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中国発の動画投稿アプリ「TikTok」は、米国における利用禁止を含む法律が正式に発効する1月19日を前に、同国内でのサービスを停止した。 しかし、そのわずか半日後に、TikTokはすぐにサービスを復活させたという、劇的な展開を見せた。この背景には、就任前のトランプ米大統領が関連サービスのプロバイダーに対し、TikTokを支援続けても罰金を科さないと保証したことがある。
米連邦高裁の差し止め命令によると、TikTokの削除が求められた後に、米国内の企業がTikTokにサービスを提供できなくなるか、最大8500億ドル(約133兆円、米国内の1億7000万人の利用者1人当たり5000ドルとして計算)の巨額の罰金が科されることになる。
さらに、トランプ氏が大統領令によって禁止措置を最大90日間の猶予を与えると述べ、TikTokの米国での事業は当面は継続可能となったが、最終的な運命は90日後に持ち越しとなる。
今後米国でTikTokがどのような結末を迎えるかは、3つの可能性が考えられる。1つ目は、米国議会が既存の禁止令を覆し、TikTokが米国で通常運営できるようになる。2つ目は、米国市場から完全に撤退する。3つ目は、TikTokを米国企業に売却し、米国事業の経営を継続する。
現時点では、米国議会が禁止令を撤回する可能性は極めて低いとされている。一方、完全に撤退すれば、親会社のバイトダンス(字節跳動=ByteDance)とその株主にとって大きな損失をもたらすだけでなく、1億7000万人に上る米国ユーザーや、TikTokに依存して生計を立てている700万人の事業者にとっても大きな打撃となる。 最近、大量の「TikTok難民」が中国製SNS「小紅書(RED)」に押し寄せたが、米国におけるTikTokの影響力の大きさを知らしめた。
つまり、残された最も現実的な中間案は、何らかの受け入れ可能な方法でアメリカ企業に売却するという方法だ。 トランプ氏は、この90日間の猶予を「TikTokが適切な買い手を見つけるための時間」としており、TikTokとアメリカの買い手企業との50:50の合弁企業での経営を望んでいる。
しかし、2020年に中国政府が更新した輸出制限リストでは、中核的なアルゴリズムに関わる技術は売却前に政府の承認が必要であることが明確に規定されており、取引に複雑性が加わっている。
現在、買収の意向を示しているのは、AI検索エンジン「Perplexity AI」と不動産業界の大物フランク・マッコート(Frank McCourt)氏などがある。Perplexity AIはバイトダンスの経営権を一定程度維持できる提案をしており、マッコート氏は中核的なアルゴリズムを要求していない点で注目されている。
しかし、米国と中国双方の条件を本当に満たす買い手は、他の誰かかもしれない。中国メディア・三聯生活週刊が指摘するように、TikTokの将来はビジネスの要素を考慮するだけではなく、政治的・外交的なバランスこそが重要となる。 現段階では、アメリカでの影響力と中国との良好な関係を併せ持つ米テスラのイーロン・マスクCEOが、理想的な受け皿なのかもしれない。
TikTokの未来は依然として不透明だが、その行方は単なる企業の取引を超え、世界のテクノロジー業界と米中覇権争いの縮図でもある。
(36Kr Japan編集部)
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