にAIエージェントについて積極的な動きを見せた。10月に独自開発のAIエージェント「AutoGLM」の内部テストを実施し、1カ月で100万人以上のユーザーがアクセスした。
11月29日に開催された智譜AIのエージェント・オープンデーでAutoGLMが正式にリリースされたときには、50ステップ以上にもなる操作を自律的に実施し、アプリケーションをまたいだタスクを実行することもできるようになっていた。さらにウェブ版の「AutoGLM-web」とPC版の「GLM-PC」もリリースされた。AutoGLM-webの発表の際には、自ら動画サイトでドラマ「小巷人家」の最終回を検索して再生し、コメントをアップする様子が公開された。GLM-PCは、米Anthropicがリリースした「computer use」機能と同じように、PCを遠隔で無人操作することができる。
こうした機能はまず需要が明確なエンドユースのデバイスに搭載される。オープンデーでは、栄耀(Honor)、ASUS、小鵬汽車(Xpeng Motors)、クアルコム、インテルなどが智譜AIとの提携を発表した。
AIアプリケーションの実用化が近づいてくると、消費者向けでも収益を得られるかどうかが企業の関心事になる。現在、消費者向けAIアプリケーションは顧客獲得の段階にあり、ChatGPTやCharacter.aiといったチャットサービスなどごく少数の先発者や技術面で優位にあるプロダクトを除けば、多くの企業はユーザーを有料利用へ誘導するのに苦労している。
技術と資金がボトルネックとなって、中国国内ではOpenAIのスピード感に追随できる企業は少なくなっており、音声認識能力を強化した生成AI「GPT-4o」と動画生成AI「Sora」の登場を境にその傾向はいっそう顕著になっている。
その中でも智譜AIはOpenAIをベンチマークとしたAIモデルを提供する数少ない企業だ。2024年以降、Soraをベンチマークとした動画生成モデル「CogVideoX」と、GPT-4oをベンチマークとしたエンドツーエンドの音声モデル「GLM-4-Voice」とビデオ通話モデル「GLM-4-VideoCall」を相次いでリリースした。これらの動画生成、動画通話、音声認識機能はいずれも智譜清言に追加されており、中国の消費者向けAIサービスとして最も豊富な機能を備えている。
智譜AIの幹部は、「AGI(汎用人工知能)を開発するうえで、ユーザーが有料でも使ってくれる価値を作り出すことがどうしても必要だ」と語った。
*1元=約22円で計算しています。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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