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宇宙機のストレージソリューションを手がける 中国スタートアップ「艾可薩科技(Exa Tech)」がこのほど、シリーズAで成都科創投集団から1億元(約20億円)近くを調達した。資金は宇宙機用ストレージの技術研究開発センターの設立や、年産1万セットの宇宙機用SSDモジュール工場の建設に用いられる。艾可薩はこれまでに中科創星(CAS Star)や深圳市創新投資集団(SCGC)などからも出資を受けている。
艾可薩は2018年に設立され、宇宙機用データストレージシステムの開発に注力している。産業用NAND型フラッシュメモリーの放射線耐性の強化や衛星間のデータ共有、宇宙で取得したデータの構造化という3つの大きな技術的課題の解決に取り組んでおり、宇宙機用SSDコントローラチップからストレージモジュール、衛星搭載ストレージシステムに至る幅広い技術体系を構築してきた。
中国は2020年以降、新型インフラとして、低軌道衛星を使ったインターネットの構築を加速させている。34年までに約1万3000基の低軌道衛星を配備する計画を国際電気通信連合(ITU)に提出したほか、低軌道衛星網「G60」に1万2000基の衛星を投入する計画だ。海通証券(Haiton Securities)は、30年に中国の衛星打ち上げ数が年間6000基に達すると予測し、中国最大のシンクタンク「賽迪(CCID)」のデータによると、軌道に配備される衛星は世界で5万基を超え、うち中国の衛星が約25%を占めると見られている。また、リモートセンシングのデータ量が20TBに増加するのに伴い、ストレージシステムの容量や信頼性、リアルタイムの処理能力に求められるレベルも高まる見通しだ。
宇宙機用ストレージは、極限環境でのデータ損失ゼロを保証する必要があり、技術的なハードルが極めて高いため、使われるチップは長らくフランスの3D Plus社など海外企業が独占してきた。中国の従来型ソリューションでは、高軌道・深宇宙探査のニーズを満たすことが難しいうえ、衛星コンピュータシステムのアップグレードによって、標準化されたストレージの需要も生まれている。中国ではこの分野に携わっている企業が数社にとどまり、依然として主導しているのは政府だ。
創業者の朱栄臻氏は、宇宙機用ストレージには明確な課題があると指摘する。産業用フラッシュメモリーは、放射線の強い環境での信頼性が不足しているため、コントローラチップやアレイシステム、ファイルシステムなどさまざまな分野で強化する必要がある。また、衛星間のデータ共有効率が低下し、衛星に搭載する分散式ストレージの需要が高まったほか、膨大な宇宙のデータを構造化して管理するシステムが不足しており、地上でのデータ処理の負担が増している。
朱氏は「単に宇宙機用ストレージの環境に対する耐性を強化するのではなく、チップレベルから構成を見直さなければならない」と強調する。65ナノメートル(nm)プロセスを採用した同社の宇宙機用SSDコントローラはロット生産を実現し、中国のブロードバンドインターネット構築や深宇宙探査など多くのプロジェクトの衛星に活用されている。また、今年中にテープアウトを計画している28nmプロセスのSSDコントローラチップは、衛星搭載コンピューターやアルゴリズムの環境適応力を向上させられるという。
同社が独自に開発した衛星搭載ストレージシステム「AS3」は、容量が最大1ペタバイト(PB)、通信速度が300Gbpsで、JPEG-LSによるリアルタイムの画像圧縮や人工知能(AI)によるデータ前処理に対応し、帯域幅の使用率を50%減らす。また、分散クラウドサービス「SpaceFS」は、衛星間のデータ共有効率を60%向上させるという。
製品はすでに、中国で多くのリモートセンシングと通信衛星で活用されているほか、多くの衛星開発企業にも供給されている。海外では東欧や中央アジアに進出しており、欧州や東アジアの市場開拓を加速している。
朱氏は「宇宙機用ストレージは衛星データベースの中核を担う。宇宙産業はこの2年間に、過去数十年と比べられないほど大きく変わった」と話す。宇宙産業の発展に伴って、衛星の打ち上げ数は向こう数年で年間1000基まで大きく増える見込みで、業界全体に大きな生産能力と高い品質が求められるとの考えを示した。
*1元=約20円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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