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今年の上海モーターショーでは、海外メーカーが中国市場で進めるスマート化戦略が大きな目玉となった。とくに、市場シェアが3割を超え、中国市場に大きく依存しているドイツ系メーカーでその傾向が目立つ。
なかでも、独フォルクスワーゲン(VW)は中国市場重視の姿勢を強く打ち出している。モーターショーに合わせて、VW中国事業のトーマス・ウルブリッヒCTOと、ソフトウエア子会社CARIAD中国の韓三楚CEOがメディアのインタビューに答え、スマート化を軸とした同社の現地戦略や提携の方向性を語った。
ウルブリッヒCTOは「VWはこれまで、中国企業との合弁会社2社と提携してきたが、このような提携モデルだけでは中国市場の実際のニーズに対応しきれなくなっている」と率直に述べた。
その打開策として、VWは安徽省に「大衆汽車(中国)科技(VCTC)」を新たに設立し、ドイツ本社に集中していた技術関連の権限および職務を移管した。これにより、中国国内の開発に関してVCTCはドイツ本社に指示を仰ぐ必要がなくなった。
VCTCは中国チームとの時差がないため、現地の業務ペースに合わせて、「チャイナスピード」で開発を推し進めることができる。また、社内では中国語による業務運用が徹底され、中国市場のニーズに効果的に対応できるようにした。
今年に入って米トランプ新政権が打ち出した関税政策により、世界の自動車産業に暗雲が垂れ込めている。ウルブリッヒCTOはこれに対し、VWの進めている中国戦略「中国で、中国のために(In China, for China)」が非常に先見性のある取り組みだとし、「中国市場での事業を貿易摩擦の影響から守り、安定したビジネスを可能にする大きな傘の役割を果たす」と強調した。
VWはさらに、中国のEVメーカー小鵬汽車(Xpeng Motors)およびAIチップメーカーの地平線機器人(ホライズン・ロボティクス)にも出資し、戦略的提携関係の構築も進めてきた。
2022年にはホライズン・ロボティクスに24億ユーロ(約3900億円)を投じ、自動運転技術を開発する合弁会社「酷睿程(CARIZON)」を設立。23年には小鵬汽車に7億ドル(約1000億円)を出資、共同開発するE/E(電気・電子)アーキテクチャ「CEA(China Electrical Architecture)」をVW中国の全車種に搭載することで合意した。
韓CEOの説明によると、CARIZONは単なるサプライヤーではなく、ADAS(先進運転支援システム)の共同開発拠点の中核を担い、VWとは受注・発注の関係を超えた協力体制を構築しているという。
CARIZONでは、ホライズン・ロボティクスのエンジニアがソフトウエアやアーキテクチャ、アルゴリズムの開発に専念し、VWのエンジニアが周辺構造やインターフェースの統合を担当している。これにより、サプライヤーとの協業にありがちなブラックボックス化の問題を回避し、効率的かつ透明性の高い共同開発を実現した。
中国市場でスマート化戦略を積極的に推し進めているVWだが、グループ内のブランドの足並みはそろっていない。CEAアーキテクチャや運転支援機能は、VWグループ傘下の高級車ブランド・ポルシェには共有されていない。
ウルブリッヒCTOは、CEAアーキテクチャは中国市場向けのプラットフォームであり、欧州仕様のポルシェとは設計基準が異なることから、短期間のうちに導入するのは技術的に難しいと説明する。将来的にCEAアーキテクチャを採用するかどうかは、グループ全体の戦略や技術の進展、製品開発のスケジュールなどを踏まえて判断するという。
*1ドル=約144円、1ユーロ=約163円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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