中国AIユニコーン「StepFun」、シリーズBで数百億円調達 商用利用向けに基盤モデル開発を加速

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中国の人工知能(AI)ユニコーン「階躍星辰(StepFun)」が2024年末、シリーズBで数億ドル(数百億円)を調達した。主な出資者は、上海国有資本投資と同社傘下のファンドのほか、騰訊投資(Tencent Investment)、五源資本(5Y Capital)、啓明創投(Qiming Venture Partners)など。今回調達した資金は、基盤(ファウンデーション)モデルの開発や推論能力の強化に充て、一般ユーザー向けにもプロダクトやエコシステムを提供していく方針だという。

階躍星辰は、智譜AI(Zhipu AI)、MiniMax、月之暗面(Moonshot AI)、零一万物(01.AI)、百川智能(Baichuan Intelligent)と並び、中国AIの六大スタートアップ「六小虎」の一角を占め、「手堅い技術」がトレードマークとなっている。

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中国のAI企業の多くは、米OpenAIがChatGPTからSoraへと進んだ道のりをたどる形で成長することを選択した。 階躍星辰の姜大昕CEOによると、同社も創業当初から、シングルモーダルからマルチモーダル、マルチモーダル理解と生成の統一、ワールドモデル、汎用人工知能(AGI)へと発展させる方針をとったという。

多くのAI企業が技術力やリソースの限界によりAGIの開発を延期または中止する中で、階躍星辰はAGI開発への道を着々と進み、技術のアップデートとAIモデルの発表をハイペースで繰り返している。2024年には、1000億パラメータと1兆パラメータの大規模言語モデル(LLM )に加え、画像理解、動画理解、画像生成、動画生成、音声再現、音声生成、音声識別に関連する計11の基盤モデルを発表した。

発表頻度が高いだけでなく、AIモデルも実力十分だ。2024年11月19日に発表されたベンチマーク「LiveBench」では、1兆パラメータのLLM「Step-2」がOpenAIの「o1」と米Anthropicの「Claude」に次ぐスコアを叩き出し、中国製LLMのトップに躍り出た。 11月22日には、米LMSYSのAI比較プラットフォーム「Chatbot Arena」で、マルチモーダルLLM「Step-1V」が視覚モデル(VLM)分野で中国トップとなった。

階躍星辰は確かな技術力によって、「Step」シリーズの商用利用に向けて評価を積み上げていった。2024年下半期には、同社のマルチモーダルAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)のコール数は45倍以上に増加した。SNSで話題のAIアプリ「歌詞爆改機」や「胃之書」「林間療癒室」などは、いずれも階躍星辰のマルチモーダルLLMを利用している。胃之書を開発した趙純想氏によると、導入候補のLLMを比較テストした結果、階躍星辰のマルチモーダルLLMをアプリに導入した場合の有料会員獲得率が最も高かったという。

この技術力を支えているのが、優秀な人材だ。姜CEOは「LLMは人海戦術ではどうにもならない。ピラミッドの頂点に立つ数人が、LLMの性能を決定する」と話す。姜CEO本人が、米マイクロソフトのサーチ・テクノロジー・センター・アジア(STCA)で副センター長とチーフサイエンティストを務めた人物で、優れた人材を集める能力も極めて高い。

階躍星辰の中心メンバーの一人、朱亦博氏は中国バイトダンスの元ディレクターで、大規模クラスタとシステム構築の経験がある中国では数少ないAIシステムの専門家として知られる。STCA出身の焦斌星氏と、画像認識モデル「ResNet」の開発者の一人である張祥⾬氏が、データとアルゴリズム関連を担う。

成熟したチームは、LLMの開発期間を大幅に短縮することに成功した。典型的な事例は1000億パラメータのLLM「Step-1」で、2023年7月1日に開始したトレーニングを同年8月末には完了した。

階躍星辰は現在、新たな収益源やデータ、ユーザーからのフィードバックを求めて、モデル開発からアプリへの応用に事業の幅を広げ、自社開発とエコシステムパートナーとの協業を組み合わせる形でプロダクト戦略を展開している。

自社開発したプロダクトとしては、AIアシスタントアプリ「躍問」がある。また、独自の視覚理解モデルに基づく画像検索機能「拍照問」は、中国では初めて「iPhone 16」のカメラコントロールボタンと連携した。

LLMの商用利用の初期段階には、顧客のニーズを満たすプロダクトを適切な市場に提供する「PMF(プロダクトフィットマーケティング)」方式を採用し、金融・経済やコンテンツ制作、スマートデバイスなど各分野のトップ企業と提携してプロダクトの共同開発を進めた。

たとえば、経済メディアの界⾯財聯社と共同設立したLLM企業「財躍星⾠」からは、金融業界向けLLM「Finstep」と個人向け資産管理アシスタント「小財神」を打ち出す。また、スマートフォン大手の栄耀(HONOR)やOPPOともLLM技術で提携している。

足元では、LLMへの投資競争が過熱している。ある投資家は、階躍星辰はその基盤モデルの先進性やプロダクトの差別化、そして商用利用のポテンシャルが評価され、このタイミングで新たな資金調達を成功させたと説明。バランスのとれた株主構成により、同社はさらなる飛躍を遂げる可能性があると指摘した。

*1ドル=約150円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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