中国CATL、ナトリウム電池に続く革新的な「デュアルパワー電池」発表。異なる材料1つのパックに

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車載電池世界最大手の中国CATL(寧徳時代)は4月21日、上海モーターショーに先立ち「スーパーテックデー」を開催し、第二世代「神行超充電池(Shenxing)」、ナトリウムイオン電池「鈉新(Naxtra)」、デュアルパワー電池「驍遥(Freevoy)」という3つの新たな電池技術を発表した。

第二世代の神行電池は800kmという長い航続距離と、最大12Cという高い充電レートを両立させた。12Cとは75km走行できる電力をわずか30秒間で充電できる性能だ。これは、中国電気自動車(EV)大手のBYD(比亜迪)が発表した10Cの急速充電技術に対して、CATLが打ち出した強力な対抗策とみられる。この電池は今年中に、67車種のEVに搭載されるという。

ナトリウムイオン電池の「鈉新」は、「麒麟」「神行」「天行」に続くCATLの新たな電池として、今年12月の量産開始を予定している。

エネルギー密度は175Wh/kgに達し、航続距離はEVなら500km以上、プラグインハイブリッド車(PHV)のEV走行でも200km以上を実現しており、普段の通勤や近距離の移動に使うには十分だ。加えて、低温時の性能や急速充電の面で大きな進歩を遂げたことも注目に値する。

鈉新電池は、零下40度の超低温環境でも容量の90%を維持し、充電レートは最高5Cに達する。低温時の性能が向上したことで、中国北方の寒冷地でも新エネルギー車の普及が見込めるようになる。CATLが計画通りに年内に鈉新電池の量産を開始すれば、新エネルギー車市場のさらなる拡大につながると期待される。

そして一番の目玉は、デュアルパワー電池「驍遥」の発表だ。この革新的な電池は、1つの電池パックの中に2つの独立したエネルギーゾーンを設けるという新たな手法を採用、いわば1つの電池システムに2つの小型電池システムを組み込んだ構成となっている。小型電池システムには、それぞれ異なる材料を使ったセルを搭載し、相互にエネルギーを補完することで、単一材料を用いた電池システムの弱点を補うことができる。

特筆すべきは、「自己生成負極技術」を採用し、電池の体積エネルギー密度が60%、質量エネルギー密度も50%向上した点だ。この技術を活用すれば、同じサイズの電池パック内にいっそう多くのエネルギーを確保できるようになり、これまで以上に長い航続距離の実現が可能になる。

CATLはデュアルパワー電池の組み合わせとして主な4種類を紹介した。

1)ナトリウム・鉄デュアルパワー:鈉新電池とリン酸鉄リチウム自己生成負極電池を組み合わせ、低温環境に強く、航続距離は700km。
2) 鉄・鉄デュアルパワー:第二世代神行超充電池とリン酸鉄リチウム自己生成負極電池で構成される。7分間で10%から80%に充電できる急速充電を特徴とし、航続距離は1000kmを突破。
3)三元・鉄デュアルパワー:三元系電池とリン酸鉄リチウム自己生成負極電池で構成される。航続距離と駆動力を兼ね備え、電力量が残り20%でも600kW以上の出力を維持し、V12エンジンに匹敵するパワーを実現する。
4) 三元・三元デュアルパワー:三元系電池と三元系自己生成負極電池を組み合わせ、高いエネルギー密度を実現、航続距離は1500km以上。

驍遥電池の登場により、車載電池業界はついに「マルチパワー時代」に突入した。従来の電池は標準化に重きが置かれていたが、デュアルパワーの驍遥電池はこの常識を打ち破り、地域性や消費者のニーズに応じた幅広い選択肢を提供する。

CATLは長年にわたり、リン酸鉄リチウムイオン電池やM3P電池、三元系リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池など、さまざまな電池技術に取り組んできた。その経験があったからこそ、複数のコアを持つ電池の開発に成功できたと言えよう。今後も、異なる電池の組み合わせや革新的な電池技術を模索し、消費者個々のニーズに合った総合的な電池ソリューションを提供していくだろう。

(翻訳・畠中裕子)

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