中国「方位角」、高精度測位の需要開拓 中国版GPS「北斗」活用

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人工衛星を用いた高精度測位・ナビゲーション・計時(PNT)システムを開発する「方位角科技(Azimuth Technology)」(全称、上海方位角数据科技)がこのほど、シリーズAで1億元(約20億円)近くを調達した。中兵北斗応用研究院が出資を主導し、深圳市創新投資集団と上海鋭合資産管理が参加した。

中兵北斗応用研究院は中国独自の衛星測位システム「北斗」の産業化を手がける国有企業で、方位角科技に技術開発や市場開拓、基準策定など多方面のサポートを提供する。

方位角科技は2021年に設立され、北斗の副総設計士がコアチームを率いる。同社は屋内外をシームレスにつなぐ低コストで使いやすい測位・ナビ・計時プラットフォームを構築し、自動運転、物流、インフラ監視などさまざまな業界にサービスを提供している。

製品マトリクスと技術優位性

方位角科技の製品マトリクスは、汎用型、高精度型、ひずみ測定型と幅広いニーズに対応する。

汎用型測位ソリューション(精度:メートル級)
大衆のニーズに合わせ、ショッピングモールや駐車場、トンネルなどで使用される。特別な機器は必要なく、スマートフォンや車載機器などを通じて屋内外測位・ナビが利用可能。主要な地図アプリをサポートし、時速120キロメートル以内なら精度は3〜10メートルに上る。

高精度測位ソリューション(精度:サブメートル・ミリメートル級)
製造業の現場や人流・物流が集中するエリア向けで、北斗に対応した独自の高精度測位チップと高精度測位アルゴリズムを組み合わせ、屋内外測位を高い精度で実現する。自動運転やロボット、物流追跡などに適している。

ひずみ測定ソリューション(精度:ミリメートル級)
橋梁やダムなど極めて高精度な測位技術を必要とする現場向けで、衛星信号が阻害されるエリアのひずみ監視に対応し、屋内のひずみ監視も可能。精度は1〜2ミリメートルに達する。

このほか、電力や通信業界向けの計時ソリューションや、衛星シミュレータも提供している。

製品マトリクス

方位角科技の技術優位性は、コストコントロールやユーザー体験の向上にも発揮されている。生産ラインやチップを独自開発することで、システムコストをさらに圧縮した。また、独自開発した専用のファームウエアを任意の衛星測位チップに書き込むだけで、高精度な屋内外測位チップにアップグレードできるようにした。

同社の汎用型測位ソリューションは、重慶市の「解放碑地下環状道路」や、広東省の深圳市と中山市を結ぶ「深中通道」の海中トンネルなど、複数の国家重点プロジェクトで活用されている。高精度測位・計時ソリューションも、大型交通ハブやパビリオン、駐車場など、さまざまなシーンで用いられている。

サービス能力

潜在市場の開拓

位置情報技術は、過去には滴滴出行(DiDi Chuxing)や美団(Meituan)のような配車・デリバリーサービスの急成長を支えてきた。また、高徳地図(Amap)やバイドゥ、テンセントといった地図アプリ大手も、位置情報技術を活用して大規模なエコシステムを構築し、市場の参入障壁を高めてきた。

そして現在、高精度測位システムが多くの成長市場を支える原動力となっている。自動運転、ドローンや空飛ぶクルマ(eVTOL)などによる「低空経済」、エンボディドAI(身体性を持つ人工知能)といった先端分野の発展は、精度の高い位置情報サービスと切り離すことはできない。

方位角科技は、これらの新市場への進出を加速させている。低空経済分野では複数の研究プロジェクトを受託し、都市部の高層ビルの間を飛行するドローン用測位ナビの精度向上や、安全飛行の保障に取り組んでいる。また、自動運転やスマートシティなどに対応する研究も進めている。

さらに、国有大手企業と提携し、衛星測位システム「北斗」による屋内外測位ソリューションの大規模活用を進め、消費者市場向けにコストパフォーマンスの高い測位・ナビ・計時サービスを積極的に展開していく方針だという

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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